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一章 かつての生徒が迎えにきて

5話 その男、学会を追放されて

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珍しい変わったことをしていれば、その分よく思わない連中も出てくるもので……

「魔術学など、この国に不要! 属性魔法とともに積み上げてきた国の歴史を否定している! 王権を害する悪質な魔法だ!」
「なんて怪しいんだ! きっと、闇の力を利用しているにちがいない!」

などと、教授らの間では否定的な意見、陰謀論などが多数派を占めていた。
それはどれだけ有用性や安全性、両立できることを伝えても変わらない。

要するに彼らは、『魔術』の利便性が広く知れ渡ることにより『属性魔法』がおちぶれて、自分が仕事を失うことを怖がっていたのだ。

だから俺はいっそ気にしないこととして、研究を続けていたのだが、ある日突然に辞職を突き付けられた。


それは、問答無用の追放であった。
学校に行けば出禁を言い渡され、理由を聞けば「喪失魔術学が世の中に与える危険性を鑑みた」とのこと。

その決定は、学校の運営を行っていた上流貴族らによってなされたというから、俺にはもうどうしようもなかった。

くわえて、「すぐに王都を出ること」「今後、喪失魔術を使用しないこと」など、あらゆる条件を一方的に出される。

さもなくば、「生徒や知人にも危害が及ぶ」「騒げば処刑だ」などと脅されれば、俺はそれらを受け入れるしかなかった。


王都を去ることになった俺に、行く宛てはなかった。

それまで「出世頭だ」と宝のように俺を扱っていた実家の態度は一変し、勘当処分を食らう。曰くつきだから、都会では就職もできない。

そうしてしばらく浪人生活を強いられたのち田舎に流れ着き、たどり着いたのが今の職場だ。

魔術で培った速記術が採用の理由になった。

それが3年前、25の時である。


そんな経験から俺は、魔術を封印し、同時に目立つことを避けるようになった。
周囲と違うことをすれば、災いを生む。

身をもってそれを体験したからこそ、安定した職について、安定した日々を送りたかった。

……結果、ありえないくらいの残業とサービス出勤を強いられているわけだが。
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