龍の檻と青年

はる

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抱みこむ

医務室の灯りは落とされ、
小さな間接灯だけがベッドの周りをやわらかく照らしていた。

霧島は椅子に腰掛けたまま、奏多の様子を見ていた。

顔色はまだ万全じゃない。
でもさっきより、少しだけ穏やかだ。

「……もう休め」

低く、優しい声。

奏多は小さく頷く。

けれど目は閉じない。

視線が、何度も霧島の方へ向く。

言いたいことがある顔。

でも、迷っている。

霧島が気づく。

「どうした」

奏多は少しだけ唇を噛んでから、ゆっくり手を動かす。

自分から。

そっと。

霧島の袖に触れる。

それだけで、心臓が跳ねる。

一瞬止まりかけて、それでも逃げない。

指先が布を掴む。

弱く。

でも、はっきりと。

霧島はその手を見る。

何も言わない。

奏多は視線を逸らしたまま、小さく言う。

「……いて、くれますか」

かすれた声。

子どもみたいに素直な声。

霧島の胸が静かに締めつけられる。

「ああ。笑」

即答。

奏多の指が、少しだけ強くなる。

でも、それだけじゃ足りないみたいに。

少し間を置いて。

霧島がぽつりと言う。

「……一緒に寝るか」

静かな提案。

甘やかす声じゃない。

でも、拒絶もない。

奏多の目が、ぱっと大きくなる。

「……え」

耳が、また赤くなる。

「嫌ならやめる」

霧島は淡々と言う。


その言葉に、奏多は慌てて首を横に振る。

「い、嫌じゃないです」

小さく。

でも、はっきり。

霧島は立ち上がる。

上着を脱いで、ベッドの端に腰を下ろす。

大きな体が隣にあるだけで、空気が少し変わる。

奏多は緊張している。

でも、逃げない。

霧島がゆっくり横になる。

少しだけ距離を空けたまま。

「おいで」

短い言葉。

奏多はそっと近づく。

触れない程度の距離。

でも――

霧島の腕が、ゆっくりと背中に回る。

強くない。

包むだけの抱擁。

奏多の体が、ぴくりと震える。

「……大丈夫だ」

低い声が、耳元に落ちる。

その瞬間、奏多の力が抜ける。

胸に額を預ける。

心臓の音が聞こえる。

ゆっくり、一定の鼓動。

「……あったかい」

無意識にこぼれる言葉。

霧島の手が、髪を撫でる。

「寝ろ」

でもその声は、少し柔らかい。

奏多は目を閉じる。

さっきまで胸を締めつけていた不安が、少しずつ溶けていく。

手は、まだ霧島の服を握っている。

離さない。

でも依存じゃない。

ただ、安心したいだけ。

霧島は天井を見つめながら、静かに息を吐く。

腕の中の体温。

小さな重み。

守りたいと、はっきり思う。

「……無理するな」

眠りかけた奏多に、もう一度。

小さな声で。

奏多はうっすら微笑んだまま、眠りに落ちていった。

その夜は、どちらも離れなかった。
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