続・美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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83話 BBQをしよう

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「さぁ! 食べよう食べよう」

 ワクワクとしながら持っているのはあさりの酒蒸し。
 今日のメインはあさりの酒蒸しなのに、メディトークの準備する素敵すぎる料理に、なにがメインなのかもう分からない。
 だが、まずは暫定食を食べようかと手には深皿がある。
 日本酒に浸かったあさりは、あの暴れようが信じられないくらい静かに浮かんでいる。
 貝は割られているから、もう日本酒にあさりが浮いた食べ物みたいになっていた。
 ぶつ切りに切られたプリプリのあさりを芽依はスプーンで掬う。

「…………いただきます」

 ふーと息を吹きかけていると、隣からそんなに熱くねぇと言われながら口に入れた。

「んん!! ……んまっ」

 芽依の知ってるあさりの酒蒸しと見た目が違うが、濃厚なあさりの出汁が出た日本酒とあさりが混ざって口に含まれている。
 貝の上に乗るあさりをちゅるりと食べたいところだが、叩き割られてそれは出来ないから、スプーンで代用。
 風流もへったくれも無い食べ方だが、旨みが凝縮されたあさりの酒蒸しは満足しか出来なかった。

「……あぁ、繁殖期のは本当に美味いな」

 シュミットの染み入るような声が聞こえてきた。
 嬉しそうに目を細めて器を見るシュミットを見れたから、それだけで荒れ狂うあさりを採ってよかったと芽依は満足だ。
 周りを見ると、みんな同じような顔をしている。
 やっぱり食べ物は偉大だなぁ……と思いながら芽依はあさりの酒蒸しを楽しんだ。
 今はまだ人数が少ないが、これから沢山増えるだろう。
 だからメディトークはまだまだ準備をするつもりだ。

 ぴーんぽーん

「誰か来たな」

「私が」

 器を置いてハストゥーレが駆けていく。
 それを全員で見ていると、現れたのはニアだった。
 思ったよりも早い到着に芽依は喜びに目をキラキラとさせると、その隣から飛び出してきた珍念が手を広げて走ってくる。

「ままーぱぱー」

「いやぁぁぁぁぁ!! 可愛いぃぃぃぃ!!」

 何これ、楽園かぁぁぁ?! と叫びながら走り出しちょこちょこと走る珍念を抱き上げてクルクルと回ると、ギャハギャハと笑い出す。
 両手を広げて回る珍念はとても楽しそうだ。
 存分に回してから下ろすと、フラフラしている。
 それがまた可愛いと悶えていると、今度はパパーと走り去っていった。
 次だ……と獲物を狙う目で庭の入口を見ると、相変わらず目付きを鋭くさせて睨み合う天使が2人。
 睨んでも可愛いだけだと、芽依は鼻を確認してから近付いて行った。

「いらっしゃい少年、ギュってしていいですか」

 足元にしゃがんで手を広げる芽依に睨んでいたニアの目がまん丸に変わって、薄く笑った。

「うん……久しぶり」

 芽依に近付きギュッと抱きつくニアに、あぁ! 天使!!とメロメロしていると、袖を控えめに引っ張るハストゥーレ。
 しゅんと悲しげに目を伏せている姿に、これは……と体をワナワナさせる。

「っ……あー! かわいー!!」

 そんな叫ぶ芽依に、見ていたメディトークたちは馬鹿だなぁ……と笑っていた。

 シュミットは、まとわりつかれている珍念を抱き上げるとメディトークにあさりを食べさせてもらっていた。
 遊びたい盛りの珍念は、暫定食より遊びらしい。
 だが、それを許さないメディトークに強制的に口に入れられていた。
  
「メディさん、少年……少年が来たよ……少年……」

『おいおい……落ち着け』

 久しぶりのニアに興奮している芽依は、ハストゥーレとニアの手を繋いで、えへえへと笑いながらメディトークの傍にきた。
 呆れながらも暫定食クリアの為に珍念に食べさせる巨大蟻。

「……世界に感謝します」

 芽依は蟻が大好きなので、シュミットが珍念を抱えて巨大蟻が食べさせている姿にメロメロしている。
 そんな芽依の手に引かれてきたニアは、あさりの酒蒸しを見て、あ……と声を漏らす。

「食べる?」  

「うん」

「はい」

 フェンネルが渡すと、小さく笑って受け取ったニアは大事そうに両手で持った。
 それからは賑やかに食べ進め客が増え、いつもの暫定食が楽しい時間を与えてくれた。

「あ、これって」    

「湖クラゲだな」  

 鉄板の上で焼かれる湖クラゲをアリステアとセルジオ、シャルドネと見つめる。 
 だが、これを焼いているメディトークのテンションはだだ下がりだった。
 湖クラゲは美味しいと聞いていたのに、珍しいなぁ……と芽依が見ていると、湖クラゲがあると聞いて近付いてくるBBQ参加者たち。

「湖クラゲか、大量発生したから市場にも流れていたな」

「私初めて食べるんです」

 ニコニコと笑って言う芽依に、ヴィラルキスはそうか……と薄く笑った。
 ヴィラルキスの前に器がコトリと差し出される。 
 その数は2個あって、あさりの酒蒸しも湖クラゲも必ず2個ずつ渡されていた。

「……いいぞ、1個で」
  
『いい、お前の伴侶のだ』

「やだ、イケ蟻」

『うるせ』

 足で軽く芽依の頭を小突くメディトークにへへ……とご機嫌に笑う。
 人外者にとって伴侶は全てだ。
 だから、それを失ったヴィラルキスには配慮されている。 
 食べなくてもいいから、ナギサの分も一緒に。
 それを有難く受け取るヴィラルキスは、ナギサ、美味いぞ……と小さく言っているのを聞いて、芽依は目を伏せた。
 
 
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