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2章
27話 意外な才能発揮します?
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魔物の森で鍛えた魔法の力試し! もいいけれど、今はそれより優先したいことがあった。
私は今から、このイノタンを卸しに行かなければならないのだ。買い取ってくれるお肉屋さんが閉まる前に店にいかないと!
無視を決めることにして、私を運んでくれているフェンに話しかける。
「フェン、ジャンプして飛び越えられる?」
「可能だと思うぞ。あの丸薬があれば、造作もない」
ジュリアの従者たちに道は阻まれているが、さしもの彼らも空中までは警戒できなかろう。
フェンの望み通り、私は彼に本日二度目の魔力玉を含ませる。がりがりとかじった彼は、またしても大きくなる。ひょいっと人垣を超えようとするが、
「あっ、イノタンが!」
「……む」
誤算があった。
フェンの背は安定感があったため、単に背中に乗せていたのだが……。
身体が大きく変化したことにより、まるでローラーみたいに勢いがついてしまい、イノタンの肉だけが地面へと落下してしまったのだ。
私が、落ちていくそれを振り返るのを見るや、彼らはそれを囲い込む。これが私を引き留めるためのキーアイテムだとみたらしい。
実際、あれを放置しては肉屋へ行く意味もなくなってしまう。
うーん、仕方がないか。私はフェンが着地をしたところで、彼らの方を振り返って貰う。
「…………私の大事なドロップアイテムを返しなさい」
「あなたこそ、あたしのエリゼオを返しなさい! いったい、あんたみたいな卑しい人間がどうやって王子を落としたのか、怪しいところね。惚れ薬でも盛ったんじゃなくって?」
「残念ですけど、そんなものに手を出せるような身分ではないので」
「くっ、ああ言えばこう言う!!」
その言葉、そっくりそのまま返してやりたいくらいよ、ジュリア。
「ぼさっとしてないで、やっておしまいなさい、あなたたち! 大丈夫よ。エリゼオ王子は助けに来たりしない。こんな小娘一人相手なら、前のような不覚はとらないわ、あっさりと倒せるわ。おーほほほほ!!」
街の一角での騒動だ。あたりはざわざわと騒がしくなるが、それをジュリアの手のものが押さえ込む。
言うに事欠いて、「この女がエリゼオ王子に妙な色仕掛けをする悪女だ」なんて吹き込んでいる。
「あいつが、噂の……」
「聞いたぜ、なんでもエリゼオ王子がお熱なんだとか」
「ありえないわよね、あんな女らしさのかけらもなさそうな女。庶民の私の方がまだましな格好してるくらいだし」
完璧に悪者にされんとしていた。
うーん、違うと叫んでも無駄な奴ね、これ。だって家のランクが違いすぎるし、知名度だって明らかに私の方が劣る、ジュリア・エルミーニ。
エルミーニ家は、代々王族のバトラーとして仕え、また各地の有力な領主たちにその血が繋がる超一流貴族だ。
歴史と威厳が、デムーロ男爵家とは大違いである。
「この大悪人を成敗するのよ、やりなさい」
ジュリアの非情な命令により、彼女の従者たちは武器を向けてくる。
やるしかなさそうだが、こちらから攻撃を仕掛けて、あとあと問題になっては厄介だ。
私は両手を結んで、魔法を発動する。呼び出した水で作り出したのは、四方を囲う壁だ。
公爵家の私兵を相手どるわけである。中には魔法を使える者もいるだろう。
手練れ相手にどれくらい通用するのか、正直分からなかったけれど、
「な、なな、なんだ、この壁は!!」
「とても壊せそうにありません! 槍の穂先が跳ね返されます!!!」
あら、意外とどころかかなり優秀な強度になっているらしい。
水壁に視界を阻まれて、自分でもよく見えないけれど、とにかく敵の攻撃が中まで入ってくることはない。
炎の玉も、風のナイフも、弾いてくれているようだ。
魔法というのは使えば使うほど、上達していくもののようだ。
それは、直接戦闘していなくてもいいらしい。
最近では、屋敷の中にいるときにも、水魔法を使って料理をしてみたり、汚れた服を洗濯してみたりとしていたから、それが活きていたようだ。
私は今から、このイノタンを卸しに行かなければならないのだ。買い取ってくれるお肉屋さんが閉まる前に店にいかないと!
