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二章
第19話 元王妃、隣国王子側近の青年から魔法を習う。
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デアーグはさらさらそうなストレートヘアをかきあげて、ため息をつく。
「やっぱりか……やっぱりそう見えないよなぁ、僕」
どうやらコンプレックスだったらしい。
「えっと、若いってことでいいんじゃないでしょうか」
私は苦し紛れに、ぎりぎりのフォローを入れる。
普通、こんなものでは慰めにもならないだろうと思っていたら……
「あれ、たしかに。これからまだ伸びるかもだしな」
意外と、そうでもなかった。
基本的に、ポジティブな人らしい。
主人が変わっているなら、その従者の方も同じらしい。
「それで、今日はなんのために書庫に?」
私は彼が一人でなにやら納得しようとしているうちに、話題をするっと差し替えてしまう。
「あぁ、アスタさんと話してみたくてさぁ」
「そのために来たのですか」
「そうそう。従者としては気になるんだよなぁ。主人が肩入れしている女性ってのは。しかも、恐ろしい噂ばっかのうちの主人にも怖気づかない」
「いろいろ誤解があると思いますけど」
「そうかなぁ」
「そうですよ。ただのビジネスパートナーです」
「それ、うちの主人も同じこと言ってたなぁ。やっぱり気が合うんじゃ?」
ぽんぽんと、次から次へ喋る陽気な人だった。話題が途切れても、いっさいの不自然さなく次の話題を持ち出してくる。
本来は静かにするべき書庫なのだが、他に人がいなかったこともあり、ついついお喋りに興じてしまった。
気付けば、積んでいた本をほとんど読まないまま、閉館の半刻前を迎えていた。
「わー、アスタさん!! まじでごめん!!」
これには、デアーグは両手をすり合わせて、平謝りだ。
まぁその謝り方も、数年来の友人でも貴族間ならなかなかない軽さである。
そのぶん受け取るのも楽であるから、
「じゃあ、お詫びに魔法の使い方講座してください。まったく分からなくて」
ついでに軽く、こんなことを頼んでしまう。
「お? それでいいなら全然いいけど。ってか、貴族出身?」
「末裔ってぐらいだと思いますけど、適正はあります。もっとも、もうしばらく親族には会っていませんから分かりませんが」
「なるほどね。それで使い方を学んでこなかったんだ。よし、そういうことなら任せてよ」
どうやら自信があるのか、彼はとんと一つ胸を叩く。
それから立ち上がると、私に見えやすいよう少し机から離れた。
そして、お腹の下あたりに手を当てる。
「このあたりに意識を集めるようにして、他の部分の身体の力を自然と抜いていくんだ。そうすると、自然と魔力がこのあたりに集まってきて――」
ここまでは、さすがに知っているが、やったことはほとんどない。
私も立ち上がり、彼と同じようにへそのすぐ下あたりに手を当てる。それから、続きの教えを請おうと、彼のほうを見上げてみれば……
「あとはこれをすーっと持ってきて、頭で発現する形をなんとなく考えて、……はい! こんな感じ!」
丁寧なのは最初だけで、最後の方はもはや大遠投だった。
あまりにも飛躍しすぎて、まったく参考にならない。
それで、もう一回説明を求めるのだけれど、結局行われた説明は、今見ていたものとまったく変わらなかった。
どうやら、デアーグは感覚型らしい。
私はといえば、基本的には実践の上で理論立てて覚えていく派だから、まったくもって違う。
結局、その場では魔法を使うに至らないまま、閉館時間になり、私は城を後にした。
「ほんとごめん!!」
と、デアーグは再び平謝りしていた。
「やっぱりか……やっぱりそう見えないよなぁ、僕」
どうやらコンプレックスだったらしい。
「えっと、若いってことでいいんじゃないでしょうか」
私は苦し紛れに、ぎりぎりのフォローを入れる。
普通、こんなものでは慰めにもならないだろうと思っていたら……
「あれ、たしかに。これからまだ伸びるかもだしな」
意外と、そうでもなかった。
基本的に、ポジティブな人らしい。
主人が変わっているなら、その従者の方も同じらしい。
「それで、今日はなんのために書庫に?」
私は彼が一人でなにやら納得しようとしているうちに、話題をするっと差し替えてしまう。
「あぁ、アスタさんと話してみたくてさぁ」
「そのために来たのですか」
「そうそう。従者としては気になるんだよなぁ。主人が肩入れしている女性ってのは。しかも、恐ろしい噂ばっかのうちの主人にも怖気づかない」
「いろいろ誤解があると思いますけど」
「そうかなぁ」
「そうですよ。ただのビジネスパートナーです」
「それ、うちの主人も同じこと言ってたなぁ。やっぱり気が合うんじゃ?」
ぽんぽんと、次から次へ喋る陽気な人だった。話題が途切れても、いっさいの不自然さなく次の話題を持ち出してくる。
本来は静かにするべき書庫なのだが、他に人がいなかったこともあり、ついついお喋りに興じてしまった。
気付けば、積んでいた本をほとんど読まないまま、閉館の半刻前を迎えていた。
「わー、アスタさん!! まじでごめん!!」
これには、デアーグは両手をすり合わせて、平謝りだ。
まぁその謝り方も、数年来の友人でも貴族間ならなかなかない軽さである。
そのぶん受け取るのも楽であるから、
「じゃあ、お詫びに魔法の使い方講座してください。まったく分からなくて」
ついでに軽く、こんなことを頼んでしまう。
「お? それでいいなら全然いいけど。ってか、貴族出身?」
「末裔ってぐらいだと思いますけど、適正はあります。もっとも、もうしばらく親族には会っていませんから分かりませんが」
「なるほどね。それで使い方を学んでこなかったんだ。よし、そういうことなら任せてよ」
どうやら自信があるのか、彼はとんと一つ胸を叩く。
それから立ち上がると、私に見えやすいよう少し机から離れた。
そして、お腹の下あたりに手を当てる。
「このあたりに意識を集めるようにして、他の部分の身体の力を自然と抜いていくんだ。そうすると、自然と魔力がこのあたりに集まってきて――」
ここまでは、さすがに知っているが、やったことはほとんどない。
私も立ち上がり、彼と同じようにへそのすぐ下あたりに手を当てる。それから、続きの教えを請おうと、彼のほうを見上げてみれば……
「あとはこれをすーっと持ってきて、頭で発現する形をなんとなく考えて、……はい! こんな感じ!」
丁寧なのは最初だけで、最後の方はもはや大遠投だった。
あまりにも飛躍しすぎて、まったく参考にならない。
それで、もう一回説明を求めるのだけれど、結局行われた説明は、今見ていたものとまったく変わらなかった。
どうやら、デアーグは感覚型らしい。
私はといえば、基本的には実践の上で理論立てて覚えていく派だから、まったくもって違う。
結局、その場では魔法を使うに至らないまま、閉館時間になり、私は城を後にした。
「ほんとごめん!!」
と、デアーグは再び平謝りしていた。
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