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二章 属性魔法学との対峙
44話 その男、冒険者ギルドに再登録をしようとしたら……思わぬ優遇?
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♢
数日後の授業終わり、俺が足を向けたのは冒険者ギルドだ。
その名前を聞けば、ダンジョンで狩りや採取を行う冒険者だけが利用する施設にも思えるが、実態は少し違う。
初級よりランクの高いダンジョンの中に入り調査を行うためには、冒険者でなくとも、このギルドにて許可を得る必要がある。
実力や倫理観などをはかる試験を受けなくてはならないのだ。
まぁリーナに同行してもらえばどのダンジョンへの出入りも自由なのだが……今後のことを考えれば、理事である彼女に毎回調査へついてきてもらうわけにもいかない。
「あの、今から申し込みをしたいのですが……」
ギルドの登録・昇級試験受付カウンターにて、俺は係員に声をかける。
が、どうやら少し遅かったらしい。
「すいません、今日はもう登録試験の受付を締め切っております」
残念だが、これは仕方がない。
今日は授業後に質問などを受け付けた影響で、時間が少し押していたこともあった。
また余裕をもって授業を終われた日に出直せばいいか、と俺が引き下がろうとしたところ――
「先生!!!!」
カウンター奥ののれんから、一人の若い男性が出てきた。
「この声もしかして、と思ったんです。いやぁ、久しぶりですね、ほんと! 俺っすよ、俺! レオナルド・リオルです」
「……リオルくんか。本当に……?」
「やだなぁ、まじっすよ。ちょっとはまともになったもんでしょ?」
そう言えば、アイテムショップの経営者であるフェデリカに聞いていたっけ。
レオナルドが今やギルドにおいて、重職についている、と。
昔は随分なやんちゃ青年だった。
伯爵家の八男であり、甘やかされて育ったのだろう。
授業をすっぽかして、街で遊び歩くなど困った生徒であったが、今やその見なりも肩書きも立派に社会人である。
赤色の髪は短く切られて清潔感があったし、身長のかなり高くなった体にはギルドのフォーマルな制服がよく似合っていた。
……まぁ、口調は砕けているが。
「フェデリカに聞いてたんですよ。先生が王都に帰ってきた、って。だから挨拶に伺おうと思っていたところなんです。でも忙しくて。
俺、今はこの王都冒険者ギルドで冒険者試験を総括してるんです。それもこれも、先生に【鑑定】の才能を見抜いてもらったからです。くそ生意気な俺でしたけど、今はまじで感謝してます」
王立第一魔法学校では、最上級生の18歳になれば、研究室に所属する必要がある。
彼は最初、『卒業が楽そうだから』との理由で、俺の魔術研究室を選んだらしい。
ろくに鍛錬をしていなかったから、属性魔法も魔術もまともに使えなかった彼だが……
とりあえず基礎だけでもと魔術・【鑑定】の指導を行えば、その目利きはみるみるうちに向上していく。
そのうちに本人もやる気になったようで、対象が高速で動いていても、魔素の動きを捉えて見極められるまでになっていた。
「先生のおかげで、今や家でも出世頭ですよ。って……おっと、興奮しすぎましたね。先生、試験を受けたいんですか?」
「あぁ、うん。初級以外のダンジョンに入る権利は5年前にはく奪されてしまったからね……。でも、また時間のある時に出直してくるよ」
「いえいえ、なにを言うか。先生が受けたいってことでしたら、今からでもやりましょう!」
「そんな特別扱いみたいなことをすると、よくないんじゃないか?」
「問題ありません。『推薦枠』ってのがあって、一定以上のギルド役職者が推薦する人は受付時間外でも試験を受けられるんっすよ。
先生なら、大推薦っす! 本当なら試験を免除したいくらいですもん」
レオナルドはそう言いながら、その場で推薦書を書いてくれる。
「では、のちほど会いましょう。準備をしてきます」
それからこう残すと、カウンターの後ろへと引き下がっていった、。
その後、受付員はやたら態度が丁寧になり、かなり親切に申込書の記入方法を教えてくれる。
……急な展開だったが、ここまでしてもらって断ることもない。
かつての生徒に感謝して、俺は試験にのぞむこととなった。
数日後の授業終わり、俺が足を向けたのは冒険者ギルドだ。
その名前を聞けば、ダンジョンで狩りや採取を行う冒険者だけが利用する施設にも思えるが、実態は少し違う。
初級よりランクの高いダンジョンの中に入り調査を行うためには、冒険者でなくとも、このギルドにて許可を得る必要がある。
実力や倫理観などをはかる試験を受けなくてはならないのだ。
まぁリーナに同行してもらえばどのダンジョンへの出入りも自由なのだが……今後のことを考えれば、理事である彼女に毎回調査へついてきてもらうわけにもいかない。
「あの、今から申し込みをしたいのですが……」
ギルドの登録・昇級試験受付カウンターにて、俺は係員に声をかける。
が、どうやら少し遅かったらしい。
「すいません、今日はもう登録試験の受付を締め切っております」
残念だが、これは仕方がない。
今日は授業後に質問などを受け付けた影響で、時間が少し押していたこともあった。
また余裕をもって授業を終われた日に出直せばいいか、と俺が引き下がろうとしたところ――
「先生!!!!」
カウンター奥ののれんから、一人の若い男性が出てきた。
「この声もしかして、と思ったんです。いやぁ、久しぶりですね、ほんと! 俺っすよ、俺! レオナルド・リオルです」
「……リオルくんか。本当に……?」
「やだなぁ、まじっすよ。ちょっとはまともになったもんでしょ?」
そう言えば、アイテムショップの経営者であるフェデリカに聞いていたっけ。
レオナルドが今やギルドにおいて、重職についている、と。
昔は随分なやんちゃ青年だった。
伯爵家の八男であり、甘やかされて育ったのだろう。
授業をすっぽかして、街で遊び歩くなど困った生徒であったが、今やその見なりも肩書きも立派に社会人である。
赤色の髪は短く切られて清潔感があったし、身長のかなり高くなった体にはギルドのフォーマルな制服がよく似合っていた。
……まぁ、口調は砕けているが。
「フェデリカに聞いてたんですよ。先生が王都に帰ってきた、って。だから挨拶に伺おうと思っていたところなんです。でも忙しくて。
俺、今はこの王都冒険者ギルドで冒険者試験を総括してるんです。それもこれも、先生に【鑑定】の才能を見抜いてもらったからです。くそ生意気な俺でしたけど、今はまじで感謝してます」
王立第一魔法学校では、最上級生の18歳になれば、研究室に所属する必要がある。
彼は最初、『卒業が楽そうだから』との理由で、俺の魔術研究室を選んだらしい。
ろくに鍛錬をしていなかったから、属性魔法も魔術もまともに使えなかった彼だが……
とりあえず基礎だけでもと魔術・【鑑定】の指導を行えば、その目利きはみるみるうちに向上していく。
そのうちに本人もやる気になったようで、対象が高速で動いていても、魔素の動きを捉えて見極められるまでになっていた。
「先生のおかげで、今や家でも出世頭ですよ。って……おっと、興奮しすぎましたね。先生、試験を受けたいんですか?」
「あぁ、うん。初級以外のダンジョンに入る権利は5年前にはく奪されてしまったからね……。でも、また時間のある時に出直してくるよ」
「いえいえ、なにを言うか。先生が受けたいってことでしたら、今からでもやりましょう!」
「そんな特別扱いみたいなことをすると、よくないんじゃないか?」
「問題ありません。『推薦枠』ってのがあって、一定以上のギルド役職者が推薦する人は受付時間外でも試験を受けられるんっすよ。
先生なら、大推薦っす! 本当なら試験を免除したいくらいですもん」
レオナルドはそう言いながら、その場で推薦書を書いてくれる。
「では、のちほど会いましょう。準備をしてきます」
それからこう残すと、カウンターの後ろへと引き下がっていった、。
その後、受付員はやたら態度が丁寧になり、かなり親切に申込書の記入方法を教えてくれる。
……急な展開だったが、ここまでしてもらって断ることもない。
かつての生徒に感謝して、俺は試験にのぞむこととなった。
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