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旅行者の迷惑行為
シロアリ被害が起きてからの食糧不足は世界を震撼させた。
ドラムストのように芽依のような規格外は居なく、沢山の死者を出し生活は困窮していた。
その苦痛に満ちた長い期間を生き延びて、今やっと庭は復興を遂げた。
ドラムストだけでなく、別の領土や国もだ。
前より収穫は少ないが、食事に困る事が無くなったのは僥倖だろう。
そうして、落ち着きを取り戻し生活が少し向上すると、他国や他領へと赴く余裕が出てくる。
「………………それで、他の領のお貴族様がこちらに来て注意も聞かずに暴走して、人外者が大切に育てている果樹園に入り込んでブチ切れている、と」
「ああ。苺のハウスを破壊しているらしい」
「………………なんでそんな所に」
「有名な苺の酒の原材料なのだ。そこを買い占めると言って、断られた。逆上したその貴族がハウスを壊して……だな」
はぁ……とため息を吐いて言うアリステア。
相手が貴族と人外者である事も面倒の一因である。
そして、その話をされたという事は、何らかの理由によって芽依が行かなくてはいけないのでは? と頬を引き攣らせる。
「………………そう、なんですね。大変ですね? しかし苺の酒の…………許すまじですね」
朝食が終わった時に言われたから逃げる事も出来ないのだが、酒と聞いて眉を寄せる。
そんな芽依にアリステアはにっこりと笑った。
「メイ、頼めるだろうか」
「……………………美味しい、苺ですもんねぇぇぇお酒は大切ぅぅぅ」
ドラムストにいる庭を所持している移民の民は芽依の他にはユキヒラ。
あと、最近来たばかりだと言う少女の移民の民がいて、自分の庭を手に入れたのだとか。
ユキヒラとメロディアは今収穫に追われていて動けず、新しい移民の民はまだ来たばかりなので任せられないのと、何やら問題の多い子らしい。
そのため、芽依たちなのだ。
貴族にも引けを取らない人外者の伴侶として呼ばれている移民の民は、貴族にも一目置かれている。
何かあったら人外者が出てくるからだ。
「…………わかりました」
「あとな、メイ」
「はい」
「近いうちに時間を作ってくれるか? 幻獣の王の話が出来ていないのだ」
「……………………はい」
忘れてなかったかぁ……と頷く芽依を無表情で見つめるアリステア。
どんな顔をしていいのか分からないアリステアの微妙な感情が混ざりあって、一周まわって無表情になっている。
メフィストやその他の事だったり、これから行われる祝祭だったりに忙しかったアリステアは穏やかで仲間思いなメディトークの大事な話を後回しにしてしまっていた。
実は何よりも先にしないといけない事ではあるが、メディトーク自身が話は何時でも出来ると、しなくてはいけない後始末や祝祭準備を優先にさせてくれたのだ。
「とりあえず、メディさん達を連れてその場所に行ってきます」
「ああ、頼む」
「その貴族もまだ苺ハウスにいるんですか?」
「ああ」
「………………了解しました」
残念すぎる内容だが、これもお仕事だと芽依はまず庭に向かった。
途中あった蛟が、シューシューと舌を出して芽依の足に甘えるように絡みついてきたが、今日は遊べないとわかると早々に撤退していった。
「蛟との時間もあんまりとれないなぁ」
来た当初は芽依にべったりだった蛟も、領主館に慣れたのか1人でウロウロするようになった。
芽依の部屋に居ることはなく、あっちに行ったりこっちに行ったりと定位置を決めずに音符を飛ばす勢いで、うにょうにょと歩き回っている。
数ヶ月に1回の土を混ぜ起こして土壌の状態を確認してくれるのは忘れず行ってくれていて、会えない残念さはあるが十分役にたっていた。
庭に着いた芽依を最初に出迎えたのはフェンネルで、にっこり笑顔で手を振ってくれる。
水を撒いていたのだろう、水滴がキラキラとしていてフェンネルの美しさを3倍くらいにしているた。
「…………あれ?メイちゃんご機嫌ななめ?」
「外出のお仕事が増えたよ」
「あらら。誰連れていく? 」
「人外者と貴族の殴り合いを止めるんだけど誰がいいかな? 」
「なぐ…………? 」
んん? と笑顔で首を傾げるフェンネル。
こんな伝え方なら誰もわからないだろう。
上手く伝えられず手振りをしながら伝えるが、んんー? といいながら首を傾げている。
『………………殴り合いをしてる訳じゃないんだろ? 』
「正確には苺ハウスを壊して一触即発」
『わかんねぇ』
フェンネルと一緒に首を傾げているメディトークに、いやだ、ほっこりしちゃう……と緊迫感のない感想をもらしたのだった。
今回はハストゥーレをお留守番にして、メディトークと芽依の大切な花雪を連れてお出かけ。
本当はメディトークをお留守番にする話が出たが、相手が貴族と人外者ならメディトークが居た方が抑止になるのでは? と決定した。
フェンネルとハストゥーレだけなら、2人とも奴隷だからだ。
「……ここかぁ」
場所はカシュベルの街から外れた場所にある森であった。
シャリダンとガヤの真ん中にある巨大樹がある森が広がっていて、その一部がカシュベルのすぐ近くまで迫っているのだ。
少し奥まった場所に、可愛らしい白の屋根の一軒家があり、そこで作っている果樹園は広く手が行き届いていた。
甘い香りがまだ果樹園に入っていないのに漂っていて、芽依は甘く爽やかな香りを胸いっぱい吸い込んだ。
「幸せの香り」
