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第一話
第1話 1
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ーNo SAIDー
真冬の平地を走る一つの人影があった。
クセッ毛の白髪の女性が、雪が降る夜に全裸でたった一枚の布を巻いて砦が見える方向とは逆の方に走っている所を見ると、砦から逃げているのだろう。
不自然に長く延びた前髪を靡かせて走っている。
「はぁ…はぁ…。」
寒い、足が霜焼けで痛いなんて言ってられない状態だったのだろう。
両足を真っ赤に腫らして、瞳には涙をためているようだ。
呪文のように、嫌だと何度も何度も同じ言葉を繰り返しているようだった。
寒さで体を震わせたり、後ろを振り向く事もしている様子はない。
少しでも前に進み、一刻も早くこの場所から離れたいようだった。
「“間(はざま)”が、いたゾ!
捕らえロ!!」
どうやら、女性は獣人達に見つかったようだ。
分かりやすくいったら、獣人は二歩素行の犬。
犬種があるのか耳の形や鼻の長さ、体毛の模様はそれぞれ違うが共通して金色の瞳と同じ軍服をきている。
女性は、走る速度を上げるように更に足を必死に動かす。
速度が上がったかは分からないけどやらないよりかはマシだろう。
だが、獣人達から逃げられるはずもなくすぐに体に巻いている布を捕まれた。
女性はとっさに、布をとって止まらずに進む。
裸が恥ずかしいなんて言っられない状況だったのだろう。
「くそガ!!」
獣人の一匹が女性の頭を掴み地面に叩き付けた。
頭を地面にグリグリと押さえつけて、女性を睨んでいる。
女性も最後に抵抗をするように前髪から微かにでている左目で精一杯に睨み返した。
「なんだ、その目ハ!
間じゃなかったら、駆除していたゾ!
来い、再教育してやル!」
もうダメだと思ったのだろう。
女性の体から力が抜けていった。
すると、女性を押さえていた獣人の頭が吹き飛んだ。
人と同じ真っ赤な血が、吹き出して女性の全身にかかる。
「…かわいそうに寒かったろ。」
女性と獣人の間に、鍵型の剣を握った大きな人が立っていた。
まるで、女性を遮るように。
鉄臭い匂いの中で女性の瞳にうつった者は、自分にカモフラージュ用の白いマントを渡す茶色のコートを着た男性の姿だった。
男の足元には、自分を掴んだ獣人の亡骸と男の剣が刺さっている。
男は腰にある二本の鍵状の武器のうち一本を左手に握った。
「誰ダ!?」
「尋ねなくたって見れば分かるだろ?
覚悟しろよ、獣ども!」
男は、かなりの殺気を出しながら獣達を睨んでいる。
「ちょっと何て言ってるか、わかりませんねぇ。」
「コラコラ、お嬢さん。
言うならもっとこぅ…。」
「オイオイ、ややこしくなるからこれ以上はやめなはれ。」
男が歩いてきた方向には、茶色コートを着た3人の人がいた。
まずは男を馬鹿にした黒髪のボブヘアーの女性。
その左側に立っているフォローをした丸刈りの男性。
最後に女性の右側にいたツッコミをいれたモヤシみたいな男性。
「3バカ、任務だ。
おの砦を潰せ。」
青髪の男性は、あの三人の話を無視して腰にある鍵型の武器を起動させる。
プシューと音をたてながら、剣の様な形状にさせると男は走り出した。
「えー。
“ベル”はともかく、私はバカじゃない。」
「…“シオ”。
頼むから、そう言う事は本人がいない時に言ってくれ。
“ハゲ”、時間かせぎ頼むわ。」
そう言うと、“ベル”と呼ばれたメガネの男性も鍵型の武器を起動させた。
鍵型の武器は、プシューという音を立てて起動すると杖のような形に形状を変えていく。
「うっし、まかしとけ。
あと俺は、ハゲじゃない。」
「あーもー、いいよそんなやりとり!
