1 / 10
エピローグ
エピローグ 上
しおりを挟む一面の銀世界の中に佇む大きな砦。
そこに向かう4つの人影があった。
茶色いパーカーとその上に防寒対策とカモフラージュを兼ねたフード付きの白いマントに全員が身を包んで進行している。
「砦まであと少しだ。
“ベル”、他の奴らの様子はどうだ?」
「問題なく、予定地点についたと思う。
風除けになったアレも今の所は異常が無いわ。」
先頭にいるリーダーの男は、後ろにいる男“ベル”に声をかけた。
ベルは、丸眼鏡をかけた黒髪の細身の男だ。
寒いのが苦手なのか、死んだ目をして震えながらリーダーの男に返事をする。
ベルの返事に耳を傾けた後は、辺りを見回し敵の姿や仲間が全員いることを確認すると再び砦の方向に視線を戻した。
砦に向かっているには、奴隷…いやこの場合はペットといったほうがいいだろう。
ペットとして囚われいる人間の救出。
とくに厄介なのは、子供を産ませて獣人の都合がいいように教育をされてしまうこと。
救いたい人間同士の争いはごめんだ。
リーダーも寒さを誤魔化すように後ろにいる仲間に声をかける。
「正直しんどい戦いになると思うが、外部から援軍が来る前に最速で済ませるぞ。」
リーダー格の男がそういった時に異変があった。
砦の方が何やら騒がしい。
こちらの進軍がバレたか?
「屈め。」
リーダーは素早くそして静かに仲間に指示をだす。
万全な状態で攻められたら、こちらが負ける。
状況を見て場合によっては撤退も視野にいれなければ…。
リーダーを含めて、全員が懐から双眼鏡を取り出す。
双眼鏡を見ると、全身に布を纏った人影を複数の獣人が追っていた。
こちらに気が付いた訳ではなさそうだ。
リーダーは、ホッと胸を撫でおろす。
「“アクト”、先頭は人間みたいだけどうする?」
「聞くまでもないだろ“シオ”。
助けに行くぞ。」
リーダーの男“アクト”は、後ろにいた小柄なフードの女“シオ”にそう答えるとマントの中からカギ型の武器を取り出して一足先に走り出した。
武器は機械音を鳴らし、剣のような形に変わっていく。
“体の1段〔たいの1だん〕”
変形した剣から、赤い雷が発生してアクトの身を包む。
全身が雷に包まれると、アクトの走る速度がかなり早くなった。
シオの言った通り先頭はボロボロの布を纏った女だった。
見ての通り脱走を図ったようで、予想外の脱走に獣人たちが大慌てしているところか。
人間と獣人では身体能力の差はかなり大きく、女性は簡単に距離を詰められてしまった。
「ほら、捕まえたぞメス!」
獣人の1人が女を掴もうとしたが、纏っていたボロボロの布を獣人に投げつけて抵抗する。
目隠し奇襲にもなったようで再び獣人から距離をあけた。
しかし、獣人…それも戦いのプロである兵士に通用する訳もなく布を振り払った後に簡単に追いつくと肩を掴み地面に押さえ込まれてしまう。
「脱走なんて手間かけさせやがっテ。
来い、再教育してやル!」
なんとか砦に引っ張られる前に間に合った。
アクトはそう考えながら、女を抑え込んでいる獣人の首を切り裂く。
白いマントでカモフラージュしながら進んだ成果で獣人からは突然現れるようにも見えただろう。
他の獣人は警戒するように立ち止まって各々武器を構えている。
アクトは、取り押さえていた獣人の死体を女から剥ぎ取ると自分の纏っていたマントを女に被せる。
被せたマントの下は全裸のようで手足なんて真っ赤に霜焼けしていた。
可哀想に…。
握っている剣の柄に力が入る。
剣の先端と視線を獣人に向けたアクトは口を開く。
「教育なんて随分な事を言ってくれるな。
上等だ、見せてもらおうか”獣(けもの)”共!!」
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる