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メロディアさんちのお庭訪問
少し冷たい風が吹き、芽依は首をすくめる。
めっきり寒くなってきたこの頃、芽依はしっかりと防寒をした状態で庭から外に出ようとしていた。
今日は足首近くまであるマキシ丈のスカートで、風が強くバサバサとスカートが揺れるため、足がチラチラと見えていてハストゥーレはその度に顔を手で覆っていた。
この世界の女性の服装は、職種の為パンツ姿の人もいるが、スカートが通常仕様らしく冬でもロングスカートが多い。
足さばきが悪く、ものによっては足首まで来るスカートもあるため、セルジオに頼みせめてふくらはぎまでにしてくれと頼んだ結果、丈の短いスカートにはなっているが、その分タイツが追加される厳重ぶりである。
肌を出すのはあまりよく思われていないのはわかっているが、ロングスカートに深く入ったスリットから見える肌は大丈夫であったり、背中が見えるワンピースは平気だったりと、よく基準は分からない。
芽依も、庭で作業する時はパンツ姿が多いが、訪問時やカテリーデンに行く時などは必ず着替えをするように言われていた。
『よし、行くぞ』
メディトークの言葉に合わせて頷くと、4人は転移してメロディアの庭に向かったのだった。
先に訪問する事を伝えていた為、転移で庭に入る許可を貰っていた芽依達。
その為、転移先はメロディアの庭なのだが、着いた早々言い合いが聞こえてくる。
ん?と首を傾げるそちらを見ると、数人の人達が集まりメロディアに何かを言っていた。
「………………なんだろう」
「さぁ?僕達も用事があるし行ってみようか」
フェンネルは無表情で話し芽依の手を繋いで歩き出した。
自分に興味のない時は良くこの表情をする。
芽依や、家族、芽依の庭関連に関係しない事に最近はあまり興味が無いのかもしれない。
落ち着いたらフェンネルを連れて自然豊かな場所でゆっくりするのがいいのかもしれないなと、フェンネルの情緒を心配する。
『何を騒いでいる』
「…………メディトーク?!やだ、もう時間だった?」
目を丸くしてこちらを見たメロディアは3人の男女に囲まれていた。
表情は険しくあまりいい様子では無いのだが、相手は人間のようでメディトーク達はあまり気にしている様には見えない。
「メイちゃん待たせないでよ、そっちから時間指定してきたんでしょ?」
「もぅ、ごめんってば……こっちも予定外なのよ」
はぁ……と息を吐き出すメロディアだったが、3人のうちの1人が芽依を指さした。
「こいつ!あの庭持ちだ!あのすげぇ量売ってるやつ!」
「じゃあ、今もあるんだよね?!どうせあるんでしょ!!出してよ!」
「…………なるほど」
メロディアが呆れたようにため息をついているのを見て芽依は納得した。
前回庭持ちに無理やり野菜を寄越せと言う人が出ていたと聞いていたが、この人達もそうなのだろうと頷き掛けた時、横から冷たい風が吹いてきた。
ブルリと身体を震わせて隣を見ると、フェンネルの目が座っている。
さっ!と顔を背けて3人を見た。
「メロディアさんの庭を見たらわかると思いますが、今は庭の復旧作業中です。提供できる野菜はすでにアリステア様に提供済みですので、庭が復活するまで私達も出来ることはありません。」
「いや!どうせ持ってる……」
「ありません……あと、メロディアさんの許可がないようですけど、不法侵入ではないですか?とりあえず……騎士様に連絡するべきでしょうか。ジュネルさんを呼びますか、オルフェーヴルさんも呼んだら来てくれるかな……」
うぅん……と悩む芽依にギョッとする周囲。
2人は副隊長であったり、強い人外者が騎士としてドラムストに留まっていてくれていることでも領民には知られているらしい。
そんな2人の名前が出た事で驚いたのだが、すぐに引き攣る顔で笑う。
「い、いや、ただの庭持ちが呼んだところで副隊長や領主様付きの騎士が来るわけ……」
「私、領主館に住んでいるので顔見知りですよ?」
「よ、よし!今日の所は帰ってやる!!また来るからな!!」
芽依の言葉を信じて慌てて出ていった人達を芽依は黙って見送る。
