転生したら冷酷公爵のベットだったんですがどういうことですか神様!

新田 ゆえ

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8話 男の後悔

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俺はぼーっと廊下を歩きながら考える。

どうしたらいいんだ。

ああやって聞けばミズセは話してくれると思った。

でもそんなわけなかった。

たったあって1日の、それも無理やり抱かれたような最低な男に話してくれるはずもなかった。

怯えたような目に、カタカタと震える体。

当たり前なはずなのに、俺の心はズキズキと傷んだ。

自分に腹が立つ。

どうしてこんなにも彼女を怯えさせることしかできないのか。

水も用意してくれない気の利かない男。

それだけの印象だったらまだマシだったのに。

...なんてことを。

「公爵様、どうかされたのですか?」

話しかけてきたのは明るいメイド。

他のメイドは話しかけるのを躊躇しているのか、怖がっているのか全く声をかけてくれない。

まあ、当たり前か...

『あれが冷血公爵ですってよ』『冷酷公爵とも呼ばれているそうだな』

ヒソヒソと俺社交界に顔を出すたびに話す貴族達。


彼女もこんな俺の呼び名を知ったらきっと泣き出すに違いない。

そして、はっと我に帰る。

「水を、用意してくれ」

「かしこまりました!」

メイドはわずか1分ほどで用意してくれた。

とても優秀だ。

「お部屋までですよね?お運びします」

しまった、部屋に来ればミズセがいることがバレてしまう。

...いや。もう逃げられてるかもな。

きっと逃げているに違いない。

この屋敷は広いからどこかで迷子になっているのだろう。

俺は期待せずに部屋にそっと戻った。

だがメイドは連れずに。

「...いたのか」

「に、逃げた方が良かったんでしょうか...」

ミズセは落ち着いたのか、目は腫れているが涙は止んだようだ。

その様子に少しホッとする。

——いや、助かる。

その言葉は喉に突っかかって出なかった。

怖い、ミズセを怖がらせてしまうことが。

俺はミズセにしたら何をされるかわからない酷い男だ。

だから下手になにか喋れはまたきっと怯えられるだろう。

「水...持ってきた」

俺は水をグラスに注ぎ差し出した。

その水をじーっと見つめるミズセ。

なにを考えているかなんてすぐに分かった。

「毒なんて入ってないから安心して飲め」

ミズセはきっとどこか高貴な家の出なのだろう。

変わってはいるが、質の高い服。

どこが変わっているかと聞かれれば、露出の多いところだ。

ミズセの世界はそれが普通なのか?

俺を誘いにきたとはとても考えられない。

だからきっとそれが普通なんだろう。

「ゴクリ。」

ミズセがおずおずと水を飲む音が聞こえる。

良かった、飲んでくれた。

そんな些細なことで喜ぶなんて。

コンコン。ノックされる。

「誰だ」

「公爵様、メイドのリーファです!」

さっきの明るいメイドか。

「今は入るな」

「...それが、どうしても伝えたいことがございまして」

ミズセは何故か再び震えだした。

——あ。


まさか。


俺は、自分が公爵だと、伝えていなかったのか?

それどころか、名前すらも。


ああああああああ。

なんて馬鹿なんだ、どうしてこうにも怯えさせてしまうのか。

俺はミズセを怯えさせないよう、細心の注意を払い、そっと手を伸ばした。

ミズセは一瞬びくっとするも、動こうとはしない。

俺は伸ばした手をそのまま頭に乗せ、優しく撫でる。

「入れ」

メイドのリーファはそっと、ドアを開け入りその場で硬直した。

「え...公爵様に...」



「生き別れの妹がいたなんて...」

は...?

いや、確かにミズセは黒髪黒目で、俺も黒髪黒目だから、多少顔が違くても兄弟に見えるのかもしれないけど!!

「違う、ミズセはそんなんじゃない」

「まあまあまあ!ミズセ様と言うのですね!妹でないのでしたら恋人かしら?うふふ、今日はお祝いですわ!」

メイドのリーファはスキップしながら部屋を出て行った。

伝えたいこととは、何だったのだろう。

ミズセを見ると、急な状況に頭が追いつかないようでぼーっとしている。

「ミズセ」

「はっ!」

声をかけると我に帰ったみたいだ。

「あ、あ、あ、あの!こ、公爵様...?なんですか?」

「黙っていてすまなかった...言い忘れてただけで、消してわざと黙っていたわけではなかったんだ。ヴァルプ・ルガル。公爵だ」

明らかに焦っているようなミズセ。

その様子はまるで狼に見つかった兎のようで、可愛い。

可愛いなぁ。

逃げたりしないのか?

逃げたらもちろん追いかけるけど。

ミズセはそーっとベットから降りる。

また同じパターンだ。

「どこに行く?」

「え、えと...ちょっと外の空気を吸いに」

それもそうだな、流石に一日中部屋に篭らせるわけにはいかないか。

「わかった」

俺が許可を出すとミズセは目を見開く。

表情がコロコロ変わる...やっぱり可愛いな。

ミズセは少し重たい扉を開け、部屋から出た。


ので、もちろん俺も追いかけた。





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みんなの感想(2件)

はるか
2021.03.15 はるか

すごく面白いです!!更新頑張ってください!!((✧σ‪ωσ)

解除
penpen
2020.06.11 penpen

溜め込んでから読むね?(・д・ = ・д・)似たような物語って多いから分岐しそうなくらいから読むね?(´・ω・`)

2020.06.11 新田 ゆえ

本当は七話で完結させようと思ったけど、じれじれしたのが書いてみたくて...長編です!

解除

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