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一章 かつての生徒が迎えにきて

34話 その男、女子生徒と秘密の約束をする。

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「まぁ神話で言う精霊と同じような存在だよ。……どうやら、とんでもない式を解いたみたいだな」
「神話の精霊⁉ そんな凄い存在なの、あの小さい子。ってか、やばい魔術式解いちゃったってこと⁉」
「声を落としてくれ、ルチアーノくん」
「あ、ごめん……。でも、精霊って実在したんだ……。疑いたいけど、この目で見ちゃったしなぁ」

ルチアはその後、精霊の存在について根掘り葉掘りと聞いてくる。
興味が芽生えると、かなり前のめりだ。

「でも精霊って、五体しかいないんじゃないの?」
「今日の授業で、魔素には五属性だけではなく、いろいろな種類があるといっただろう? それらの魔素はその特徴ごとに、白とか黒とか大分類で色分けがされてるんだ。
 彼女はその大分類の魔素をつかさどる一体だよ」

純粋に興味を持って聞いてもらっている以上、変な誤魔化しはできない。
俺はひとつひとつ、真面目に答えていく。

「今日だけで先生には驚かされっぱなしだぁ。ほんと何者?」
「ただの魔術研究者だよ」

ここだけは、正直に言えないがそればかりはしょうがない。

「今見た光景はいったん秘密にしてくれるか、ルチアーノくん」

彼女の質問がやんだのち、俺は彼女にこう頼みこむ。

幻とされてきた精霊を召喚したなんて情報が流れれば、魔法学界隈全てが大騒ぎになるになること間違いなしだ。

どんな影響を与えるか読みきれない状況で公開するのは、どうしても避けたかった。

「まぁたしかにとんでもないよねぇ、この発見は。こんなのばれたら、先生も居合わせたルチアも飛ばされそう」
「そのとおりだ。頭がよく切れるな、ルチアーノくん」

「あは、まーね。よく言われる。
でも、秘密にすることは大いに賛成だけどさ、ルチアはどうすればいいの。式を解かないと、あの教授の特別指導受けるか、単位を落とすかする羽目になるんだけど。噂が本当だったら、そもそもやばいし」
「そうだな……」

俺は改めて、一考する。

「その件は一つ策があるんだが、乗ってくれないか?」

そうして、とある策を考えついて、一応誰にも聞かれないようひっそりとルチアに伝えた。

「もちろん、身の安全は保障する。どうだ?」
「うわ、頭いい。先生、面白いね。うん、よし乗った!」

ルチアはそう言うと、手を開いて顔の前に掲げる。

「なんだ、そのポーズは」
「その話に乗ったって証。今日見たことは黙って置くし、その作戦には協力する。
だから先生は単に手を上げてくれればいいの。ほら」

俺は促されるまま、手を上げる。
すると、彼女が手を合わせてきて、ぱちんと心地の良い音が鳴った。

こうして、秘密の厳守が成立したのであった。
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