36 / 82
一章 かつての生徒が迎えにきて
36話 その男、多種多様な魔術で変態教師を撃退する。
「課題はできたかね、ルチア・ルチアーノ」
「えっと、それが難しくてぇ……」
ルチアには、できなかったふりをするよう頼んでいた。
そのとおりに、彼女は演じてくれる。
その声はさっきよりかなり高く、わざとらしい気もするが許容範囲だ。
「はは、そうかそうか。まぁ君にはまだ早かったかもしれないが、授業中にワシに口ごたえするんだから、これくらいできると思ったんだが……残念だよ」
「レイブル教授には分かるんですかぁ?」
「はは、まぁね。だが、君のような落第生に教えるつもりはないよ。『喪失魔術学』の単位は、君には与えられない」
「えぇ、それは困ります~」
……やっぱり、演技のしすぎ感はあるが、レイブル教授はそれでも気づいていないらしい。
「まぁ今からワシが言う事を聞くなら、君に単位を与えてやらないこともない」
「えっ。それって、なんですか?」
「そうだなぁ……ぐへへっ。お前、クソガキのくせにいい身体してるな。よし、ここで服を脱ぐんだ。そして、ワシの前で裸になれ」
「……え? でもそんなことしたらぁ」
「大丈夫さ。もうワシは退勤したことになっている。誰にもバレやしない。
もしできないと言うなら、単位はないよ。君に選択権はない。さぁ早くしろ。ワシは、反抗的な奴が従順になる瞬間が最も興奮するんだ」
どうやら疑惑は事実だったらしい。
レイブル教授が特殊な性癖を暴露したのち、鼻息を荒くする音が入り込む。
ここまで聞いたところで、俺はリーナと揃って立ちあがった。もう証拠は十分だ。
すぐに扉を蹴破って、教授室に飛び込むのだが……
「きもすぎでしょ、変態教師」
「ぐああっ、目がぁぁっ……!!」
すでに、ほとんどかたはついていた。
ルチアには、最終手段として『フェルショップ』でかつての生徒・フェデリカにもらった煙玉を持たせていたのだ。
その直撃を食らったらしく、醜い面を晒しながらレイブル教授――いや、今やただの変態犯罪者はのたうち回る。
「な、なんでアデルくんがここにいる⁉ り、リナルディ理事まで……⁉」
そんな中でも、俺とリーナの姿は目に入っていたらしい。
彼は途端にあわてふためき始める。
「なにをされようとしていたのですか、レイブル教授」
俺は、何も知らないふりで尋ねる。
「ち、ちょっと授業態度の悪い生徒がいたものだから特別指導をしようかと……」
必死の言い訳が始まるけれど、残念。
俺たちはもう、すべてを知っている。
「先生、例の音声を」
俺はリーナに促され、【記録】した音声を再生する。
その術名の通り、リアルタイムで音声を聞き取るだけではなく、後から再現もできるのだ。
『――ぐへへ、ここで裸になるんだ。服を脱げ』
「な、な、これはワシのさっきの……! こんなもの、どうやって」
「魔術の応用ですよ。普通分かるんじゃないですか? あんなに難しい術式を生徒への宿題に出すんだから。あの問題、最近出てきた古代魔術式ですよね。あれに比べれば、【記録】なんて簡易魔術だ」
「くっ。なぜ、アデルくんがそれを知ってるんだ⁉ まさか、君が仕組んだのか⁉ いや、きっとそうだ。これはすべて、この若造が――」
俺に罪をなすりつけようと、リーナに訴える作戦に切り替えたらしいが……
彼女は目をつむり、大きくため息をつく。
次に開かれた瞳に宿るのは、静かな怒りだ。それは、直接向けられたわけでもない俺の肌がそばだつほど鋭い。
「言い逃れはできませんよ、レイブル教授。私もすべてを見聞きしておりました。今ここにおいて、あなたの教授職をはく奪し、獄へと引き渡します」
「な、なんだと……⁉」
「どこに驚くことがあるのですか。当然でしょう」
リーナはそう言ったのち、水属性魔法で作り出した輪でレイブル教授の両手足を縛り付ける。
今回も魔術による補助を利用したようで、レイブルは痛い痛いと床でのたうち回る。
「先生に罪を擦り付けようとしたのですから、これくらいの報いは受けてもらわなくてはなりません。余罪もあるのでしょう?」
「い、いや、過去にはほとんど……」
「ほとんど……? すべて吐きなさい、外道」
容赦のない追及、いや拷問がはじまる。
「うわー、リーちゃん怖い。あと、なんか絵面やばい、怖い」
その様子に、ルチアがこう漏らしていたのが印象的だった。
その後、衛兵らにレイブル教授を引き渡す。
「先生、ありがとうね。ほんと助かった! それだけじゃ言い表せないくらい。というか……リーちゃんのライバルになっちゃおっかなぁ、ルチア」
「……認められませんよ、ルチアーノさん。生徒と教師間の恋愛は、いっさい禁止です」
「えー、恋愛に年齢も立場も関係ないって言ったら、さっきは同意してくれたじゃん~」
……なんだか不穏な会話が聞えてきた気もするが、一件落着?
あなたにおすすめの小説
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!