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番外編
Sky Blue Earrings 3 ★
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講義を受けて、合気道サークルで軽く身体を動かして、スーパーで買い物をしてからコーポアマノに帰った。食事と風呂を済ませて、レポートのための調べ物をする。
金曜日だというのに、行人が帰宅したのは夜11時を過ぎた頃だった。
「おかえり」
薄くクマのできた目元を撫でると、手のひらに頬を摺り寄せてくる。可愛い。
「プレミアムフライデーなんじゃねえの」
そう訊くと、行人は、
「何それ都市伝説か?」
と唇をゆがめた。余程お疲れらしい。
東京国税局に務める行人は、春の異動で課税部資料調査課リョウチョウから査察部に配属になった。いわゆるマルサだ。
与党の大物政治家の脱税疑惑のニュースで、永田町の衆議院議員事務所に強制捜査に入る行人が一瞬だけ映ったことがある。
行人は家では仕事の話をあまりしない分、すげえなと空乃まで誇らしく思ったものだ。
「なんか食う?」
風呂から出てきた行人に訊くと、
「要らない、ビール飲みたい」
と不健康なことを言う。
風呂上りでも顔色が良くないから、きっと夕飯を抜いているくせに。
答えは無視して、食卓に大きめの茶碗を置いた。
白飯に、温めた寄せ豆腐、青ネギとかつお節、生姜を載せて、醤油を回しかけただけのものだ。
「はい、食って」
「さっきの質問の意味とは」
そう言いながらも、行人はいただきますと手を合わせて塗りの匙を手に取る。
一口食べて顔が綻ぶ。目が輝いて、眉間がぱっと開く。美味しいって顔。それから、勢いよくかつかつと食べてくれる。
空乃はにんまりする。
これだよなあ、この感じ。作り甲斐があるなあって思う食べ方。
「美味い。これ、なに丼?」
「豆腐丼」
「へえ、シンプルなのに美味いな」
「時代小説に出てきたやつ、再現してみた」
「ああ、鬼平のメシとか美味そうだよな」
「これは鬼平じゃないけどな」
ビールじゃなくて日本酒が飲みたくなったという行人に、熱燗を一合作ってやる。
空乃はまだ未成年なのでほうじ茶だ。
時代劇つながりで大河ドラマの話をしながら飲んでいるうちに、行人の目元が赤く染まっていく。風呂の湿気の残る髪や睫毛はしっとりと重そうだ。
可愛いし綺麗だし、エロい。これで33歳とか、反則だ。
「もう一合飲みたい」
徳利の最後の一滴を空にした行人がねだった。
「仕方ねえなあ」
空乃が立ち上がると、行人が意外そうに眼を見開く。
「駄目って言わないんだな」
「今週ハードだったろ。好きなだけどうぞ」
無類の酒好きのくせに、査察部に異動してから、行人は平日に酒を飲まなくなった。
国税局の中で一番花形で、つまり一番きつい部署だ。常に責任感とプレッシャーが伴う。
その分達成感があると行人は笑うが、相当疲れているはずだ。
「ありがとう」
お猪口に酒を注いでやると、行人は微笑んで口をつけた。
金曜日だしいちゃいちゃするっつーか、セックスしてえなって思ってたけど、今日は気のすむまで飲ませて眠らせてやろう。
2人はぽつりぽつりとだけ話す。静かな夜だ。
冷蔵庫の稼働音や電灯の音がやけに大きく聞こえる。
開け放した窓から外を走る自転車の音が流れ込んでくる。
空乃は片肘をついて、行人を見つめる。
沈黙が心地いい。
昼の学食では皆がのべつくまなく話していて賑やかだった。いろいろな食卓がある。
不意に中曽根嬢とピアスのことを思い出した。
耳元を指して尋ねた。
「ユキちゃん、これ、今どんな色?」
行人は目を細めて少し考える。
「夜だと、少し濃くみえるな。ブルーキュラソーみたいだ」
酒に例えるところが行人だ。
「へえ。気に入ってんのに、自分じゃ見えねえからなあ」
大学の合格発表のその日に、行人はこのピアスをプレゼントしてくれた。
高校生の頃は、ごつめのシルバーピアスをたくさん付けていた。
石のピアスは女っぽくて敬遠していたのだが、このピアスは、行人からの贈り物という点を差し引いても、一目で気に入った。
