続・美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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54話 魅惑のラーメン2

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 2時間ほどだろうか、スープが出来上がるのを眺めてから火を消した。
 アク抜きしている綺麗なスープは、1度こして不純物を取り除き、また鍋に戻す。
 これで、少し濁りのある綺麗なスープのベースが出来上がった。
 流石に油がギトギトしすぎじゃねぇか? とは思ったが、とりあえず試作だからとそのまま作る事にしたメディトークは、気付いたら寝ていたのでソファに移動させた芽依を見る。

「…………まだ、起きねぇな」

 鍋に直接味付けするには、チャレンジャーすぎると醤油ベースのタレを作りはじめた。
 かなり濃いめでいいか? どうせ薄めるだろ……とこってりとした醤油ベースを調味料を混ぜて作っていく。
 といっても、元々芽依が好きな味付けとして醤油を使った食事はよく作っているので、芽依好みの味付けは理解していた。
 冷蔵庫に常時用意している昆布出汁を使って練り、醤油ベースを作ったあと器に入れて背脂のスープと混ぜた。
 流石メディトーク、ラーメンを知らないはずなのにその正解に行き着く。
 だが、配分はまだまだだ。

「…………濃いな」

 醤油味が濃すぎる。
 スープを増やすと、今度はギトギトした。
 ん? と首を傾げる。

「…………これは、ちげぇな」

 んー……と悩み、背脂たっぷりのスープに昆布出汁をジャバジャバと追加した。
 煮込む時に、野菜は入れたが昆布は入れなかったメディトーク。
 別の出汁もと混ぜて、もう一度醤油ベースと合わせてみると澄んだ醤油ラーメンのスープが出来上がった。

「…………へぇ」

 じっと見つめる。
 スープの味がよく、ぺろりと唇についたスープを舐めとると、ちょうどハストゥーレが昼食の準備に入ってきた。

「…………メディトーク様、何をなさっているのですか?」

「メイがラーメンって食いもんが食いたいって」

「ラーメン……ですか?」

 勿論知らないハストゥーレも首を傾げる。
 スープを小皿に入れて渡すメディトークに素直に受け取り口に含んだ。

「…………美味しい、です」

「たぶん、これが醤油ラーメンってやつになるんだろうが……あとは麺だな」

「……麺、ですか」

 麺は様々あって、違うのを使うと食感や味が変わるだろうな……と悩む2人。
 聞きたくても芽依は寝ているからわからない。

「スープと一緒に食べるのですよね? 味が絡む麺でしょうか……パスタ系じゃないですよね」

「…………いや、この油の塊のスープ、全部飲むのか?」

「…………………………うぅん」

 とり出されたヘニョヘニョになった背脂の量は凄まじかった。まさしく、油の塊スープだ。
 これを飲みきるという概念がないメディトークたちは悩ましく首を傾げる。
 そこに帰ってきたフェンネルも合流してあーでも無いこーでも無いと言い、結局は。

「色々作るか」

 そう言って、パスタ麺からストレート麺、まさかの素麺など変わり種を使いながらもラーメンが完成した。
 チャーシューを乗せて、トロリ蕩ける味たまを丸ごと1個。
 野菜たっぷりに焼き海苔を添えた。
 芽依が言っていたのはこうだよな……? と首を傾げながらダイニングテーブルに運ぶとフェンネルが芽依を起こす。

「メイちゃん、ご飯だよ」

「…………ん、あれ……寝てた?」

「うん、おはよ」

 目を擦りながら起き上がった芽依は、ボーッとしながら周りを見渡す。
 そして、ラーメンを見た瞬間にテンションを上げた。

「んきゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!ラーメンさぁぁぁあん!!」

 走って椅子に座った芽依の前にコトリと丼が現れる。
 芽依はワクワクしているが、芽依以外は不安そうに見つめてくる。
 レンゲが欲しいなぁ、と立ち上がり取りに行ってからスープを1口。

「んん!! 醤油ラーメンだ! あぁぁ! 美味しい!」

 感動して悶えるが麺を食べようと野菜の下から引っ張り出した瞬間、芽依は止まった。

「…………………………パスタ」

 芽依の一言で、全員が違ったかぁぁぁぁ……と目線を逸らした。

「………………う、うん……うん……」

 ぱく……と食べてちゅるちゅる啜るが、これでない感が顔に出る。

「…………あー、わりぃ」

「いやいやいや! 美味しいよ! うん!……美味しいんだけどぉ」

「メイちゃんこっちは?」

 麺をすくって見せると、そこにあるのは太めのストレート麺。
 芽依は立ち上がりそれにかじりついた。

「うわぁぁぁぁぁあん! ラーメン!ラーメン!! 本音を言えば縮れた卵麺が良かったけど!」

 かすってたか……と息を吐き出したメディトークは、芽依が口をつけたパスタ麺を食べる事にした。
 フェンネルは素麺を苦笑いしながら食べ、ハストゥーレは芽依と同じストレート麺を食べて目をまん丸くして驚く。

「…………美味しい」

「ね! 美味しいね!! ラーメン最高! ……次は卵切ってください」

 コソッと言うと、切るんだったか……と頷いた。
 芽依の知るラーメンとはやっぱりまるっきり一緒ではなかったが、食べたい衝動は解消されそうだと、分厚めのチャーシューを口に含んだ。

 ちなみに、完璧を求めるメディトークはこの後も作り続けラーメン出現率が高くなった。
 芽依が好む卵麺はこの世界にもあるが、やっぱりちょっと違うようだ。
 2人で情報のすり合わせをしてより近く麺を作り上げたメディトークが完成させたのは、初めて作った時から2ヶ月が経過していたのだった。

「うわぁぁぁあん! 幸せすぎるっ!!」

 ちゅるちゅると今回は味噌ラーメンを食べる芽依を家族たちは苦笑しながら見ていたのだった。
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