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10話 明日は水遊び!(挿絵あり)
しおりを挟む「みなさん! お話があります!! 」
ハストゥーレと散策が終わった日の夜。
夕飯準備をしているメディトークや、ハストゥーレに、ソファで寛いでいるフェンネルとシュミットを見て芽依は声高々に話し出した。
全員の視線が笑顔の芽依に向く。
「今日の散策で素敵な場所を発見致しました! 」
「どこだ? 」
シュミットが首を傾げて聞いてくる姿に、鼻を気にしながら答える。
「鼻血出てないな……うん! なんと! 広ーい湖!! 明日はみんなで水遊びをしよう!! 暑いから気持ちいいよ! 水着着てバシャバシャしようよ!」
ワクワクしている芽依に、フェンネルが目を丸くした。
数日前に話していた通りに水場を見つけてきた芽依に、偶然ではあるが執念を感じる。
「……水着?」
『お前……あんな格好で暴れんのか? 正気か? 』
メディトークとシュミットは案の定目を眇めて見てくる。
だが、それくらいでめげない芽依はパピナスの腕に腕を絡めた。
「まあ? 行かないなら? 私パピナスと行くからいいけどね?」
「行く」
『行かねぇなんて言ってねぇだろ』
「僕も水着用意しなきゃ」
「………………私も水着ですよね」
芽依の一言に全員が直ぐに動き出す。
休みを満喫していたシュミットまで参加すると分かり、飛びかかって喜ぶ芽依をシュミットは軽々抱き上げて部屋に連れ帰って行った。
「シュミットさんはどんな水着ですか? 」
「どんなって……普通」
何着かは持っているようで、少し考えながらも膝丈まである水着を出している。
あまりにぴっちりしていないのが好きなのだろう、普段着も緩い服を愛用している。
カッコ良さと可愛さを併せ持つ煙草好きなシュミットは、水着のチョイスも可愛い。
さらに、ラッシュガードも用意するあたり、色々と女子力じゃない何かが高い。流石である。
ちなみに、今日のお休みシュミットはウサギのパーカーだ。
(イラストはイメージです)
それとは真逆に黒のぴっちりした水着を選ぶあたり、メディさんらしいのだが……でも……と芽依は手に持っている水着を見て思った。
ツルッとした生地のピッタリパンツタイプ。
何故それを選んだメディさん……と口には出さずに目で訴える。
「…………なんだよ」
「いや……いやぁぁぁ……」
不思議そうに見てくるメディトークに首を振ったが、なぜそんな形もしっかりわかるピッタリ水着にしたんだ……チョイスよ……と目を逸らした。
そのすぐ近くには、可愛く水着を選びこれ似合うんじゃない? と指さすフェンネルと頷くハストゥーレ。
「…………天使達は何をしても可愛い」
相変わらずな芽依。
やはり今はサーカスでの会えない日がキツかったのだろう、芽依の喜びゲージが直ぐにギュインと上がる。
「いつも可愛い。いつ見てもうちの子最高」
「メイ様、こちらは如何ですか? 」
急にピラッと出てきたパピナスの水着。
薄い水色のワンピースタイプ。
逆にその体にワンピースはまたえろ……いや。可愛いと芽依は頷く。
ワンピースタイプとは言っても腰周りがガバリと見えていて、可愛いよりかっこいい水着だ。
いいよ……と頷く芽依に満足そうに嬉しそうに笑ったパピナス。
うちの子はみんな可愛い……と脳内花畑にしながら芽依は明日の楽しみにワクワクと胸を高鳴らせた。
翌日、お泊まりだったフェンネルの可愛さに悶え、軽く噛み付く勢いだった芽依は今日も朝から絶好調に笑顔を咲かせている。
隣に来たハストゥーレの手を握り、キュッと指を絡ませると、赤らめた顔で握り返してくれて、あれ? 私達性別逆転してないかな? 大丈夫? と心配になるくらいに乙女仕様となっているハストゥーレ。
可愛いからいいか! と煩悩のままに歩く芽依を、分かりやすいとメディトークは呆れた。
「…………へぇ! すごい綺麗」
少し先を歩いているフェンネルが、花のアーチを見上げて言った。
貴方が綺麗だよ! と思いながら幸せそうに笑うフェンネルにキュンとする。
本当に最近の芽依は何か薬でも盛られたのだろうかと心配するくらい、ちょろくなっている。
風に靡く髪と花のトントラスでもう芽依は鼻血を吹き出しそうだ。
「この先か?」
腰を曲げて顔を覗き込むシュミットに頷く。
「凄く透明度の高い広くて綺麗な湖があったんです。ハス君に確認してもらって飲んでも大丈夫なくらい綺麗な水だって言ってました」
「なら安心だな」
緩く目を細めて笑うシュミット。
今日も陽の光を浴びて暗いネイビーの様な青髪が輝き揺れて、ふわりと揺れる煙草の煙からは苺の香がした。
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