「根腐れの影響がなかったのかな。しっかり管理してたんだろうね」
フェンネルのように雪を纏わせたり、地面の温度調節が出来ない人達は、地面を常温に維持する魔術道具が販売されていて、購入している人はかなり居た。
それでも追いつかず根腐れが起きている人はお金をケチってグレードの低い道具を買った庭の持ち主は頭を抱え悲鳴を上げたのだとか。
どんどん上がる温度についていけなくて、根腐れを止められなかったのだ。
「じゃあ、ここの人は徹底した管理をしてたんだね」
「最後の一気に上がった気温にも対応していたみたいだからねぇ」
根腐れをしたら、独特の臭みが纏わりつく。
味も落ちるし、うっすらと匂いがするのだ。
その生臭い匂いが甘い匂いから感じないのだ。
「よし、じゃあ行くか」
「どんな人なんだろうなぁ」
ドキドキと緊張しながら中に入るのだが、中にいる4人の人物を見て、芽依は崩れ落ちた。
「なぁんでいつもいるんですか、シュミットさん…… ほとんど家にいるって夜会の時に言ってませんでした? 」
「それはこっちのセリフなんだがな 」
崩れ落ちて四つん這いになっている芽依を腕を組んで見下ろすシュミット。
ふ……少し息を吐き出し呆れた様子なのは雰囲気でわかった。
「…………ふぅ、失礼しました。領主館から来ました。問題が発生されてるとの事でしたが、どうしましたか? 」
「領主館からか!! ここの苺を気に入ったから全て貰ってやろうと言っているのに、刃向かっているだけだ」
「………………………………」
頭が痛い……とシュミットは手を当てていて、芽依は半眼する。
そりゃ、反発もするだろうよ。何言ってるんだこの人。
芽依がこちらに来てあまり問題を起こす旅行者は居なかったから知らないのだが、人の往来が増えればそれだけ市場も回るが問題も増える。
人の行き来を制限していなくてもシロアリ被害てそれどころじゃなかった人達が、少し落ち着いた今、旅行気分で様々な場所に移動しているらしい。
この貴族もそうなのだろう。
「………………ここはシュミットさんのですか? 」
「いや、違う。年間契約をしていて今日は受け取りの日なだけだ。持ち主はあっちだな」
示された場所を見ると、不機嫌に睨みつけている人外者がいる。
すぐ横には破壊されたハウスと、潰され真っ赤に染った地面と無惨な姿をした苺たち。
すぐに直すには時間が掛かりそうだ。
「あああぁぁぁぁ……美味しそうな苺が……」
「ふん! 渡さないのが悪いんだろ!! 」
そんな言い分に、同じく庭で様々なものを育てている芽依も怒る。
「え? 何が悪いんですか? 丹精込めて作ってる苺を無縁者に蹂躙されたんですよ? 怒ってぶっとばして刺しても許されますよ? 」
「なっ!! 」
なんて無礼な! と叫ぶ貴族を放置して、残念な姿になった苺を見る。
もうこれは復活は難しいだろう。
栄養として土に戻すしかない。
「妖精さん……ですよね? 可哀想ですけどこのままにして置いたら苺がもっと可哀想ですから土に戻してもいいですか? 」
「………………そんな事できるの? 」
「はい。これくらいの範囲なら私1人で大丈夫です」
「…………お願い」
意気消沈している妖精に頷いて、芽依は手を組んだ。
まるでお祈りのポーズである。
日に日に強くなるディメンティールの力は芽依の中に蓄積されていて、少ない範囲の土壌再生を1人で出来るほどに力をつけていた。
ぶわり……と風が吹き、ベールを揺らす。
伏せ目がちの目はしっかりと土を見ていて、苺が地面に吸収されていくのを見つめた。 潰れて赤く染まる土も、赤みだけが吸収されていく。
そして、今までにした事のない事をしてみる。
眉を寄せて願うのだ。
「……………………美味しい苺が出来ますように」
すると、地面がふわりと白く光る。
それは一瞬だったが、妖精は目を見開いて見ていた。
「今……恩恵を与えてくれたの? 」
「上手く出来てますか? 」
「ええ………………ごめんなさい、びっくりしちゃって……」
「いえ。これからも美味しい苺作ってください」
そう言うと、その妖精はとても嬉しそうに笑った。
きっと、苺やほかの果樹も愛しているのだろう。とても幸せそうだ。
「…………さて、貴方は貴族だと聞きましたけど」
「ああ!! 」
「貴族だからって傍若無人です。しかも相手は妖精さんですよ?……良く殺されませんでしたね」
「殺され……? 」
「え…………人外者が気分で人を殺すって聞いてたけど、ちがう?」
キョトンとしている貴族の男の反応に首を傾げた芽依はメディトークを見ると、あっていると頷かれる。
「そんなわけないだろう! 俺は貴族だぞ! 平民とは違うんだ」
そう息巻く貴族だったが、この場は引き取り頂くよう言い聞かせ何とかこの場は収まった。
「もうさぁ、なんで貴族ってああなんだろうね」
「変に権力を持つと傲慢になるよね。でも、僕たちにしたら貴族だろうが平民だろうが変わらないのに」
同じ弱い人間と見てしまう人外者にとって、人間を特別に見るのはごく一部だけだ。
不思議そうに首を傾げるフェンネルを見上げて頷いた芽依は、これで終わりだな、と息を吐き出した。
数日後の夜の事。
ドラムストから離れた道端に、1人の男が殺されていた。
男は身なりからいって貴族で、周りに護衛などは見当たらない。
全身真っ赤に染まって目を見開いている貴族の周りには何故か苺の香りが漂っていた。
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