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登る意味
市場の事で、芽依達は少し騒ぎすぎた。
周りの住人がまるで監視をするように見てくるから、場所を変えようと移動をする。
人が集まる場所で情報を集めようとしたが、どうやら難しそうだ。
アーシェのすすめで直ぐに方向転換した芽依たちは、街から外れた海沿いに来た。
沈んだ街に元々なかった海に面した場所。
ここが既に水の中なのに海がある。
「……どうなってるんだろうね、海なんて無かったのに」
ミンミンが海に近付き中を除くと、底から何かが近付いて来ている。
じっと見ていると、スピードを上げたそれが飛び上がりミンミンの腕を掠めた。
「きゃぁぁぁ!! 」
鋭い痛みにミンミンが叫ぶ。
二の腕あたりの服が破れて出血していた。
ミリーナがすぐさま止血をして、大判のハンカチを持っていたリリベルから借りて腕に巻き付ける。
驚きと、ギュッと結んだ痛みと傷の痛みでボロボロと涙を流し流していた。
「なんなの?! なんなのよ!! 」
飛び出してきたモノは空中で一回転してから芽依たちを見てギャギャ! と笑う。
ギザギザの歯を剥き出しにしてわらう姿はホラーだ。
綺麗な見た目の女性が狂気的に笑う。
「…………な、なんだあれ?! 」
「魚の妖精だよ。知能が低いから言葉を交わせない低位の妖精。肉を引き千切ることに全力を出してるから、近付くと噛みちぎられるよ」
見た目綺麗な女性で、まさに人魚のようなのに、目が血走って口を開けばギザギザの鋭い歯をガチガチと鳴らす。
アーシェが知らない翔真に教えた時、芽依はカレンチナに来てすぐ、中央の沈んだ街を見た時にメディトーク達に教えて貰っていた事を思い出した。
そして、もうひとつ思い出す。
「あ……あぁぁぁあ!! 浄化って! 浄化って!! この場所の浄化のこと?! 負の感情が溜まって呪いになる……とか……」
全員が静まり返る。
この場所が本当に水に沈んだ街なら負の感情が集まり様々な呪いを生み出している。
そこで、全員が同じ答えにいきついた。
「…………この現象自体が、呪いから来てるんじゃないか」
「それにサーカスの団員が何らかの魔術で干渉をしてこっちに転移させたんじゃないかな。それなら……3日経ってクリア出来なかったら僕たちは死ぬか……最悪ここの住人になるかもしれない」
「…………少なくとも、あの時計塔に来ていた男はそうなんじゃないかい? 地面を踏みたいって言っていたからね。じゃあ登るで言うのは……」
全員が上を向いた。
水面がゆらゆらとゆれる様子が見えて空は無い。
この不思議な光景から登ると言ったら。
「…………地上に、登る……ってこと? 」
ミンミンが恐る恐る言うと、全員が険しい表情をさせた。
「じょ……冗談じゃないわ! 私は好きな人と幸せな結婚するの!! こんな訳分からない水の中であんなふうになるなんて絶対いやよ!! 」
いつか誰かがどうにかしてくれると諦めたような目で、人任せに無責任に言っていた市場の人達を思い出して叫ぶミンミン。
そんなの誰だって同じだと、誰かがため息を吐いた。
「…………まあ、なら浮上、浄化、豊穣の理由はわかるな」
ミリーナが腰に手を当てて言う。
はぁ……とため息をついて地面をつま先でなぞった。
「……なんなんだ? 」
翔真がわからないと首を傾げると、アーシェが分かっていなさそうな芽依と翔真、トーマスを見て話し出した。
「大地が汚染されていて浄化されると、土地は全ての栄養からなにからなくなっているんだ。だから、豊穣の力を使って大地を復活させないといけないんだよ」
「………………あぁ」
芽依が視線を下げて納得する。
つまり、シロアリ後の庭と同じ状態だということだ。
だとしたら、と芽依が顔を上げる。
「それを3日以内でやるのは無理があるんじゃないですか?」
「………………だから、複数回呼ばれてるんじゃないかい? 私たちみたいにある程度理由がわかって浄化をしても大地の復活には間に合わないだろう? 浄化はある程度終わっているんだろうさ。じゃないと私達はとっくに力尽きていただろうね」
「……なんども呼んで少しずつ浄化と再生を繰り返しているってことですか」
「そんなの無理よ! 豊穣の力って言ったってこんな広い土地全部とか無理だし、少しも回復してない状態で全回復とか聞いた事ない!!そんな事出来るのはそれこそ、ディメンティール様くらいよ! 」
ミンミンが叫びながら言う。
今の状態では解決策はない。すなわちこの場に留まる事になるのだ。
芽依は眉を寄せて険しい顔をする。
芽依なら出来なくは無い。瘴気ごと吸い込み体に蓄積させて、吸収したものを大地に返すと一気に回復が見込めるだろう。
ただし、沢山の人が見ている中でそれをするのはメディトーク達からもアリステアにも禁止されている。
さらに範囲が広すぎるのだ。
芽依は全てが終わるまで体が持つとも思えない。
困っている様子に気付いたアーシェが黙って見ている。
何か考えているだろう芽依をただじっと、見つめていた。
「……随分煩いじゃないか」
ざぶっ……と音がして顔を向けると、先程とまた違う女性が陸地に腰を下ろしていた。
下半身の尾は水に浸かったまま優雅に笑うその人はギザギザの歯をしてはいない。
だが、明らかにあちらの住人だとわかった。
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