55 / 59
三章
55話 共同戦線
しおりを挟む「どうするんですか、こんな敵陣に乗り込んできて。もしかして、他に兵士を連れてきてくれたんですか」
「はは。ごめん、君が殺されかけてるっていうから、身一つで来ちゃったよ」
つまり、援軍は望めないらしい。
さっきは不意打ちだったから、隊が乱れてリナルドはここまでやってこられたのだろう。今はしっかりと周りを固められてしまっているから、そうはいかない。
「お喋りはそこまでだ。知られてしまったなら、二人まとめてここで葬る! 炎属性の隊員は攻撃開始。精霊師団は、後方で回復の用意をしろ!」
その矢先、フラヴィオの命により、これまで木陰に隠れていた彼の手先が一斉に出てくる。全方向からベッティーナ、リナルドは狙われるが、
「君たち!!」
より固まった精霊たちの作り出す光の防御壁により、寸前で防がれていた。
炎の矢が襲いくるのだけど、その魔力の勢いが殺されて、真下にぼてぼてと落ちていく。
「どうだい、やれるもんだろ?」
「……でもこれじゃあ、ここからどうしようもないのでは」
「相変わらず手厳しいな。うん、その通り。相手には赤と緑の魔法使いも、回復士もいる。スピードも、パワーも人数も部が悪すぎるね。そこで君の力を借りたいんだけど、どうかな」
「私はもう魔力がほとんどありません」
「それ、なにかあるんだろ? 使ってみたら?」
リナルドがそう言って指差すのは、自分の耳元だ。彼のつけているイヤリングが、軽く揺すられる。
「そんなことまで知ってるのですか」
「いいや。でも君はそれを触る癖があるからね。こんな時にも触るんだから、なにかあるんだろ?」
まさかそんなことまで知られているとは思わなかった。
鋭い洞察力というか、ストーカー力というべきか。ベッティーナは驚くと同時に少し寒気を覚えて、声が低くなる。
「……この悪魔は危険なんです。私の魔力では制御しきれないかもしれません。失敗したら、あなたも私も死にます」
「なるほど、そういう理由で躊躇してたのか。なら、もう心配ないね」
「……意味がわかりませんが」
「僕が手伝えばいい。常にヒールをかけることで、君の魔力が尽きないように補填する。これなら、抑え込めるんじゃないかな」
その提案は、考えもしないことだった。だがたしかに、可能性はある。
普通、真逆の特性を持つ白と黒の魔力は打ち消しあってしまう。
だがヒール魔法がベッティーナの身体へかけられれば、回復したベッティーナは黒の魔力を生み出せる。
「……要するに、魔力を変換できる?」
「うん、そういうこと。だから力を合わせようか、ベティ」
協力を求められ、ベッティーナは再考する。
うまくいく保証がされたわけじゃない。結果、リナルドを巻き込むことになるかもしれない。
冷静に考えれば、ほんの少しだけ希望が見えたにすぎない。
けれど、からくりは分からないのに、理屈もないのに、ベッティーナの中には光が一つ一つ明明と灯っていた。
それはかつてベッティーナを照らしていた星の光、ジュリアに重なる……ような気もする。
自分でもおかしくなったのでは、と思うのだが、なぜかしてしまうのだ。
ついさっき暗闇に戻れたことに安堵していたばかりだったが、あれは強がりだったと自覚する。
さんざんつけ回された結果、ベッティーナはいつの間にか彼の放つ光に慣れていたようだ。今この状況に置いてはもう、求めざるをえなくなっていた。
ベッティーナは、こくりと一つ頷く。
「うん、じゃあ行こうか。そういえば、ここまではっきり協力するのは初めてだね」
「……いいから、やりますよ。合図したら、この防御壁を解いてください」
三拍子数え、リナルドとタイミングを合わせる。
精霊による光のベールが解けたと同時、ベッティーナは耳飾りに魔力を加えた。
あれだけ躊躇していたのが嘘のように、すんなりと触れて魔力を加えていた。
瞬間ぞわり、身の毛がよだつ。
『引き裂くな、許さない、返せ、戻せ……』
そうして出てきた異形の悪魔こそ、ジュリアだ。
0
あなたにおすすめの小説
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています
黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。
彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。
ようやく手に入れた穏やかな日々。
しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。
彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。
そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。
「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。
「いつものことだから、君のせいじゃないよ」
これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。
二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。
心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる