「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

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二章 属性魔法学との対峙

65話 その男、生徒指導をもこなす



「まぁそっかー、普通に考えたらできないかぁ、そんなこと」
「あぁ、そうだよ。なにか、人がやったという証拠も他になさそうだしね」
「だね。たまたま魔物のせいって感じかぁ~」

ルチアが素直に受け入れてくれて、俺は内心ほっとする。
一方では、なにか尻尾を掴めないだろうかと地面を中心に観察していたら……

視界が唐突に暗くなる。
なにかと見上げてみれば、魔物の集団に、あたりを囲われている。

フライングバット。コウモリ型の魔物で、空中を浮遊しながら群れで攻撃を加えてくるのだから、面倒臭い敵だ。
危険度は一匹なら低いが、群れとなると、一気に引き上がる。

「うわぁ、なんか見てるだけでグロ……」

そして、サイズがコウモリより大きいために、痩せこけた人のようにも見えて、たしかに怖い。

鳴き声も、キィキィと不気味だ。
そう思っていたら、一羽が羽を広げて、さっそくこちらへ突っ込んでくる。

「ルチアーノくん、くるぞ!!」

策を練る時間を取りたいところだったが、待ってくれるわけもない。
先頭の一匹に続いて、彼らは集団で襲ってくる。

「わ、わ、わ!! まじで、無理だし!!」

ルチアはどうやら、コウモリが得意じゃないらしい。

肩をすぼめて頭を抱え、俺の袖をぎゅっと握る。
そこで、ひとまず俺は彼女の服の肩口を引いて、【吸収】の壁により、防御壁を形成した。

「……先生、ありがとう」

一度はこう感謝されるけれど、

「でも、なんで倒さなかったの? アーマヅラでもないし、あれくらいどうにかなるんじゃないの。というか、倒してよ~。まじで無理だし!」

こんなふうに指摘もしてくるから、さすがにセンスがある。
実際、【加重】でもなんでも、範囲魔術を使えば、簡単に倒せたとは思う。

が、しかし。
それでは、ルチアをここに連れてきた意味がない。

今日は指導もかねて、ここへやってきたのだ。ならば、むしろ敵が現れるのはいい機会だ。

「ルチアーノくん、火属性魔法を使えるんだったね? 左手で、火球の魔法をお願いしてもいいかな」
「え、ルチアがやるの?」
「今日は君の実習も兼ねてるからね。大丈夫、そう怖がることはないよ」

「実習ってそうだけど……でも、じゃあ属性魔法でいいの? ってか、ルチアの魔法じゃ、あれ数匹倒すのが限界だけど?」
「そこを魔術で補助するんだ。とにかくやってくれ」

俺がこう言えば、ルチアは怪訝そうにしながらも、詠唱を唱えるとともに左手の手のひらに火球を形成する。

魔力のほどはなかなかだ。
足りていないとすれば、安定感だろうか。基本的には力強いのだけど、たまに大きく揺れて、火力が弱まっている。

それを確認してから俺は空中に魔術陣を速記する。

「いいかい、ルチアーノくん。ここに書いたのは、【強化】魔術だ。まずは、真似をして同じ陣を描いてもらえるか?」
「わ、分かった!」

ルチアは慣れないようにしつつも、見よう見まねで魔術陣を作図していく。
そうして描き上がった図は、なかなかの出来栄えだ。

「これって【魔素収集】の応用って感じ?」
「さすがだよ。うん、【強化】の魔術は、自分の属性と同じ魔素を選んで収集して、それを変換する魔術だ。それと、陣を円形にしたのは――」
「もう分かるよ、ルチア。円形の陣は、拡散型。一気に焼き払えってことでしょ」

その頼もしい言葉には、ふっと笑ってしまう。
まったく思っていたとおりのことを言ってくれるのだから、教師冥利に尽きる。

「あぁ、やってくれ」

俺はそう言うと、【吸収】の防御陣を解除する。
そのすぐあと、ルチアが魔法陣に火球を近づけると、魔術陣に魔力が漲る。

そしてそれは、弾けるように扇型に広がり――

「キィ……!!!」

フライングバットの群れ全体に、大ダメージを与えていた。
精度が足りなかったせいか、遠い場所にいた個体までは倒せなかったようだが、多くがばたばたと地面に落ちる。

十分すぎるくらいの威力だ。

「す、すごすぎる。ルチアの魔法、こんなんもう冒険者レベルじゃん」

その状況に、ルチアは手を広げて魔法を放ったままの体勢で、固まる。
そこへ一際大きな個体が翼を大きく広げて襲い来たから、

「おい、ルチアーノくん! 油断しすぎだ!」

俺はとっさの判断で、【加重】の魔術を使い、フライングバットを地面へと叩きつける。

そうすることで、ことなきを得て、ほっと一つ息をつく。

「……ごめん、先生」

ルチアは俺の腕にしがみつきながら、こちらを見上げて眉を下げる。
こういう顔をされると弱いのだが、教師としてはきつく言っておかなければならない。

「まったく君は。才能はあるんだから、そういうところは直していかないといけないよ」
「……気をつけます」

ルチアは俯き加減に言う。
それきり、黙り込んでしまった。

よほど反省しているのか、俺の少し後ろを歩くようになる。
少し言いすぎてしまっただろうか。


俺は気になってしまい、後ろを振り返る。

「えっと、そこまで気に負わなくてもいい。これから少しずつ……」

と、フォローを入れようとして気づいた。
ルチアがなにやら、にまにまと笑っている。

「騙されたね、先生。落ち込むわけないじゃん、こんなんで」
「あのなぁ……。本当に危険だから言ってるんだぞ?」
「分かってる分かってる。そこはアドバイスとしてちゃんと受け取ってるよ」
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