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二章 幼なじみ攻略作戦スタート!
第13話 サキュバスとの同棲生活
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二
カフェから家に戻り、晩ご飯も済ませた夜の九時。
「ご主人様、洗濯物溜め込んだりしてませんか」
そう部屋の外、結愛から声が掛かって、僕はびくりとした。
結愛の言う『告白大作戦』について考えていた最中だった。それについては、やましい事はない。
問題は、洗濯物の方だ。
見渡す限りはなかった。ただ、ベッドと壁の間のデッドゾーンにそれが大量に眠っていることを、僕はこの間発見してしまったばかりだった。この場所がとんでもブラックボックスで、そのさらに下からはいつ買ったのか定かでない花火セットがいくつも出てきた時は思わず靴下で蓋をした。
「ないよ、あるわけないじゃないか」
だが、正直に申告して、「汚い」などと蔑まれたくなかった。
それに別段臭うわけでもない。ならば、とりあえずはいいのだ。履く靴下がなくなったらその時考えればいい。
「はーい、じゃあもう洗濯機回しちゃいますね」
足音が遠くなっていくのを聞いて、僕はほっと息をつく。
「ほんとよく働くなぁ」
靴下たちをさらに奥へと押しやりながら、正直な感想をひとりごちた。
洗濯だけじゃない。掃除、料理、ゴミ捨てに買い物まで──。結愛が来てから、というもの、泊めてもらっている分だと彼女はこれら家事をほとんど一手に引き受けてくれていた。
と言っても、料理だけは僕と変わらぬレベル。カップ麺にせいぜいネギが乗るようになっただけなのだけれど。
なにもしてないのに文句かよ、という声が聞こえてきそうだが、それは誤解だ。なにせ命を差し出している。魔法力アップのための課金もだ。あれから、もう三回、樋口一葉さんを失った。今のところ、大きなメリットは得ていない。
それに、仕事が全くないわけじゃない。
考えが煮詰まっていたこともあった。気分転換も兼ねて、僕は一階のリビングに降りる。相応に散らかっていたテーブル回りの小物たちを、整理し始めた。
初めはこれも結愛がやってくれていたのだが、「勝手に場所変えないでよ」「僕のアイスの蓋コレクションが!」とか一々注文をつけていたら、彼女に諦められた。
「ん、なんだろ」
テーブルの下、椅子の脚がなにか紐のようなものを踏んでいた。引っ張りあげてみて、びっくり。
「今度は上かよ! なんでこんなところに撒いてんの!?」
ブラジャーだった。
それも椅子の下を覗いてみると、三つもあるではないか。
そもそも結愛はどこから持ってきているのだろう。考えたくはなかったが、バラや蝶が施されたババ臭いデザインから、出所を読むのは簡単だった。
うちのオカンのものだ、これ。
見ているのもキツかった。とはいえ、息子として、ここに放置するわけにもいくまい。せめて元の場所へ戻さなければ。
「ギリギリセーフ、色々セーフ!」アウトよりのセーフ。
極力、布部分に触れないよう僕は指先で留金の部分だけを挟み、階段を上る。
母の部屋を結愛の部屋として当てがっていた。そこへ、そろりと踏み入ろうとして
「ご主人様、お風呂沸きましたよ~」
階下から報告があった。
今上ってこられたら、間違いなくあらぬ勘違いをされる。そして、部屋に侵入なんて変態さんですね? リコーダー舐めさせてあげましょうか? などと弄ばれること必至だ。
焦った僕は、ブラジャーを一、二と結愛の部屋へ放り投げる。急いで自室へ戻るのだが、なんとバラ柄のブラが、ぺろんと一枚指に掛かったままだった。
冷静さを欠いて無駄に室内を歩き回っていたら、気配が近づいてくる。
こうなったら、もうままよ、というやつ。僕は一か八かの『最終手段』を取ることにした。
「ご主人様~、お風呂が沸いてます」
「今行くよ! 本当すぐ行く!」
僕は扉を開けた結愛へ、精一杯にっこりと笑う。
「ご主人様、なんというか……ふくよかになりました?」
「え、気のせいじゃないかな! もしそうだとしても、お風呂入ったら戻ると思う」
平気なふりをして早足。横を抜けんとしたのだが、その時、シャツの隙間から、ぽろりと。バラ色が落ちた。
フックを留め損ねていたらしい。童貞には、後ろ手に留める勝手がわからなかった。
「えっと、待って。結愛が思い描いてるのは多分、強烈に猛烈にありえない勘違いだと思うんだ」
「へぇご主人様にそういうご趣味がおありだったなんて私知りませんでした。でも私、そんなご主人様でも受け入れますよ? 好きな人がそうなら、私はそれくらいのことはどうにでも」
「断じて、違うっっ!!!! なに感動的なカミングアウトのシーンにしようとしてるんだ!!」
