197 / 277
ニヤニヤ
朝の光が、医務室のカーテンの隙間から差し込む。
静かな部屋。
ベッドの上。
霧島はまだ目を閉じているが、眠りは浅い。
腕の中には、すっぽり収まる体温。
奏多は完全にくっついていた。
額を胸に預け、片手は霧島のシャツをしっかり握ったまま。
寝顔は穏やかで、昨夜の不安が嘘みたいだ。
そのとき――
コンコン、と軽いノック。
「点滴外して――」
ガチャ。
愛斗が、いつものテンポで扉を開ける。
そして。
固まる。
数秒の沈黙。
霧島はゆっくり目を開ける。
視線が合う。
愛斗の目が、じわっと細くなる。
「……へぇ」
霧島は無言。
腕は、まだ奏多の背中に回ったまま。
愛斗は一歩中に入り、状況を改めて確認する。
「完全に抱き枕スタイルじゃん」
軽いツッコミ。
霧島の眉がわずかに動く。
「うるさい」
小声。
そのやりとりで、奏多がもぞりと動く。
「……ん」
目がゆっくり開く。
状況を理解するまで、三秒。
四秒。
そして。
愛斗と目が合う。
「…………」
一瞬で顔が赤くなる。
バッ、と霧島から離れようとする。
が。
まだ体に力が戻りきっておらず、体がよろける。
それを見てすぐに霧島が即座に支えた。
「無理するな」
至近距離。
余計に赤くなる奏多の顔。
「す、すみません……!」
何に対してか分からない謝罪。
愛斗は腕を組んで、にやにやしている。
「いや~安心したわ。ちゃんと甘えられるじゃん」
「ちが……っ」
奏多の耳まで真っ赤。
霧島は無表情を装っているが、耳の先がほんの少し赤い。
愛斗はため息混じりに言う。
「で?距離取るとか言ってたの誰だっけ」
霧島が睨む。
「余計なこと言うな」
「はいはい」
愛斗はカルテをめくりながら続ける。
「まあ、顔色は昨日よりいいね」
奏多は布団をぎゅっと握る。
恥ずかしさで今にも蒸発しそうだ。
霧島が小さく言う。
「……嫌だったか」
低い声。
奏多はぶんぶん首を振る。
「ち、違います」
小声。
「……安心、しました」
その一言で。
今度は霧島が少しだけ視線を逸らす。
愛斗がそれを見逃すわけもなく。
「はいはい、朝から甘い空気ありがとう」
わざとらしく言って、さっさと部屋を出ていく。
扉が閉まり、
静寂。
気まずい。
奏多は視線を合わせられない。
霧島は咳払いを一つ。
「……朝飯、食えるか」
いつもの声。
でも少しだけ柔らかい。
奏多は小さく頷く。
ベッドの端に座る二人の距離は、昨夜より自然だった。
恥ずかしさはある。
でも、後悔はない。
少しだけ、空気があたたかい朝だった。
静かな部屋。
ベッドの上。
霧島はまだ目を閉じているが、眠りは浅い。
腕の中には、すっぽり収まる体温。
奏多は完全にくっついていた。
額を胸に預け、片手は霧島のシャツをしっかり握ったまま。
寝顔は穏やかで、昨夜の不安が嘘みたいだ。
そのとき――
コンコン、と軽いノック。
「点滴外して――」
ガチャ。
愛斗が、いつものテンポで扉を開ける。
そして。
固まる。
数秒の沈黙。
霧島はゆっくり目を開ける。
視線が合う。
愛斗の目が、じわっと細くなる。
「……へぇ」
霧島は無言。
腕は、まだ奏多の背中に回ったまま。
愛斗は一歩中に入り、状況を改めて確認する。
「完全に抱き枕スタイルじゃん」
軽いツッコミ。
霧島の眉がわずかに動く。
「うるさい」
小声。
そのやりとりで、奏多がもぞりと動く。
「……ん」
目がゆっくり開く。
状況を理解するまで、三秒。
四秒。
そして。
愛斗と目が合う。
「…………」
一瞬で顔が赤くなる。
バッ、と霧島から離れようとする。
が。
まだ体に力が戻りきっておらず、体がよろける。
それを見てすぐに霧島が即座に支えた。
「無理するな」
至近距離。
余計に赤くなる奏多の顔。
「す、すみません……!」
何に対してか分からない謝罪。
愛斗は腕を組んで、にやにやしている。
「いや~安心したわ。ちゃんと甘えられるじゃん」
「ちが……っ」
奏多の耳まで真っ赤。
霧島は無表情を装っているが、耳の先がほんの少し赤い。
愛斗はため息混じりに言う。
「で?距離取るとか言ってたの誰だっけ」
霧島が睨む。
「余計なこと言うな」
「はいはい」
愛斗はカルテをめくりながら続ける。
「まあ、顔色は昨日よりいいね」
奏多は布団をぎゅっと握る。
恥ずかしさで今にも蒸発しそうだ。
霧島が小さく言う。
「……嫌だったか」
低い声。
奏多はぶんぶん首を振る。
「ち、違います」
小声。
「……安心、しました」
その一言で。
今度は霧島が少しだけ視線を逸らす。
愛斗がそれを見逃すわけもなく。
「はいはい、朝から甘い空気ありがとう」
わざとらしく言って、さっさと部屋を出ていく。
扉が閉まり、
静寂。
気まずい。
奏多は視線を合わせられない。
霧島は咳払いを一つ。
「……朝飯、食えるか」
いつもの声。
でも少しだけ柔らかい。
奏多は小さく頷く。
ベッドの端に座る二人の距離は、昨夜より自然だった。
恥ずかしさはある。
でも、後悔はない。
少しだけ、空気があたたかい朝だった。
あなたにおすすめの小説
灰の底で君に出会う
鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。
それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。
これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
また恋人に振られたので酒に飲まれていたらゴツい騎士に求婚していた件
月衣
BL
また恋人に振られた魔導省のエリート官吏アルヴィス。失恋のショックで酒に溺れた彼は勢いのまま酒場に現れた屈強な王宮騎士ガラティスに求婚してしまう。
翌朝すべての記憶を保持したまま絶望するアルヴィスだったが当のガラティスはなぜか本気だった。
「安心しろ。俺は誠実な男だ。一度決めたことは覆さない」
逃げようとするエリート魔導師と絶対に逃がさない最強騎士
貢ぎ体質な男が捕まる強制恋愛コメディのつもりです!!