勿論、呼んだからと言ってすぐに来てくれる役職の人達ではないしそこまで親しくは無い。
なにより、2人への連絡手段を持ち合わせていないのだが、そんな事を知らない3人は慌てて出ていったのだった。
「お2人、勝手に名前を借りてすみませんでした、怒らないでください」
領主館があるであろう方向に拝みながら言う芽依の頭にメディトークの足が乗る。
ズシリとした重さに、おぅ……となりつつメロディアを見た。
「お知り合い?」
「違うわ、1回仕事関連でこの庭に来たことが会ったから場所を覚えていたのね。シロアリ後何回か来てるのよ」
迷惑だわ……とため息を吐くメロディア。
芽依はメディトークと顔を見合せた。
芽依の庭はメディトークによって頑丈に守られて居るので、フェンネル以来侵入者は一切ない。
だからあまり危険視されていなかったが、他の庭にはゲリラ的に庭に突撃してくる領民が一定数いるらしい。
マナーを重んじるドラムストの領民であるが、やはり中には好戦的な人もいて、そういう人は問題を起こす傾向があるそうだ。
全く知らない庭に、野菜があったらラッキーと突撃しては撃退されるらしく庭持ちは復興作業と重なって疲労が蓄積されているのだとか。
『…………だいぶ状態いいじゃねぇか』
土のチェックをするメディトークの隣にはユキヒラが覗き込み一緒に土の観察をしている。
芽依の土を混ぜたことで変な化学反応等出ていないかと危険視されていたが、そこまででは無いらしい。
メディトークの隣で庭や作物の話をしているユキヒラを少し離れた場所で見ているメロディア。
隣には芽依がいる。
ハストゥーレとフェンネルは別の土をチェック中だ。
「…………ねぇメイ」
「はぁい」
「今更だけれどありがとうね。ユキヒラが今も居るのは貴方のおかげよ」
「なんですか?急に……シロアリの時ですか?」
「ええ。感情的になって貴方を叩いてしまったし……ごめんなさいね」
「………………いいんですよ。ユキヒラさんもメロディアさんも私大好きですから」
「…………あなた、本当に…………」
「はい?」
「なんでもないわ!対価は何がいいのかしら!?」
少し頬を染めたメロディアが早口で捲したてるように良い、ちゃんとメロディアに顔を向けた。
「ユキヒラを守ってくれたのですもの、対価くらいあげるわよ!…………まぁ、出来る範囲でよ?」
「…………じゃあ、誘いの鈴ってなんですか?」
「誘いの鈴?変な質問するわねぇ……誘いの鈴っていうのはね、数個の現象が重なった時に起きる事で、必ず硬質な金属音に似た鈴の音が鳴る事から誘いの鈴って呼ばれることになったものよ。自然現象によって権現する扉……と言えばいいのかしらね。他の場所に音を聞いた人を落とすの。その時の重なり合う現象は様々な理由があるから、結構頻繁に開かれるのよ。拒否もできずに必ず扉を通って落とされるのだけれど、ある程度抵抗する力があれば戻れるわ……………………なに?もしかして落ちたのかしら?」
「…………扉とやらを通った感じはないんですけれど」
「扉も色々あるわよ。部屋の扉や転移門なんかもあるのだけれど、1番多いのは無意識に無防備になる眠っている時の夢ね。夢も他の偶像を見せるための扉を通るから」
「………………うん、よくわからないけれど眠ると誘いの鈴に呼ばれるって事かな」
「そう認識していいわよ」
「………………なるほど、夢か」
あの日見た夢は、そしたら現実で実際に存在する場所の存在する人なのかと、芽依は頷いた。
(…………あの可愛いパジャマ、どこで売ってるのかな)
そんなことを考えながら、あの日見た夢を思い出していた。
メロディアの庭は、上手い具合に芽依の土と融合していて微生物等が成長しているらしい。
他の庭は無理だな、芽依の土を混ぜた場所では明日から野菜を植えれるそうで、ユキヒラは嬉しそうに笑った。
他の場所も土を混ぜ少しずつ回復させて行けば上手く全部の庭が予定より早く回復しそうだ。
メロディアの庭が成功したので、今後メディトーク監修の元、セイシルリードから新しい土と肥料の購入が出来るようになるまで芽依の土を利用した他の人の庭復興作業が開始される事となった。
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