「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】

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三章 古の対峙

76話 分かってる



「……悪魔族との、魂を売る禁忌契約。シモーニの奴、なんてことをしてるんだ」
「先生、悪魔族というと……伝承の?」
「あぁ。今はいないとされる、かつて存在した「黒」の魔素を操る種族だよ。人間を滅ぼそうとして、大戦争を仕掛けてきたこともある」

悪魔族――。

この時代になってから、その存在を見聞きしたのは教科書などの資料の上だけだったが、千年前には、人間に仇をなす恐ろしい勢力として、たしかに存在していた。

かつての俺も、彼ら悪魔族と対峙したことが何度かあった。
数は多くないが、一人一人に魔法使い何人分もの力があり、かなり手こずらされたっけ。

そんな危険な種族が今の時代にも、ひっそりと永らえていたらしい。

「……嘘だ。そんなものはいない」
「どういうことだい? オレステ・オレン」
「悪魔族だって? そんなものいるわけがない。もしいたとして、シモーニ先生がそんな奴と契約するわけがない。ありえないんだ」

オレステは声を震わせながら、書類を破り捨てようとする。
が、しかし、たぶん破れないように【補強】の魔術がかけられているのだろう。それはそのまま地面に叩きつけられる。

たぶん、自分の師がとんでもないものに加担しているという現実を受け入れられないのだろう。

が、もう覆る要素がない。
その契約書の続きには、「魔物を召喚させること」「オレステ・オレンに手柄をあげさせること」「街に魔術痕を残すこと」など一連の謎を繋げる話が、この契約書によるものだと明らかになることが書かれてある。

おそらく、流れはこうだ。
最初に起きた、植物魔物・アーマヅラの暴走は、悪魔族の仕業。
おそらく、人族の生活を脅かすことで、復権を目論んでいたのだろう。

そこへ俺がその調査へと乗り出し、国王の許可まで得た。
それをよく思わなかったシモーニへ悪魔族側から、話を持ち掛けたのだろう。

「『魔術学』を貶める手伝いをしよう」とでも言えば、あの男なら乗ってしまうに違いない。

「これは罠だ。何者かがシモーニ先生を蹴落とすために、こんなものを仕組んだんだ。だって、おかしいだろう? なんで他の証拠は出てこないのに、これだけ出てくるんだ」

「とかげの尻尾切りだろうね。たぶん初めからそのつもりだったんだ。もし明るみになることがあれば、シモーニ一人にその罪を押し付ける予定だったんだろう」

悪魔族の存在が世間に明るみになることは、たぶん計算済みだ。
遅かれ早かれ、いつかは人間たちの前に姿を現すつもりだったとしたら、むしろ恐怖を植え付けるにはいい機会になる。

最初から最後まで、シモーニは利用されたのだ。
その魔術学への執拗な嫉妬心を。


「受け入れなさい。あれは、そんなにいい人間じゃない」

リーナが厳しい口調、オレステに告げる。
シモーニに対して、初めからいい印象を持っていなかった彼女は、こうばっさりと切り捨てられるのだろうが……

「……うるさい」

やはりオレステはそうはいかないらしい。

「あなたも、利用されていたのよ。早くそれに気づいた方がいいわ」
「うるさいって言ってるだろ!!」

怒りの籠った、ひときわ大きな声だった。
そう広くない室内で叫ばれたものだから、耳奥がきーんと鳴る。

まだその響きが残る中、オレステは一転して弱弱しい声で続けた。

「……分かってる。そんなことは。分かってるんだ」

たぶん理屈じゃないのだ。
いくらはっきりしても、『信じていた師が悪事に手を染めていた』という事実は簡単に受け入れられるものじゃない。

俺だって、彼の立場ならば、目の前の証拠を信じられたかどうか。


この呟きには、リーナも黙り込むしかなかったらしい。


三人の間に無言が落ちる。
そのまま空気は凍り付いていたのだが……、それを外からの轟音がにわかに破った。

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