僕の魂の絶叫は、もしかすると隣の高杉家まで届いてしまったかもしれない。
カフェから家に戻り、晩ご飯も済ませた夜の九時。
「ご主人様、洗濯物溜め込んだりしてませんか」
そう部屋の外、結愛から声が掛かって、僕はびくりとした。
結愛の言う『告白大作戦』について考えていた最中だった。それについては、やましい事はない。
問題は、洗濯物の方だ。
見渡す限りはなかった。ただ、ベッドと壁の間のデッドゾーンにそれが大量に眠っていることを、僕はこの間発見してしまったばかりだった。この場所がとんでもブラックボックスで、そのさらに下からはいつ買ったのか定かでない花火セットがいくつも出てきた時は思わず靴下で蓋をした。
「ないよ、あるわけないじゃないか」
だが、正直に申告して、「汚い」などと蔑まれたくなかった。
それに別段臭うわけでもない。ならば、とりあえずはいいのだ。履く靴下がなくなったらその時考えればいい。
「はーい、じゃあもう洗濯機回しちゃいますね」
足音が遠くなっていくのを聞いて、僕はほっと息をつく。
「ほんとよく働くなぁ」
靴下たちをさらに奥へと押しやりながら、正直な感想をひとりごちた。
洗濯だけじゃない。掃除、料理、ゴミ捨てに買い物まで──。結愛が来てから、というもの、泊めてもらっている分だと彼女はこれら家事をほとんど一手に引き受けてくれていた。
と言っても、料理だけは僕と変わらぬレベル。カップ麺にせいぜいネギが乗るようになっただけなのだけれど。
なにもしてないのに文句かよ、という声が聞こえてきそうだが、それは誤解だ。なにせ命を差し出している。魔法力アップのための課金もだ。あれから、もう三回、樋口一葉さんを失った。今のところ、大きなメリットは得ていない。
それに、仕事が全くないわけじゃない。
考えが煮詰まっていたこともあった。気分転換も兼ねて、僕は一階のリビングに降りる。相応に散らかっていたテーブル回りの小物たちを、整理し始めた。
初めはこれも結愛がやってくれていたのだが、「勝手に場所変えないでよ」「僕のアイスの蓋コレクションが!」とか一々注文をつけていたら、彼女に諦められた。
「ん、なんだろ」
テーブルの下、椅子の脚がなにか紐のようなものを踏んでいた。引っ張りあげてみて、びっくり。
「今度は上かよ! なんでこんなところに撒いてんの!?」
ブラジャーだった。
それも椅子の下を覗いてみると、三つもあるではないか。
そもそも結愛はどこから持ってきているのだろう。考えたくはなかったが、バラや蝶が施されたババ臭いデザインから、出所を読むのは簡単だった。
うちのオカンのものだ、これ。
見ているのもキツかった。とはいえ、息子として、ここに放置するわけにもいくまい。せめて元の場所へ戻さなければ。
「ギリギリセーフ、色々セーフ!」アウトよりのセーフ。
極力、布部分に触れないよう僕は指先で留金の部分だけを挟み、階段を上る。
母の部屋を結愛の部屋として当てがっていた。そこへ、そろりと踏み入ろうとして
「ご主人様、お風呂沸きましたよ~」
階下から報告があった。
今上ってこられたら、間違いなくあらぬ勘違いをされる。そして、部屋に侵入なんて変態さんですね? リコーダー舐めさせてあげましょうか? などと弄ばれること必至だ。
焦った僕は、ブラジャーを一、二と結愛の部屋へ放り投げる。急いで自室へ戻るのだが、なんとバラ柄のブラが、ぺろんと一枚指に掛かったままだった。
冷静さを欠いて無駄に室内を歩き回っていたら、気配が近づいてくる。
こうなったら、もうままよ、というやつ。僕は一か八かの『最終手段』を取ることにした。
「ご主人様~、お風呂が沸いてます」
「今行くよ! 本当すぐ行く!」
僕は扉を開けた結愛へ、精一杯にっこりと笑う。
「ご主人様、なんというか……ふくよかになりました?」
「え、気のせいじゃないかな! もしそうだとしても、お風呂入ったら戻ると思う」
平気なふりをして早足。横を抜けんとしたのだが、その時、シャツの隙間から、ぽろりと。バラ色が落ちた。
フックを留め損ねていたらしい。童貞には、後ろ手に留める勝手がわからなかった。
「えっと、待って。結愛が思い描いてるのは多分、強烈に猛烈にありえない勘違いだと思うんだ」
「へぇご主人様にそういうご趣味がおありだったなんて私知りませんでした。でも私、そんなご主人様でも受け入れますよ? 好きな人がそうなら、私はそれくらいのことはどうにでも」
「断じて、違うっっ!!!! なに感動的なカミングアウトのシーンにしようとしてるんだ!!」
僕の魂の絶叫は、もしかすると隣の高杉家まで届いてしまったかもしれない。
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