Nora First Edition

第十三話

第13話 7

「薬が体に馴染むと、このように引き寄せられます。

引き寄せる場所は、任意なので刀身に当たって怪我するとかは基本的にないので心配はしなくてもいいよ。」



サヤは、シレッとそう言うと引き寄せたキーウェポンを起動させる。

サヤの持つファーストサンプルのキーウエポンはアイク達の使うキーウエポンとは違い、使うホープごとに姿を変える。


先ずは剣形態。



“体”



サヤの体が赤色の雷に包まれていく。
赤色の雷がおさまると、その場で高く跳躍した。

普通に5階建ての大学を軽々と超える程に。




そんな高さからの着地を軽々とこなすと、流れるように皆を見る。




「ここまで行けとは言わないけど、肉体強化はこれくらい加護を得るんだよ。
さぁ、サヤさんに続いてやってみよっ！」



サヤに続いて、コーダとジュリ、アイク、シオがキーウェポンを剣形態にしていく。

特化型のベルとグレーズは形態変化をさせないで。


それぞれシミュレーション通りに力を込めていく。


“体の1段”


そして、シミュレーション通りにキーウェポンから雷が出て全員の体に纏わって消えていく。


…ベルを除いて。

「…ベルだけ…か…。」

「ゴメン、サヤ姉ぇ。」



グダーッとその場に座り込むベルの側に移動したサヤは、ヨシヨシと頭を撫でる。

気にするなと。


肉体強化が軸となる為、本日のトレーニングは体による軽い運動となった。


その間、ベルはホープを発動させていない。




「おっかしーな。
何、俺だけ仲間外れ？

なに、鼻血なんて出した覚えないし…俺の怪我は検査の時は無かったし…。

ふーむ。」


「シミュレーションの時だって、コーダ達も直ぐに出来た訳じゃないでしょ？

キーウェポンに触って、自分とキーウェポンとの境界みたいなのを無くしてから始めてホープが使えるんだよ。

素質はあるんだ、焦んな。」



項垂れているベルにウリウリと腰あたりに拳を当てている。
横腹が弱いベルは、時より体を捻っていたが…表情は先ほどより和らいでいた。


「ふむ。
…中々の刺激だったよ。

僕の研究も進みそうだ。」

「ナツに関しては、気分次第だろうに。」





ナツは、ウーンと背伸びをしてからそう呟く。
ベルも呆れたような表情をしていたが、人差し指をナツに向けられて首をかしげる。



「…僕が研究に関して進まないと言った事があるのかい？

気分次第とは何時も言ってはいるけど、期限は破った事はない。
それを踏まえて今の意味がどう言うことか分かるかな？」



ベルの答えは簡単だった。

仕上がりが早くなる。

ボソッと言ったベルの答えに満足した様子のナツは、ゆっくりと口を開く。


「アイク博士。
一週間後に合同実験をしてもらえないかな？

インフィニティの試運転をしたいんだ。
獣を相手に行いたいから、いつもの助手では心もとない。

護衛として協力してくれ。」



「いいのか？」



ナツは、ゆっくりとアイクの方を見た。

科学者として、最先端の技術を持っている同業者の試運転に同席できるのは願ってもない事だ。
喜びで我を忘れないようにサヤも、アイクの左腕を優しく握っている。




「嫌なら、初めから口にしないさ。
獣に対して特攻性が認められた技術をもつグループが護衛だとその分、安全性が増すからね。」

「…なら、宜しく頼む。」



アイクは、右手をナツに差し出す。
ナツもめんどくさそうな表情を見せたが…これも礼儀か…とだけ言って握り返した。


「…それじゃ、一週間後に。」



ナツは、それだけを告げると携帯を取り出し助手と電話しながら足早と去っていった。