【完結保証】幼なじみに恋する僕のもとに現れたサキュバスが、死の宣告とともに、僕に色仕掛けをしてくるんだが!?

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】

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一章 おいおい、サキュバスが襲来したんだが!?

第11話 おわりではじまり。【一章ラストです】

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 まさか同級生に脅迫されるなんて、考えもしていなかった。
初めこそただ怖かったのだが、時間が経過するごとにそれは、苛立ちへと変化してきていた。

「なんなんだよ、僕だって別に好きでくっついてたわけじゃないのに」

ポテチを一枚、

「あれ立派な脅迫罪だよね、もう。訴えようかな、真剣に訴えを検討しようかな。絶対家庭裁判所じゃ終わらせないぞ、うん」

二、三、四枚。

帰宅してすぐ、僕の手はポテトチップスの袋を引っ掴んでいた。許さない、許してなるものか、執念を込めて噛む。ソファにカケラが少し散った。

「絶対に訴えてやる!」

うん、なんだか某バラエティ番組みたいになってしまった。

「そう荒れないでくださいよ、ご主人様。私のあまりの魅力を前にしたら、ただの高校生なんてチョロQですから、こうやって簡単に転がせてしまうんですよ」

妙に古い言い回しをしつつ、横にちょこんと座った結愛はポテチに手を伸ばす。得意そうに、ふふんと鼻を鳴らした。

「じゃあ逆にもうちょっと好意のもたれ具合コントロールできないの。僕の身の危険が大きすぎる!」
「勝手に発されるものなんで仕方ないんです。まぁその方がいいってことなら少しは努力しますよ」

掴んだ束をバリバリと大口で砕きながら、籠もった声で結愛は言う。

「妙に欲を煽るなよな。下着の替え持ち歩いてる件もそうだし」

僕は、苦言をさらにいくつか続けた。勝手に課金をした件について、魔法を使った件について。そもそも脅迫だって、結愛が元凶になって、起こった事件だ。
少なくとも僕が告白に成功するまでは、彼女も一緒に学校に通うことになるのだから、反省会はやっておかねばなるまい。

「でも、今日の私は頑張りもしたと思いませんか。最初なんですし、まだ見習い、こんなもんです!」

結愛は不満そうに、唇を尖らせる。
物理的にも、だ。ポテトを二枚反り合わせて、アヒル口を作っている。

「それ以上言うなら、反対側から食べてもらいますよ」
「えっいや、でも──」
「はい、言いました。ほらどうぞ」

ずいと顔が寄せられる。すぐ横にいたから、それだけで意図せず唇の先がちょんと当たった。その瞬間、結愛は潤んだ唇の奥に全てをぱくりとしまって、

「キス、いただきました♡ 次は本物もらいますよ? あわよくばその先だって」

なんてあざといんだ、この悪魔は。あまりにも悪魔的すぎる。
真面目に聞けよ、と怒らなければならないところなのだが、生理的な反応が先立っていた。顔が赤くなっていくのを感じる。

「とにかく明日からはもう少し上手く立ち回りますよ。それでいいですか──って、顔赤っ! ウブすぎますよ、ご主人様」
「思った以上に耐性ないんだよ? 男子高校生って」
「それにしたって、です。そんなんでどうやって告白するつもりですか、あと十三日切ってるんですよ」
「なんかもうダメな気がしてきた……」

自分を冷静に鑑みて、漏れた言葉だった。

「全くどれだけ弱気なんですか。いいんですか、死んでも。まぁ私は? あとそれだけとしても、幸せですよ。二週間でもこうしていられるなら」

結愛が僕に寄りかかる。精気吸っちゃいますよ、と唾のしずく煌めく長い舌をちらりのぞかせる。

「人ごとだと思って……。ほんと悪魔だな」
「えぇ本物の悪魔ですから」

唇を舐めるようにその奥へ舌をそっとしまって、うふふ、と結愛は笑みを浮かべた。
怒る気力は失せてしまっていた。だがこれ以上ここにいて、翻弄され続けたくもなかった。そのための足掻き、すっとその場を離れる。

「……結愛の部屋着探してくるよ。いつまでも制服じゃあきついだろ」
「えぇ、まぁ」

後付けで、もっともらしい理由を加えた。万に一つも、はじめに着てきた露出度の高い衣装で家をうろつかれたくないというのもある。
リビングを出て、階段を上って自室に入る。よこしまな気持ちは捨てよう、怒りに取って代ったやり場のない気持ちもいらない、無心になろう。そう念じながらクローゼットを掘り返していたら、玄関でチャイムが鳴った。

