「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】

文字の大きさ
82 / 82
三章 古の対峙

81話 英雄扱い再び。(一区切りです)


その後、俺たちは残る魔物たちを掃討して、シモーニによる王都への魔物召喚騒動はどうにか収束を見た。

被害は、それなりに大きかった。

けが人が出たり、建物が半壊したり、倒された魔物が腐って異臭を垂れ流したり、とその問題は多岐にわたる。
数週間たった今でも、衛兵たちはその対応に追われているらしい。

新聞の二、三面を埋め尽くすのは、その手のニュースばかりだ。
決して、明るい気持ちになれるようなものでもない。

「……なかなか難儀なものだね」

俺は馬車の中、朝刊新聞を閉じながら、一人こう漏らす。

それに対して、隣に座るリーナは俺から新聞を取り上げて、その一面をこちらへと向けた。
そんなことをされずとも、そこに踊る見出しはすでに読んでいた。

そのうえで、見ないようにしていたのだ。

そのわけは、簡単である。
そこには、『国を守りし英雄・アデル、今日も王立魔法学校で勤務』などという文字が躍っているためだ。

「……ただ勤務しているだけ。こんな当たり前のことが一面に載るのはおかしいと思うな」
「人気であることの証左ですよ、先生」
「人気になるようなことをしたつもりはないのだけどね」

思わずため息が出る。

実はここ数日、俺は毎日のように新聞の一面を飾っている。


その主な理由は、衛兵たちが俺の戦いぶりを記者に話したことにある。
それも、色々な脚色つきだ。

たぶん、極限状態を救われて、記憶が歪んだのだろう。
『魔物の群れを一撃で屠った』とか『首謀者を突き止め、最速で倒した』とか、嘘とまでは言いきれないような情報が真実の上に乗っかり、今やすっかり英雄扱い。

しかも、リーナやフェデリカ、オレステに助けられた部分も多々あるにもかかわらず、なぜか俺だけだ。

正直、いいことはなかった。
シモーニがいなくなったことで、妨害されずにゆっくり腰を据えて魔術研究などに没頭できるかと思っていたが、今のところそれは叶っていない。

だから今もこうして早朝に、リーナとお忍び出勤をしているのだ。

「まぁ先生。前向きに考えるのが必要な場合もありますよ。注目されること自体は、悪いものでもありません。
例の『悪魔族』連中に関する調査も、アデル先生の影響から、国の許可が下りるのは時間の問題。そのうえ、『魔術学』をよりいっそう取り入れていく流れも形成されています」

「それはたしかにそうだけど……。リーナの仕事がいきなり増えすぎてないかい? 負担になっていないといいのだけど」
「ふふ、そうですね、たしかに少し疲れています」

彼女はそう言うと、おもむろに新聞を膝上に置く。
なにをし始めるかと思えば、こてんと首を俺の左肩に預けてきた。

小さい頭から、じわじわと温かみが伝わってきて、身体が硬直する。
そこへ、馬車の窓から風が吹き込んできて、それがトドメだった。

数本の髪の毛が俺の鼻の前に流れてきて、甘い香りがふわりと鼻先を漂い、ばくと心臓が跳ねる。

「お、おい、リーナ」

俺はこう呼びかけるが、彼女は反応しない。
代わりに、すー、すー、と寝息が聞こえてくる。

いくら疲れていても、ここまで早く寝落ちすることはない。
さすがにまごうことなき、たぬき寝入りだ。

「……えっと、離れてもいいか?」
「よくありませんよ。今こうしてることで、まさに回復してるんですから。どうか、もう少し。先生も寝たらどうですか? 今日もまた忙しくなります。朝は休んでいるほうがいいですよ」

……この状況で休めるような肝っ玉は持ち合わせていなかった。

だが、彼女のお願いを無碍にするわけにもいかない。

学校までの時間は、せいぜい半刻程度だ。それももう半分程度が過ぎている。
もうこうなったら、耐えるしかないかと俺も目を瞑る。

眠れるわけもないまま、時間が過ぎていく。

とても長く感じた。
でも一方で、もう少し続いてほしいような気もする。

そんな通勤時間だった。
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

糞爺
2024.05.04 糞爺
ネタバレ含む
2024.05.04 たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】

直しました〜、ありがとうございます

解除

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!