透明なのにきらきらはしていなくて、空色から濃紺まで変化する色味がとても綺麗だ。
「鏡持ち歩けば」
「自分の耳チェックする奴とかおかしいだろ」
想像したのか、行人はくすくす笑う。それから聞き返した。
「誰かになんか言われたのか?」
「昼メシん時、ピアス綺麗だねって褒められた」
「ふーん」
判断しがたいニュアンスで相槌を打ってから、行人はお猪口を置いて立ち上がった。テーブルを回り込んでくる。
ちゅっ。
音を立ててピアスに口づけた。
不意打ちのキスに空乃は笑う。
「どしたん、いきなり」
行人は唇を尖らせた。
「それ言ったの、女の子だろ」
「女子ですけど」
「その子、おまえが好きなんだな」
「知らない。興味ない」
即答すると、行人は蠱惑的に微笑み、首に腕を巻きつけてくる。誘われている。
こんなふうに、行人はいきなりスイッチが入る時がある。
とろけた目、酒で染まった頬、伏せられた睫毛の長さ、洗い立ての髪。
首の白さ、鎖骨の影、その下の今は隠れている肢体。
ちゅっちゅっと耳元にキスの雨が降る。
「ユキちゃん、煽るなって。疲れてんだろ、呑んだら寝ろよ」
こんな誘われ方されて応じない選択肢はないが、明日の朝に理不尽な叱責を受けないように、一応諭しておく。
「疲れてるよ。だから、治めないと眠れない」
行人が空乃の手を掴んで股間に持っていく。触れたそこは固く萌きざしている。
官能の前兆に腰が重くなり、空乃は唇を舐めた。
「したいなら、脱げよ」
わざと強めに言うと、行人は大人しく従った。
座ったままの空乃の前で、スウェットの上下とボクサーパンツを躊躇いもなく脱ぎ去る。
酒好きで運動もそんなにしないのに、腰は細いし腹も薄い。
食事をしたばかりなので、胃が少し膨らんでいる。自分の料理が行人の血肉を作っていると考えると征服感がある。
「脱いだよ」
行人は娼婦のように、片足を空乃の股の間に置いた。目の前で秘部が丸見えになる。
セックスなんか興味ありませんっていう涼し気な顔立ちをしているくせに、この人は相当エロい。波に乗ると、空乃の方がびっくりするくらいやらしい絡み合い方をしてくる。
そういう時は、誰だよこんなこと教えこんだ奴、なんて思いは打ち消して、空乃も必死で応じる。
「は、エロ」
行人のペニスをむしゃぶりつくように口でしごき、同時に後ろに触れた。
蕾は温かくて柔らかかった。指はするんと入るし、中は濡れている。
「準備、してたんだ」
こくりと頷く細い顎。
そんなにほぐす必要はなさそうなので、後ろはゆっくり指を抜き差しするだけにして、フェラに専念した。
散々竿を舐めたあと、睾丸を揉みながら固くした舌で鈴口をなぶると、行人の腰がびくんと跳ねた。
「んあっ……」
「イきそ?」
「ん、でも、やだ」
「いーよ、一回出しといた方が楽だろ」
口淫の合間に言うと、行人は頑なに首を振った。ピンク色のペニスは破裂しそうに色を濃くしているのに。
行人はしつこくピアスにキスをしながら、耳元で囁く。ふわりと日本酒が香る。
「いい、ハメられてから、両方でイきたいから……」
なんて台詞だ。
「けど」
空乃は躊躇う。
台所だ。椅子の上で跨ってもらうか、立ちバックしかない。
迷っていると、行人は椅子から降り、テーブルに手をついた。空乃の方に腰を突き出してくる。
あまりの情景に、こめかみが沸騰した。
血の巡りがおかしい。頭と股間の両方が急激に熱くなる。
「っ」
空乃は低く唸ると、立ち上がってブリーフとパンツをまとめて脱ぎ捨てた。
行人の両手首を掴んで上半身をテーブルに縫い付けるように倒した。背骨のひとつひとつにキスを落としながら、左脚だけを持ち上げてテーブルの上で折りたたむ。
さらけ出された穴は赤く色づいて、誘うようにひくついている。
局部を丸出しにされる対位に行人は慄いた。
「や、なに」
頬が羞恥に染まる。
ストリップして誘っておいて、こんなことで恥ずかしがるとか。
「欲しいんだろ」
開いた尻たぶの間に完勃ちした自身を擦り付けると、急かすように行人が腰を揺らす。
慣らすように擦ってから、カリの部分をゆっくり埋め込んだ。
「…んんっ…あ、んっ」
性急に揺すり挿れると、行人が甘く喘いだ。
酩酊のせいか、ナカはいつもより熱く絡みついてくる。
あー、あんま、持たねえかも。
「あ…あ、あ、あんっ」
なるべくゆっくり出し入れすると、呼応するように啼く。ぞくりとくるあえかな声だ。
快楽を逃がそうとしているのか、行人の指先がテーブルを掴むように動く。
置きっぱなしだったお猪口に指が当たり、日本酒が零れた。行人の手首を押さえていた空乃の指まで濡れる。
行人が舌をのばし、濡れた指を舐めてくる。
なんて官能的な絵面だ。
空乃は達しそうになるのを奥歯を噛みしめてこらえ、行人の口の中に指を突っ込んだ。
「んっ、は、ん…。くち、きもちいっ」
歯茎の裏を執拗になぞると、行人が震えだす。
「も、いくっ」
「いーよ」
「前、触って」
「だーめ。後ろだけで、な」
「やっ、無理…」
行人が腰を前後に揺らす。テーブルの縁に股間を擦り付けようとしているのだ。
「何してんの、だーめ」
身体を手前に引き寄せる。前立腺を押しつぶすようにストロークを続ける。
「お願い、触って」
涙が溢れ、テーブルの上で唾液や日本酒と混じる。
後ろだけでもドライでもイけるやらしい人だが、今日は無理らしい。
本当に辛そうなので、空乃は行人のペニスに指を絡めた。
「行人」
快楽を与えながら低く名を呼ぶと、首筋が赤く色づく。
最中に名前を呼ぶと中が一瞬ぐっと締まる。
行人は恥ずかしがるけれど、気持ちいいので毎回やってしまう。
行人が好きな先っぽをいじめながら、カリを強めに擦り上げると、ひゅっと息を吸い込んで行人は達した。右手が白く生暖かく濡れていく。
びくびく跳ねる身体と連動するように、直腸が搾り取るようにうねる。
すげえ、きもちいい。
深い快感に包まれて、空乃は行人の奥に精を吐き出した。
二人とも全然足りなくて、二回戦のために全裸で布団を敷いた。端から見たら(誰も見たがらないだろうし見せるつもりもないが)、相当滑稽な姿だったに違いない。
寝床を整えて、朝まで睦み合った。それこそ、行人が泣いてすがって意識を飛ばすまで。
翌朝、不機嫌マックスの行人に、週末の家事一切を押し付けられた。
「ワイシャツのアイロンもだからな!」
行人は布団の中で、キスのしすぎで腫れた唇を尖らせている。
空乃は笑う。
そんくらい、安いもんだ。
金曜日だというのに、行人が帰宅したのは夜11時を過ぎた頃だった。
「おかえり」
薄くクマのできた目元を撫でると、手のひらに頬を摺り寄せてくる。可愛い。
「プレミアムフライデーなんじゃねえの」
そう訊くと、行人は、
「何それ都市伝説か?」
と唇をゆがめた。余程お疲れらしい。
東京国税局に務める行人は、春の異動で課税部資料調査課リョウチョウから査察部に配属になった。いわゆるマルサだ。
与党の大物政治家の脱税疑惑のニュースで、永田町の衆議院議員事務所に強制捜査に入る行人が一瞬だけ映ったことがある。
行人は家では仕事の話をあまりしない分、すげえなと空乃まで誇らしく思ったものだ。
「なんか食う?」
風呂から出てきた行人に訊くと、
「要らない、ビール飲みたい」
と不健康なことを言う。
風呂上りでも顔色が良くないから、きっと夕飯を抜いているくせに。
答えは無視して、食卓に大きめの茶碗を置いた。
白飯に、温めた寄せ豆腐、青ネギとかつお節、生姜を載せて、醤油を回しかけただけのものだ。
「はい、食って」
「さっきの質問の意味とは」
そう言いながらも、行人はいただきますと手を合わせて塗りの匙を手に取る。
一口食べて顔が綻ぶ。目が輝いて、眉間がぱっと開く。美味しいって顔。それから、勢いよくかつかつと食べてくれる。
空乃はにんまりする。
これだよなあ、この感じ。作り甲斐があるなあって思う食べ方。
「美味い。これ、なに丼?」
「豆腐丼」
「へえ、シンプルなのに美味いな」
「時代小説に出てきたやつ、再現してみた」
「ああ、鬼平のメシとか美味そうだよな」
「これは鬼平じゃないけどな」
ビールじゃなくて日本酒が飲みたくなったという行人に、熱燗を一合作ってやる。
空乃はまだ未成年なのでほうじ茶だ。