無視を決めることにして、私を運んでくれているフェンに話しかける。
「フェン、ジャンプして飛び越えられる?」
「可能だと思うぞ。あの丸薬があれば、造作もない」
ジュリアの従者たちに道は阻まれているが、さしもの彼らも空中までは警戒できなかろう。
フェンの望み通り、私は彼に本日二度目の魔力玉を含ませる。がりがりとかじった彼は、またしても大きくなる。ひょいっと人垣を超えようとするが、
「あっ、イノタンが!」
「……む」
誤算があった。
フェンの背は安定感があったため、単に背中に乗せていたのだが……。
身体が大きく変化したことにより、まるでローラーみたいに勢いがついてしまい、イノタンの肉だけが地面へと落下してしまったのだ。
私が、落ちていくそれを振り返るのを見るや、彼らはそれを囲い込む。これが私を引き留めるためのキーアイテムだとみたらしい。
実際、あれを放置しては肉屋へ行く意味もなくなってしまう。
うーん、仕方がないか。私はフェンが着地をしたところで、彼らの方を振り返って貰う。
「…………私の大事なドロップアイテムを返しなさい」
「あなたこそ、あたしのエリゼオを返しなさい! いったい、あんたみたいな卑しい人間がどうやって王子を落としたのか、怪しいところね。惚れ薬でも盛ったんじゃなくって?」
「残念ですけど、そんなものに手を出せるような身分ではないので」
「くっ、ああ言えばこう言う!!」
その言葉、そっくりそのまま返してやりたいくらいよ、ジュリア。
「ぼさっとしてないで、やっておしまいなさい、あなたたち! 大丈夫よ。エリゼオ王子は助けに来たりしない。こんな小娘一人相手なら、前のような不覚はとらないわ、あっさりと倒せるわ。おーほほほほ!!」
街の一角での騒動だ。あたりはざわざわと騒がしくなるが、それをジュリアの手のものが押さえ込む。
言うに事欠いて、「この女がエリゼオ王子に妙な色仕掛けをする悪女だ」なんて吹き込んでいる。
「あいつが、噂の……」
「聞いたぜ、なんでもエリゼオ王子がお熱なんだとか」
「ありえないわよね、あんな女らしさのかけらもなさそうな女。庶民の私の方がまだましな格好してるくらいだし」
完璧に悪者にされんとしていた。
うーん、違うと叫んでも無駄な奴ね、これ。だって家のランクが違いすぎるし、知名度だって明らかに私の方が劣る、ジュリア・エルミーニ。
エルミーニ家は、代々王族のバトラーとして仕え、また各地の有力な領主たちにその血が繋がる超一流貴族だ。
歴史と威厳が、デムーロ男爵家とは大違いである。
「この大悪人を成敗するのよ、やりなさい」
ジュリアの非情な命令により、彼女の従者たちは武器を向けてくる。
やるしかなさそうだが、こちらから攻撃を仕掛けて、あとあと問題になっては厄介だ。
私は両手を結んで、魔法を発動する。呼び出した水で作り出したのは、四方を囲う壁だ。
公爵家の私兵を相手どるわけである。中には魔法を使える者もいるだろう。
手練れ相手にどれくらい通用するのか、正直分からなかったけれど、
「な、なな、なんだ、この壁は!!」
「とても壊せそうにありません! 槍の穂先が跳ね返されます!!!」
あら、意外とどころかかなり優秀な強度になっているらしい。
水壁に視界を阻まれて、自分でもよく見えないけれど、とにかく敵の攻撃が中まで入ってくることはない。
炎の玉も、風のナイフも、弾いてくれているようだ。
魔法というのは使えば使うほど、上達していくもののようだ。
それは、直接戦闘していなくてもいいらしい。
最近では、屋敷の中にいるときにも、水魔法を使って料理をしてみたり、汚れた服を洗濯してみたりとしていたから、それが活きていたようだ。
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