アイツをほっといていくよ、チビハゲ!」
“シオ”と呼ばれた女性は、ヤスと同様に鍵型の武器を起動させて剣のような形状にした。
“ハゲ”と呼ばれた丸刈りの男性は、ベルにカモフラージュ用のマントを渡すと鍵型の武器を銃の形状に変える。
そして2人は、ベルを置いて砦に向かって走って行った。
“心の0段〔じんのぜろだん 〕”
ベルが、杖を地面に突き刺すとヤスを中心に赤い雷が放出される。
赤い雷が収まるとベルを中心に大きな渦が発生する。
すると、渦の縁から赤い雷と一緒に雪と岩で出来た大きな壁が出現して砦のように形を生成していった。
完成したのは、氷と岩でできた小さめのかまくらみたいなものだった。
真冬の平地を走る一つの人影があった。
クセッ毛の白髪の女性が、雪が降る夜に全裸でたった一枚の布を巻いて砦が見える方向とは逆の方に走っている所を見ると、砦から逃げているのだろう。
不自然に長く延びた前髪を靡かせて走っている。
「はぁ…はぁ…。」
寒い、足が霜焼けで痛いなんて言ってられない状態だったのだろう。
両足を真っ赤に腫らして、瞳には涙をためているようだ。
呪文のように、嫌だと何度も何度も同じ言葉を繰り返しているようだった。
寒さで体を震わせたり、後ろを振り向く事もしている様子はない。
少しでも前に進み、一刻も早くこの場所から離れたいようだった。
「“間(はざま)”が、いたゾ!
捕らえロ!!」
どうやら、女性は獣人達に見つかったようだ。
分かりやすくいったら、獣人は二歩素行の犬。
犬種があるのか耳の形や鼻の長さ、体毛の模様はそれぞれ違うが共通して金色の瞳と同じ軍服をきている。
女性は、走る速度を上げるように更に足を必死に動かす。
速度が上がったかは分からないけどやらないよりかはマシだろう。
だが、獣人達から逃げられるはずもなくすぐに体に巻いている布を捕まれた。
女性はとっさに、布をとって止まらずに進む。
裸が恥ずかしいなんて言っられない状況だったのだろう。
「くそガ!!」
獣人の一匹が女性の頭を掴み地面に叩き付けた。
頭を地面にグリグリと押さえつけて、女性を睨んでいる。
女性も最後に抵抗をするように前髪から微かにでている左目で精一杯に睨み返した。
「なんだ、その目ハ!
間じゃなかったら、駆除していたゾ!
来い、再教育してやル!」
もうダメだと思ったのだろう。
女性の体から力が抜けていった。
すると、女性を押さえていた獣人の頭が吹き飛んだ。
人と同じ真っ赤な血が、吹き出して女性の全身にかかる。
「…かわいそうに寒かったろ。」
女性と獣人の間に、鍵型の剣を握った大きな人が立っていた。
まるで、女性を遮るように。
鉄臭い匂いの中で女性の瞳にうつった者は、自分にカモフラージュ用の白いマントを渡す茶色のコートを着た男性の姿だった。
男の足元には、自分を掴んだ獣人の亡骸と男の剣が刺さっている。
男は腰にある二本の鍵状の武器のうち一本を左手に握った。
「誰ダ!?」
「尋ねなくたって見れば分かるだろ?
覚悟しろよ、獣ども!」
男は、かなりの殺気を出しながら獣達を睨んでいる。
「ちょっと何て言ってるか、わかりませんねぇ。」
「コラコラ、お嬢さん。
言うならもっとこぅ…。」
「オイオイ、ややこしくなるからこれ以上はやめなはれ。」
男が歩いてきた方向には、茶色コートを着た3人の人がいた。
まずは男を馬鹿にした黒髪のボブヘアーの女性。
その左側に立っているフォローをした丸刈りの男性。
最後に女性の右側にいたツッコミをいれたモヤシみたいな男性。
「3バカ、任務だ。
おの砦を潰せ。」
青髪の男性は、あの三人の話を無視して腰にある鍵型の武器を起動させる。
プシューと音をたてながら、剣の様な形状にさせると男は走り出した。
「えー。
“ベル”はともかく、私はバカじゃない。」
「…“シオ”。
頼むから、そう言う事は本人がいない時に言ってくれ。
“ハゲ”、時間かせぎ頼むわ。」
そう言うと、“ベル”と呼ばれたメガネの男性も鍵型の武器を起動させた。
鍵型の武器は、プシューという音を立てて起動すると杖のような形に形状を変えていく。
「うっし、まかしとけ。
あと俺は、ハゲじゃない。」
「あーもー、いいよそんなやりとり!
アイツをほっといていくよ、チビハゲ!」
“シオ”と呼ばれた女性は、ヤスと同様に鍵型の武器を起動させて剣のような形状にした。
“ハゲ”と呼ばれた丸刈りの男性は、ベルにカモフラージュ用のマントを渡すと鍵型の武器を銃の形状に変える。
そして2人は、ベルを置いて砦に向かって走って行った。
“心の0段〔じんのぜろだん 〕”
ベルが、杖を地面に突き刺すとヤスを中心に赤い雷が放出される。
赤い雷が収まるとベルを中心に大きな渦が発生する。
すると、渦の縁から赤い雷と一緒に雪と岩で出来た大きな壁が出現して砦のように形を生成していった。
完成したのは、氷と岩でできた小さめのかまくらみたいなものだった。
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