[第一部完結]美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう

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呪いと魔術の融合


 体調が悪化しはじめ、帰ることになった芽依たち。
 翔馬が抱えようとしたが、すぐにリリベルが来て抱き抱えた。

「……ごめ……なさ……」

「いいから、声出すんじゃないよ」

「………………は、い」

 うっ……と吐き戻しそうな芽依を揺らさないように歩き、家に向かう。
 芽依は振り返りエルローリエを見ると、緩く手を振ってくれていた。


  
「………………なんだそれは」

 ヴィラルキスが足を擦りながらぐったりしている芽依を見た。
 眉をひそめているがミンミンは気にせずヴィラルキスに絡まりに行く。
 容赦なく振り払われて喚いていたが、ぐったりしている芽依から目を剃らせないヴィラルキスにムスッとした。

「……どうした」

「凝り固まった不浄や呪いを体に抱え込んだんだよ」

「なんでそんなことした」

 さらっと……と髪を寄せて顔を見るヴィラルキスの表情は険しいが、心配しているのがよくわかる。
 最後のグッタリとしていたナギサが頭に浮かび首を振るヴィラルキス。

「…………海に落ちた……」

「どんくさい」

「うぅ……」

 頭を叩かれた芽依は呻き声をあげる。
 引っ張られて落ちたのだが、警戒心薄く近付いた芽依が悪い為文句も言えない。
 きっと落ちた私を見たハス君はひっくり返っているかもしれない、と頭に手を当てた。

「…………ハスくーん。ご主人様は無事ですよー……」

「届いているといいねぇ」

 苦笑するリリベルに、少し寝なさいと言われて芽依は瞼を閉じた。

「………………で、どうだったんだ? 」

 芽依が寝たのを確認してから小声で話し出す。
 安全面を考慮してソファに転がされた芽依は、全員の声を子守唄に眠る。

「まあ、良くはない」

 はぁ、とミリーナがため息混じりに答え、ミリーナ、リリベル、アーシェによって今まで内容を聞いたヴィラルキスは頭を抱える。

「…………また面倒な事を」

「まず確認なんだが、浮上、浄化、豊穣を持ってるやつは誰だ? 」

「……浄化」
  
 ヴィラルキスが答え、その後も答えていく。
 ヴィラルキス、ミリーナ、リリベル、トーマスは浄化。
 芽依とミンミンは豊穣。
 アーシェは浮上だが、浮上に関しては力は弱い。基本的に情報収集が多い為あまり力になれないと。

「……え、わかんねぇよ」

 そして、来たばかりの翔真は意味がわからないと首を傾げている。

「圧倒的に浮上が足りないじゃないかい……そして浄化に偏ってる」

「まだ集まってない2人が浮上の可能性があるって事か」

「浄化の人数が多いから、綺麗に別れているわけじゃないのかもしれない。今の状況が浄化を優先にしないといけないのかもしれないな」

「死んだヤツらが浮上の可能性もあるからね。なるべく早く見つけないと浮上出来なくてこの場に残る……なんて事がないようにしないといけないなぁ」

 リリベル、ヴィラルキス、ミリーナにアーシェが悩みながら話をする。
 翔真トーマス、ミンミンはいまいち分かってないようだが静かに話を聞いているようだ。
 既に丸一日が経過する。
 残り一日半でこの広い水の底から転移者を探し出し脱出する必要がある。
 だが、肝心のキーワードと脱出方法がわからない。

「…………そもそも、クリアが水槽を浄化することだろう? だから浄化が多いのかねぇ……それは登るのと違うんじゃないかい? 」

「……そうか、水槽を浄化……水槽ってなんだ? 今まで水槽なんて見たか? 」


 眠ってから1時間程たっただろうか。
 かすかに聞こえる声に芽依の意識が浮上してきた。
 ぼんやりと話を聞いていると、時間は掛かったが話の内容をやっと理解した。

「じゃあ、水槽はあのステージにあったヤツって事だよな? こっからどうやってあの水槽を浄化? すんだよ」

 翔真がそう言っているのを聞いていると、トーマスが芽依に気付いた。 
 立ち上がり芽依の顔の前でしゃがみ、頬を撫でてくる。
 体が重くて動けない芽依は指1本動かすのも億劫だった。だから、ぼんやりと見ているだけ。
 抵抗しない芽依を見て、気を良くしたトーマスは顔を近付けてくる。 
 まだぼんやりしている抵抗出来ない芽依、それを見ていたメディトークは怒りに力を溢れさせ不可侵魔術の一部にヒビを入れる。
 その場所を見たフェンネルとシュミットが魔術を放出してヒビの範囲を広くした。


「……ちょっと、なにやってるんだい! 」

 トーマスの襟首を掴んで引き離したリリベルは顔を歪ませるトーマスを見る。
 全員が芽依たちを見て、なんかしたのか? と首を傾げた。

「おっ! 芽依起きたか! だいじょう……」

「気分はどうだ」

 片足で器用に近付き翔真を押しのけたヴィラルキス。
 それに目を向けて口を開いた。

「…………ヴィラルキス……さんが……優しい……」

「…………ナギサみたいにはしたくないからな」

「……ふふ。優しいね、いい人だ……」
  
 ぼんやりとしながら笑う芽依、笑みを見せるだけでホッとしたヴィラルキスは水を差し出してきた。
 リリベルに支えられて体を起こした芽依は、何とか口に入れるが、端からこぼしてしまう。
 それを服の袖で拭いてあげるヴィラルキス。
 初対面のイライラしていたヴィラルキスはなりを潜めて落ち着き、優しさをみせる。
 ナギサがいない事が、かえってヴィラルキス本来の冷静さを取り戻していたのだ。 
 移民の民は人外者によって狂わされるが、人外者も移民の民によって狂わされていると分かりやすい現実が芽依の前にあった。

 隣に座ったヴィラルキスに寄りかかりながら、先程聞いていた話を思い出す。
 
 水槽……水槽……今は水の底……あの時水槽は水の中を写していた。
 水槽を浄化……今水槽ってどうなってるの?
 もしかして今も水槽は私たちや街の様子を写しているの?
 それってまるで……

「………………箱庭みたいだね」
 

 
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