「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

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三章 古の対峙

72話 その男、一流冒険者に真実をつきつける



俺たちは足音を殺して、かつ魔導灯の明るさも抑えて、ゆっくりと進む。一定程度近づいたところで飛び込んできたのは、眩しいオレンジの炎だった。

そこに広がっていた光景に目が丸くなる。

「ガルゥ!!!」

オレステ・オレンが、まさに魔物と対峙していたのだ。

それだけならダンジョンであれば、別になんということはない。
が、異常なのはその数のほうであった。
あまりにも多くの魔物がそこには固まっていた。

サーペント、デントラットといった、この『惑いの森林』ダンジョンで普通に見かける魔物たちはいい。
が、目を引くのは比較的南の地域で多く見られる大きな単眼を持ち葉から火の粉を降らす植物魔物・アイや、北方にしか現れない熊型の魔物・オルソなんて魔物だ。

このダンジョンに出現することはめったにない。
それも共存するなんて、ありえないのだ。

それらの攻撃をオレステは淡々と、なぎ倒していく。
それを見ながらに【鑑定】魔術を使えば、他の地点に比べて明らかに瘴気が濃い。そして、【魔物召喚】の魔術を使われた痕跡が残っている。

それは千年前においても使用が禁止されていた禁忌の術だ。

その特徴は、「黒」の魔素を利用していること。この間、ビアンコを召喚したことで蘇った記憶の中に、その魔素のこともあった。
ビアンコの持つ「白」の魔素と対になるそれは、瘴気と似た特徴を持つ。

中にはこれを悪用して、魔物を操る者もいた――。


と、そこまで分析したところで、こちらにも一体のギアオルソが襲い掛かってきた。

地面を掴むように蹴り、猛然と駆けてくる。
かなりのスピードだ。【加重】で叩きつけようにも、相手は俺の数倍以上の身体をしたかなりの巨体である。

そこで俺は、リーナと自分の周りに【浮遊】の魔術をかける。
ふわふわと、身体はだんだんと宙の高いところまで上がっていく。周りの岩や木々も、同様に空中を漂う。

「せ、先生……! た、高いかも……」

……リーナがスカートを履いていることまでは考慮できていなかったが。
懸命に裾を抑える彼女を横目に、

「わ、悪い。あとはもうこれだけで済むから」

俺はギアオルソの動きを注視する。
そして目論んだ通り、俺たちが浮かぶ宙の真下に来たところで、魔術陣を解除。

その脳天へと大岩を叩きつけてやった。

そのうえで、地面へと降りる。
その頃には、オレステのほうも、魔物を倒し終えていたらしい。

「……お前たち、たしか」

倒れた魔物の奥から、薄明りの中でもはっきりと分かるくらい、、鋭い視線をこちらへと向けてくる。
一応、斧は背中にしまっていたから、害意はないらしい。

「オレステ・オレン君だね。会うのは、数年ぶりかな? アデル・オルラドだ。こっちはリーナ・リナルディ。と、紹介しなくても知っているかな?」
「……にこやかに話すつもりはない。なぜここにいる」
「それはこっちが聞きたいよ。こんな時間にここでなにをしていたのか教えて貰おうか。俺たちは、それを知るために来たんだよ」

俺が笑顔を作りながら言う。

「魔物を倒しに来た、というのは通じませんよ。街を徘徊したあとに、変な入口からダンジョンに入ったんです。理由があったのでしょう、オレステ・オレン」

一方リーナはといえば鋭い追及をしかけて、彼は一度目を瞑る。
それから、なにを言うでもなく、立ち去ろうとするから、俺はその行く手を【吸収】の壁を作って阻む。

そのうえで、【加重】をかければ、彼は足元を一目見てから、じっとこちらを睨みつけてきた。

「……人を拘束しておいて尋問とは、お前たちも大概怪しいな」
「話のすり替えですよ、それは。あなたが白状するまで、解放する気はありませんよ。なぜ、こんなことをしていたのです」
「それを言えば、解放するのか」
「ええ、もちろん。教職者ですから、元生徒相手に嘘を吐くわけにはいかないからね」

当然、答えによっては拘束を解く気はないのだが。
そんな俺の意図を知ってか知らずか、オレステは口を開く。

「……ある人に指示をもらったからだ。それ以上は知らない。ここに、普段は現れることのない魔物が現れるから倒してくれないかと、依頼を受けた」

見る限り、嘘をついているようには見えなかった。
肝心の部分は、彼には伝えられていなかったらしい。

命令者は誰か。
オレステはそれを伏せていたが、リーナの事前情報があったから、もう誰のことかは分かる。

そして、事前に立てていた推測もほとんど確信に変わっていた。

「シモーニのことだな。君が彼の研究室出身で親しくしていたことは既に調べがついているよ」
「……なんで、そんなことまで」
「そのシモーニを疑っているからだよ。ここ最近の魔物の暴走事件に関与しているんじゃないかとね」
「なん、だと?」
「大方狙いは、属性魔法学の復権と、魔術学を再び排除するためだろうね。愛弟子の君に手柄を挙げさせて、一方で魔術によって「魔物が呼び寄せられた」と嘘の告発をして、魔術学を潰そうという魂胆だろうね」

俺がここまで話したところで、シモーニの表情が一気に険しくなる。

纏う空気もいっぺんに変わった。鋭い圧が、俺たちへと向けられる。
思わず一歩下がってしまうほどの迫力だった。そして、それだけじゃない。

「シモーニ先生がそんなことをするわけがないだろうが!!」

彼はなんと自力で【加重】をふりほどき、斧を構えてみせる。
さすがは一流冒険者だ。その実績はただの飾りではないらしい。

「先生のことだ。きっと、なにかを掴んで、俺にこんなことをさせているんだ、そうに違いねぇ」

なるほど、かなり心酔しているらしい。
ここまで怒るというのがいい証拠だ。

大方、その忠誠心を利用して、悪事に利用したということだろうが……それを彼に今諭してもたぶん、なんの効果もない。
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