時代劇つながりで大河ドラマの話をしながら飲んでいるうちに、行人の目元が赤く染まっていく。風呂の湿気の残る髪や睫毛はしっとりと重そうだ。
可愛いし綺麗だし、エロい。これで33歳とか、反則だ。
「もう一合飲みたい」
徳利の最後の一滴を空にした行人がねだった。
「仕方ねえなあ」
空乃が立ち上がると、行人が意外そうに眼を見開く。
「駄目って言わないんだな」
「今週ハードだったろ。好きなだけどうぞ」
無類の酒好きのくせに、査察部に異動してから、行人は平日に酒を飲まなくなった。
国税局の中で一番花形で、つまり一番きつい部署だ。常に責任感とプレッシャーが伴う。
その分達成感があると行人は笑うが、相当疲れているはずだ。
「ありがとう」
お猪口に酒を注いでやると、行人は微笑んで口をつけた。
金曜日だしいちゃいちゃするっつーか、セックスしてえなって思ってたけど、今日は気のすむまで飲ませて眠らせてやろう。
2人はぽつりぽつりとだけ話す。静かな夜だ。
冷蔵庫の稼働音や電灯の音がやけに大きく聞こえる。
開け放した窓から外を走る自転車の音が流れ込んでくる。
空乃は片肘をついて、行人を見つめる。
沈黙が心地いい。
昼の学食では皆がのべつくまなく話していて賑やかだった。いろいろな食卓がある。
不意に中曽根嬢とピアスのことを思い出した。
耳元を指して尋ねた。
「ユキちゃん、これ、今どんな色?」
行人は目を細めて少し考える。
「夜だと、少し濃くみえるな。ブルーキュラソーみたいだ」
酒に例えるところが行人だ。
「へえ。気に入ってんのに、自分じゃ見えねえからなあ」
大学の合格発表のその日に、行人はこのピアスをプレゼントしてくれた。
高校生の頃は、ごつめのシルバーピアスをたくさん付けていた。
石のピアスは女っぽくて敬遠していたのだが、このピアスは、行人からの贈り物という点を差し引いても、一目で気に入った。
透明なのにきらきらはしていなくて、空色から濃紺まで変化する色味がとても綺麗だ。
「鏡持ち歩けば」
「自分の耳チェックする奴とかおかしいだろ」
想像したのか、行人はくすくす笑う。それから聞き返した。
「誰かになんか言われたのか?」
「昼メシん時、ピアス綺麗だねって褒められた」
「ふーん」
判断しがたいニュアンスで相槌を打ってから、行人はお猪口を置いて立ち上がった。テーブルを回り込んでくる。
ちゅっ。
音を立ててピアスに口づけた。
不意打ちのキスに空乃は笑う。
「どしたん、いきなり」
行人は唇を尖らせた。
「それ言ったの、女の子だろ」
「女子ですけど」
「その子、おまえが好きなんだな」
「知らない。興味ない」
即答すると、行人は蠱惑的に微笑み、首に腕を巻きつけてくる。誘われている。
こんなふうに、行人はいきなりスイッチが入る時がある。
とろけた目、酒で染まった頬、伏せられた睫毛の長さ、洗い立ての髪。
首の白さ、鎖骨の影、その下の今は隠れている肢体。
ちゅっちゅっと耳元にキスの雨が降る。
「ユキちゃん、煽るなって。疲れてんだろ、呑んだら寝ろよ」
こんな誘われ方されて応じない選択肢はないが、明日の朝に理不尽な叱責を受けないように、一応諭しておく。
「疲れてるよ。だから、治めないと眠れない」
行人が空乃の手を掴んで股間に持っていく。触れたそこは固く萌きざしている。
官能の前兆に腰が重くなり、空乃は唇を舐めた。
「したいなら、脱げよ」
わざと強めに言うと、行人は大人しく従った。
座ったままの空乃の前で、スウェットの上下とボクサーパンツを躊躇いもなく脱ぎ去る。
酒好きで運動もそんなにしないのに、腰は細いし腹も薄い。
食事をしたばかりなので、胃が少し膨らんでいる。自分の料理が行人の血肉を作っていると考えると征服感がある。
「脱いだよ」
行人は娼婦のように、片足を空乃の股の間に置いた。目の前で秘部が丸見えになる。
セックスなんか興味ありませんっていう涼し気な顔立ちをしているくせに、この人は相当エロい。波に乗ると、空乃の方がびっくりするくらいやらしい絡み合い方をしてくる。
そういう時は、誰だよこんなこと教えこんだ奴、なんて思いは打ち消して、空乃も必死で応じる。
「は、エロ」
行人のペニスをむしゃぶりつくように口でしごき、同時に後ろに触れた。
蕾は温かくて柔らかかった。指はするんと入るし、中は濡れている。
「準備、してたんだ」
こくりと頷く細い顎。
そんなにほぐす必要はなさそうなので、後ろはゆっくり指を抜き差しするだけにして、フェラに専念した。
散々竿を舐めたあと、睾丸を揉みながら固くした舌で鈴口をなぶると、行人の腰がびくんと跳ねた。
「んあっ……」
「イきそ?」
「ん、でも、やだ」
「いーよ、一回出しといた方が楽だろ」
口淫の合間に言うと、行人は頑なに首を振った。ピンク色のペニスは破裂しそうに色を濃くしているのに。
行人はしつこくピアスにキスをしながら、耳元で囁く。ふわりと日本酒が香る。
「いい、ハメられてから、両方でイきたいから……」
なんて台詞だ。
「けど」
空乃は躊躇う。
台所だ。椅子の上で跨ってもらうか、立ちバックしかない。
迷っていると、行人は椅子から降り、テーブルに手をついた。空乃の方に腰を突き出してくる。
あまりの情景に、こめかみが沸騰した。
血の巡りがおかしい。頭と股間の両方が急激に熱くなる。
「っ」
空乃は低く唸ると、立ち上がってブリーフとパンツをまとめて脱ぎ捨てた。
行人の両手首を掴んで上半身をテーブルに縫い付けるように倒した。背骨のひとつひとつにキスを落としながら、左脚だけを持ち上げてテーブルの上で折りたたむ。
さらけ出された穴は赤く色づいて、誘うようにひくついている。
局部を丸出しにされる対位に行人は慄いた。
「や、なに」
頬が羞恥に染まる。
ストリップして誘っておいて、こんなことで恥ずかしがるとか。
「欲しいんだろ」
開いた尻たぶの間に完勃ちした自身を擦り付けると、急かすように行人が腰を揺らす。
慣らすように擦ってから、カリの部分をゆっくり埋め込んだ。
「…んんっ…あ、んっ」
性急に揺すり挿れると、行人が甘く喘いだ。
酩酊のせいか、ナカはいつもより熱く絡みついてくる。
あー、あんま、持たねえかも。
「あ…あ、あ、あんっ」
なるべくゆっくり出し入れすると、呼応するように啼く。ぞくりとくるあえかな声だ。
快楽を逃がそうとしているのか、行人の指先がテーブルを掴むように動く。
置きっぱなしだったお猪口に指が当たり、日本酒が零れた。行人の手首を押さえていた空乃の指まで濡れる。
行人が舌をのばし、濡れた指を舐めてくる。
なんて官能的な絵面だ。
空乃は達しそうになるのを奥歯を噛みしめてこらえ、行人の口の中に指を突っ込んだ。
「んっ、は、ん…。くち、きもちいっ」
歯茎の裏を執拗になぞると、行人が震えだす。
「も、いくっ」
「いーよ」
「前、触って」
「だーめ。後ろだけで、な」
「やっ、無理…」
行人が腰を前後に揺らす。テーブルの縁に股間を擦り付けようとしているのだ。
「何してんの、だーめ」
身体を手前に引き寄せる。前立腺を押しつぶすようにストロークを続ける。
「お願い、触って」
涙が溢れ、テーブルの上で唾液や日本酒と混じる。
後ろだけでもドライでもイけるやらしい人だが、今日は無理らしい。
本当に辛そうなので、空乃は行人のペニスに指を絡めた。
「行人」
快楽を与えながら低く名を呼ぶと、首筋が赤く色づく。
最中に名前を呼ぶと中が一瞬ぐっと締まる。
行人は恥ずかしがるけれど、気持ちいいので毎回やってしまう。
行人が好きな先っぽをいじめながら、カリを強めに擦り上げると、ひゅっと息を吸い込んで行人は達した。右手が白く生暖かく濡れていく。
びくびく跳ねる身体と連動するように、直腸が搾り取るようにうねる。
すげえ、きもちいい。
深い快感に包まれて、空乃は行人の奥に精を吐き出した。
二人とも全然足りなくて、二回戦のために全裸で布団を敷いた。端から見たら(誰も見たがらないだろうし見せるつもりもないが)、相当滑稽な姿だったに違いない。
寝床を整えて、朝まで睦み合った。それこそ、行人が泣いてすがって意識を飛ばすまで。
翌朝、不機嫌マックスの行人に、週末の家事一切を押し付けられた。
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