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三章 恋人のフリ?
46話 Gショックはお気に入り!
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背後には、着付けを手伝ってくれた店員さんが控えている。
「お似合いですよ、とても」
これこそお世辞じゃなかろうか。
なんて思っていたら、
「じゃあ彼氏さんにご覧いただきますね」
試着室のレースが開かれる。そこに、鴨志田が立っていた。
黙したまま、全身を何往復も見つめてくるので、必死に意識を店内の壁へ逸らす。
「……な、なんですか」
「いいんじゃないか? 眠り姫が見違えたな、と思って」
「ほんま、ろくなこと言わん!!」
「あ、馬鹿、殴るな。せっかくのドレスがもう縒れるぞ」
ふふっ、と店員が微笑ましげに希美たちを眺める。
本物のカップルだと、信じてやまないといった様子だ。
「どうされますか? こちらでしたら、彼女様のイメージにも合うかと」
面倒だからだろう、鴨志田も否定はしなかった。
まぁ、あえて言うほどのことでもないのは確かだ。耐性がないので、関係なく照れてはしまうが。
「そうですね、俺もよく似合ってると思います。後輩はどうだ?」
「えっと……」
基本的に服には無頓着な人間だ。
個人的な好みは赤系色、というぐらいしか答えられない。判断基準はといえば、なにをおいても価格だ。
希美は、裾の端にくくられた値札を見てみる。
全ての眠気が一気に消え飛んだ。二桁万円はくだらない。
「で、どうだ?」
「あの、これは素敵ですけど素敵すぎるというか……身の丈的にどうかなぁみたいな」
波風の立たない断り文句を探していたら、
「すいません。じゃあ、これ買います。あぁ、そのまま着ていきます」
鴨志田の財布から、カードが出てくるのが先だった。
居酒屋の割り勘とはわけが違う。払いますよ、などとは口が裂けても言えない。
「あんまり気にすんなよ。俺の頼みごとの一環だと思ってくれ」
「……そういう範疇です? これ」
「リクルートスーツなんて着てたら、会食の端にも預けてもらえないっつの。まぁ気に入らないなら、終わったら返してくれればいいさ」
鴨志田は、余裕綽々といった様子だった。
御曹司の金銭感覚は、浮世離れしているようだ。
さらには、靴やバッグといった小物類も見繕ってもらいセットで購入する。
「時計も買えばよかったのに。Gショックだけ浮いてないか?」
「えっと、そこまではお願いできません。これ、お気に入りですしドレスで見えませんし!」
「お似合いですよ、とても」
これこそお世辞じゃなかろうか。
なんて思っていたら、
「じゃあ彼氏さんにご覧いただきますね」
試着室のレースが開かれる。そこに、鴨志田が立っていた。
黙したまま、全身を何往復も見つめてくるので、必死に意識を店内の壁へ逸らす。
「……な、なんですか」
「いいんじゃないか? 眠り姫が見違えたな、と思って」
「ほんま、ろくなこと言わん!!」
「あ、馬鹿、殴るな。せっかくのドレスがもう縒れるぞ」
ふふっ、と店員が微笑ましげに希美たちを眺める。
本物のカップルだと、信じてやまないといった様子だ。
「どうされますか? こちらでしたら、彼女様のイメージにも合うかと」
面倒だからだろう、鴨志田も否定はしなかった。
まぁ、あえて言うほどのことでもないのは確かだ。耐性がないので、関係なく照れてはしまうが。
「そうですね、俺もよく似合ってると思います。後輩はどうだ?」
「えっと……」
基本的に服には無頓着な人間だ。
個人的な好みは赤系色、というぐらいしか答えられない。判断基準はといえば、なにをおいても価格だ。
希美は、裾の端にくくられた値札を見てみる。
全ての眠気が一気に消え飛んだ。二桁万円はくだらない。
「で、どうだ?」
「あの、これは素敵ですけど素敵すぎるというか……身の丈的にどうかなぁみたいな」
波風の立たない断り文句を探していたら、
「すいません。じゃあ、これ買います。あぁ、そのまま着ていきます」
鴨志田の財布から、カードが出てくるのが先だった。
居酒屋の割り勘とはわけが違う。払いますよ、などとは口が裂けても言えない。
「あんまり気にすんなよ。俺の頼みごとの一環だと思ってくれ」
「……そういう範疇です? これ」
「リクルートスーツなんて着てたら、会食の端にも預けてもらえないっつの。まぁ気に入らないなら、終わったら返してくれればいいさ」
鴨志田は、余裕綽々といった様子だった。
御曹司の金銭感覚は、浮世離れしているようだ。
さらには、靴やバッグといった小物類も見繕ってもらいセットで購入する。
「時計も買えばよかったのに。Gショックだけ浮いてないか?」
「えっと、そこまではお願いできません。これ、お気に入りですしドレスで見えませんし!」
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