この夕下りに訪ねてくるのは、大抵なにかの勧誘と相場は決まっている。過去には、うっかり出てしまって、おばさまトリオに小一時間捕まったこともあった。スルーすることにして少し、階段をドタドタ駆け上がってくる音が壁の奥から響く。
結愛が部屋に飛び込んできた。

「ご主人様、大変です! 澄鈴さんが訪ねてきましたよ!」

え。

「すいません、私、つい出ちゃったんです。澄鈴さんとは気づかず」

は。

「私としたことがうっかりでした。ちょっと出来るお嫁さんを演じたくなってしまって、別所結愛です、って」

結愛はぽっと両の頬に手を当てる。
はぁ!? エマージェンシー、エマージェンシー。緊急サイレンが僕の頭にこだまし始める。

「なにやってんだ! ってかどうしよう」
「言ってても仕方ありません! とにかく行きますよ、ご主人様」

結愛が僕の背中に周り、強引に押す。

「でも行ってどうするんだよ!」
「それは、たとえば親戚がいるんだ、とか嘘をつくしか」
「澄鈴の家とは家族ぐるみの付き合いなんだ。親戚に同い年がいないことくらい知られてるって!」

ごねているうち、玄関前に着いた。

「とにかく出るんです、私隠れてますから、適当にやってください」

そんな無茶な。そもそも自分のポカのくせに!

「なんかいい言い訳ないかな。いや、あるはずだ! 待て、あと少し、あと少し考えれば仏かイエスかのお示しが僕に降りてきて」
「もう、出てきませんってば! そんなご主人様には、こうです!」

結愛は、僕を後ろから羽交い締めするようにして抱きつく。

「なんで、こうなるのっ!!」

押し付けられた、たわわな感触に反応してしまって、僕は下身体を前へ反らした。

「落ち着いてくださいってことです。抱きしめられると、人って落ち着くんです。少ししたら離れますよ。とにかく親戚だってあたかも本当のようにシラを切り通してしまえば、それで」

そこで、結愛は唐突に言葉を打ち切った。
なんと、扉が開けられていた。
鍵かけてなかったみたい★。脅迫への怒りが先行して、ついかけ忘れてしまっていたらしい。僕のバカ、ボケ、あんぽんたん。

「……光男、どういうことなん?」

澄鈴の姿が、ひさしについた白色電球に当てられる。後ろには、暗く重たそうに見える影が伸びていた。
彼女が僕を睨む。それが明白に怒気を孕んでいるのは、肌感覚だけでも分かった。産毛が一斉に立ち上がる。

「や、やぁ、どうしたのさ。こんな時間に」
「ウチは光男が保健室から帰ってこーへんかったから、体調を心配して来たんやけど」
「あは、はは、そっか心配かけたね。でももう大丈夫だよ」
「そらぁね、女の子とイチャイチャするくらいなんやから身体が大丈夫なんは分かるで」
「いや、その、彼女は親戚なんだ! そう、遠縁の!」
「へぇ、甘利さんとねぇ。親戚ってそんなに密着するものやないと思うけど、そんなくっつくのカップルくらいやないかなぁ」
「いや、これは、えっと事情があるんだ! いわゆるアメリカナイズなコミュニケーションというか? こいつがビートルズ好きなのもそういう所以で」

最後まで耳に入れられることなくして、戸が閉められる。
壊れるのではないか、という勢いだった。
風が起こって、既に事態のあまり抵抗力を失っていた僕は、それに圧されて後ろへ倒れる。

オーノー。

呟きつつ、結愛の豊かな胸に後頭部が吸い込まれていった。そのぽふん、という間抜けな音は、さながら恋のエンディングテーマ。

「あらら、大変なことになりましたね」
「終わった、終わった、終わった、終わった、あぁ終わった」

ジ・エンド。
僕の恋、言い換えるならば命さえ、道も志も半ばにしてぽっきり折られることが決まったと言っていい。
けれど僕の絶望は横手に置いて、結愛は僕の頭をかき抱いて言う。

「ご主人様、大丈夫ですよ♡ まだまだこれからです」

なにがだよ、と思った。

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