[完結]愛せないから白い結婚をしようと言われた伯爵夫人は白いモフモフの優しい愛に包まれる

くみたろう

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 あまりにあっさりと話すマリーに、驚きから不快感に変わるフリーダ。
  
「……お前はそれでいいのか?」

「と、言われますと?」

「少し我慢をすればナデリスカ伯爵夫人という地位と申し分ない生活が手に入るんだぞ。それを自ら手放すとは正気か?」

「……それは婚姻したことにより頂ける権利ですね、わかります。ですが、たった一度の人生、私の幸せの為に自らが選択して選び取るのも私の権利です」

「……君の幸せ?」

「あなたが愛人の方と過ごすのが幸せというように、私にだって幸せはあります。貴方と私は実家を考えても対等ですし、離縁した後私や実家が困ることもありません。特に問題は無いでしょう? ……まさか、貴方は妻だから何を言っても良いと思っています?」

「いやっ! でも! 」

「では、書類を作り次第サインをよろしくお願い致します」

 ぺこりと頭を下げてから部屋を出ていくマリーを中腰になって手を伸ばすフリーダが止めようとしたが、既に退出したあと。
 どさりと椅子に座って頭を抱えるフリーダは息を吐き出した。

「…………まさか、嘘だろう……結婚2日目でなんでこうなるんだ」

 自らの欲を優先した結果、まさか結婚2日目でこんなことになろうとはと、浅はかにも困惑するフリーダはマリーを思い出す。
 昨日の恥ずかしそうに微笑む姿は確かに可愛かった。 
 平凡な顔立ちだが、可愛さもあり社交界で隣に立つには地味ではあるが穏やかさやその姿勢は伯爵夫人として充分過ぎるほど。
 だから昨日は優しく接したし、妻として愛せなくても良きパートナーになろうと、フリーダは自惚れた感情を持っていた。

 だが、それは全てフリーダの都合のいい願望でしかない。

 翌日、まさかあんなにも厳しく強い眼差しで拒絶されるとは思っていなかったフリーダは愕然とした。
 あんな態度をフリーダは女性にされた事はない。
 それはそうだろう、礼節を重んじ相手を尊重する社交の場でそんな態度をしたらあっという間に爪弾きになる。
 なのに、フリーダはマリーに随分と馬鹿にした態度で接した。
 妻になら何をしてもいいのか。その言葉が全てを物語っていた。

 マリーは迅速に動く。
 今のマリーは困惑して流される静かな令嬢ではない。
 逞しくも自らの未来のために地に足をつけて歩く女性だ。
 そのためにする事。


「レイモンド、少しいいかしら」

「はい奥様、如何しましたか?」

「作って欲しい書類があるのだけど……」

 レイモンドは伯爵家お抱えの家令。
 まだ年若いのは、マリーが妻として来る1年前に先代の祖父から代替わりをしたからだ。
 先代からしっかりと教育されたレイモンドは優秀であるが、暴走するフリーダを止めきれない甘さもある人物。
 そんなレイモンドは、フリーダの愛人の存在を知っているのだろうかと1種悩んだが、知らないはずがない。
 フリーダの日常の動きから金の動きも把握している筈だから。
 ということはだ。愛人へのプレゼントやデートなどの日程把握もしているはず。
 
「旦那様の愛人の話や白い結婚の話を昨日聞きました。それで先程現状のすり合わせをし、3年後に離縁します。なので、約束を反故されない為に契約書を作成して欲しいの。内容は……」

「お……奥様! お待ちください!! あ……愛人……聞かれたのですか……?」

「聞くも何も、自らペラペラと話してくれましたよ? 私は対外的に妻でいればいいと。夜の仕事は免除ですので子を作る夫人の役目もありませんでしょう? かといって、愛人の子を育てるなんて私には絶対に無理ですし」 

 頬に手を当てて呆れたように言うマリーに、レイモンドは頬を引き攣らせる。
  
「なのに離縁するつもりは無いとか恥ずかしげもなく言うのですよ? まぁ、私をよくもここまで馬鹿に出来ますよね?だから、色々とこちらから注文を付けました。向こうが好き勝手言うなら私だって言いますし、結婚してから愛を深めて……と思っていましたけど誠実さの欠けらも無い人に対してする努力などないですよね? ……いえ、ある意味誠実なのかしら。馬鹿正直に私に言うのだもの」

 そう笑顔で言い切ったマリーに、レイモンドが天を仰ぐ。
 もう訂正の余地がない。笑顔が怖いマリーにフォローは出来ないと思ったレイモンドは大人しく頷き書類作成を始めた。
 主人が婚姻して翌日に離縁の書類を作るレイモンド。
 なんで……と思ったが屋敷にいる使用人ですら愛人の存在を知っているのだ。
 マリーが愛人の存在を知るのは時間の問題なのはわかっていた。
 ただ、マリーの強気な対応だけがレイモンドは予想外だった。
 
 
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