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27話 検疫検査
しおりを挟む数日待ってようやく芽依の庭への検疫員がやってきた。
良く映画とかで見るような真っ白い防護服ではなく、魔術師たちである。
1歩芽依の庭に足を踏み入れた瞬間、その広大すぎる庭にポカンと口を開けた。
大体は野菜か肉か果物かなど、専門をしぼって庭を手入れするものだが、ここには全てが贅沢に詰まっている。
更には多種多様な工場も増設されていて、もはや庭ではないと声高々にいわれそうだ。
芽依はメディトークとシュミットの後ろにいて、左右に可愛い天使がいる。
両手を手で拘束されて、4人いる魔術師から絶対守るマンが発動しているのだが、芽依は何から守られているのか理解していなかった。
検査で何から守るの? と首を傾げている芽依を全員が静まり返って見ていた。
「………………これは……凄いな」
検疫検査に来たうちの一人が、ぐるりと周りを見る。
その表情は楽しそうでワクワクしていた。
「リカリック、移民の民の庭を不用意に見ては駄目よ」
コソッと……と女性から注意を受け、分かってると答えた年若い見た目の青年はにこやかに笑った。
「私はリカリック・ゴールド。今回の検疫の責任者です。鳥の確認をさせてもらいます」
物知りなメディトークやシュミットは自然体で警戒している様子は無い。
来た4人全員を知っているのか小さく頷いていた。
「……知り合い?」
そこっと聞くと、シュミットが振り向いた。
「アリステアの所に所属している魔術師たちの首席や順位上位のヤツらだ。信頼のおけるヤツを派遣したんだろう」
「順当だと思うよ。移民の民、広い庭、複数の上位人外者に犯罪奴隷2人だからね」
「最後だけ気に入らない」
笑いながら言うフェンネルに、芽依は頬を膨らませると両隣のフェンネルとハストゥーレが目を丸くする。
芽依を挟んで目を合わせた2人は、にっこり笑って芽依を抱きしめた。
フェンネルはギュッ!と。ハストゥーレは控えめに頭を擦り付けて。
「………………え? え? なに? うちの天使可愛いんだけど? なに? ご褒美?」
そんな2人に、鶏舎へ行こうとする魔術士たちは目を丸くしている。
やはり芽依達の関係性は珍しいようだ。
慣れてきたこの眼差しだが、信じられないと見開く顔にまたか……と思ってしまう。
「…………メイ、中にいるか?」
「いえ、検査するの見たいし」
そう言って検疫検査をする為に移動したのだが、ここで問題が起きた。
「………………えーっと。これは」
リカリックは困惑しながら芽依の庭に居る鳥達を見た。
芽依が居るためにビビって逃げ腰の鳥達だ。
皆後ろに下がり、誰でもいいから前に行けと押し合い圧し合いしている。
数羽前に転がり出たら、ギャっ! と羽を膨らませて飛び上がり必死に群れに帰ろうとしている。
長年検疫検査を行ってきた魔術師達はポカンと口を開けた。
鳥とはいえ幻獣であり賢くは無いが頭脳はある。攻撃力もあるから、検疫検査の場合嫌がり獰猛になるのだが、何故かこの庭の鳥達はかなり怯えていた。
「「…………」」
可愛い天使達の笑顔が引き攣り、メディトークは吹き出す。
シュミットはこんな反応は初めてだな……と何やら手帳に書き込んでいた。
「………………私のせいじゃないと思うのよ?」
『お前以外にねぇだろ』
鳥達の視線は全員芽依に向かっている。
恐怖の対象として見られているのが分かっているから、余計に複雑なのだ。
「……………………えーっと。調べても?」
「勿論」
シュミットがいち早く返事をする。
ぎっしりと詰まっている鳥達が1箇所に集まっている為、検査はむしろしやすい。
バタバタと逃げ惑い四方八方に行く鳥達に苦戦する魔術師にとっては奇跡的な様子に目を丸くしていた。
「……じゃあ、直ぐに開始します」
チラッ……と他の場所や鶏舎を見る。
広大な庭の隅に用意されている鳥用の囲い。
それは他にも3箇所あり、そちらは伸び伸びと鳥達が生活していた。
ビクビクと怯えるのはこの鳥達だけだろうか……と見た事ない現象に興味を惹かれながらも魔術をかける準備を始めた。
数が少ないなら、1~2人で充分なのだが、芽依の庭は数が多い。
鳥専用の庭よりは少ないが、それでも充分な数があるとリカリックは数を数えていた。
四方に離れて鳥達を囲うように立つ魔術師達は、手に持つ杖や本を媒体にするのかぼんやりとした光が集まりだしている。
それを見て、芽依はメディトークを見た。
「…………魔術使うのにメディさんたちアイテムってあんまり使わないよね」
メフィストがたまに杖を使うが、それ以外あまり見ないと言う芽依にメディトークが頷く。
『まぁ、そうだな。魔術を使うのに魔力が必要だろ? 体内に流れる力を精霊は羽に貯める器官があって長年貯蓄してるから基本的に途切れる事はねぇ。妖精は属性から力を吸い上げて年々力を増やす。ハストゥーレは森、フェンネルは雪や花だな。だが、人間には貯蓄する場所も吸い上げる事も出来ねぇ……勿論、移民の民からもな』
チラッ……と芽依を見る。
つまり、芽依を喰ったとしても人間は力を底上げできない。
元々ある自らの力と契約する人外者の力を借りて底上げした力しかない。
使えば無くなり、眠って自己回復するか薬を使用して回復するしかないのだ。
「だから、媒体を使って最小限の力で最大限の威力を出すよう魔術具を使う。別に俺達も使うぞ。魔力を適正量使うのはなかなか難しかったりするからな」
「…………そうなんだ」
特に研究を重点的にするメフィストは適正量より多く力を放出しやすい為、杖を使った方が魔術を扱い易いのだとか。
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