Nora First Edition

鷹美

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第十四話

第14話 1

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ナツが処刑されて一ヶ月が経った。


ベルは、相変わらず無気力な感じではあったが少しずつだが訓練には参加するようになっている。



「…あのベルがここまで、やられるなんて思わなかった。」

「アイク…、それを本気で言ってたら、怒るよ。」



アイクがボヤくように言った言葉にシオはドスを聞かせて言った。
ジュリも直ぐにシオを後ろから抱きつき落ち着かせる。

アイクも息を吐き出すように謝罪した。
ゴメン…っと。



「ナツが処刑されたのは、残念だけど…だからと言ってピリピリするのは間違いじゃないの?

悲しむなって言わないけど…こういう時こそ、元気でいこう!」



ジュリは、両手を上げて笑顔でそう言った。
その様子に、流石のグレーズも表情を緩ませている。



「そう…だよ…な。

こういう時こそ…明るく…。」


ベルは、両頬を力強く叩く。
そしてキッと両目を見開いた。


「ごめん。

俺…らしくなかった…わ。
気合いいれていくよ。」


「んじゃ、メガネの気合が入った所で話を変えるか。

オッさん!」



コーダがパンパンと手を叩くとベルから離れた位置に座っていたグレーズがノソノソと歩いてきた。



「今回は姐さんに内緒で、このバカとの結婚式をやるって話だ。


…忘れたのか?
まぁ、無理もないとは思うがな。」



グレーズは、バカをやけに強調して言いながらアイクを親指で指した。
その様子をみて少しずつ思い出してきたのか、ベルは頭を掻いて唸り始める。


「あー。
ごめん、今…少しずつ思い出してきた。

俺は、何の担当…だっけ?」




取り敢えず、アイクとジュリは結婚指輪とドレス。
ジュリは、女性の意見が欲しいからついてきて欲しいとのこと。


グレーズとコーダは、買い出し。



ベルとシオは、サヤの相手を。



会場のセッティングは、ベル以外で済ませたみたいだ。




「ごめん、俺が腑抜けたばっかりに。」

「なんだ、メガネらしくない。
いつもみたいに、苦しゅうないとか言ってろよ。」



シュンとするベルの背中をコーダはバンと叩く。
結構な衝撃のようで、ベルは痛みを堪えるように背中を抑えた。



「メガネが元気ないと、皆…調子が出ないんだから。

頼むよ?」



コーダは、小声でボソッとそう言った。
その言葉にベルはフッと笑う。

「まったく、しょうがないこと。

皆、俺が好き過ぎだろオイ。
ハイハーイ、元気になったよ。

お、れ、さ、ま。」


「メガネ、煩い。」



ベルは、ハイテンションでそう言うとコーダはズバッとそう言った。

いつも通り。
アイクは、今は無理している感じが残るものの少しずつ戻っていく事にグレーズは安堵していた。



「はぁー。
まぁ、気をとりなおしてサヤ姉ぇの所に行きますか。」

「散々、待たせた人間が言わないの。
こっちは、待ってたんだから。」




ベルの一言にプンスコしたシオはそう言いながら、外に出て行った。


「そんじゃ、チーム野郎は買い出しか。
やれやれ、面倒な事を押し付けられたものだ。」

「面倒くさいなら、さっさと終わらせようよ。
行くよ。」


コーダも後ろからボヤくグレーズにそう言うと外に出ていく。
グレーズも面倒くさいとは言っているもののニヤニヤと笑ってコーダの後ろについていった。




「んじゃ、俺たちも行くか。
頼むぞ、ジュリ。」

「そっちこそ。
エスコート、しっかりとね。」


アイクの横を、手を後ろに組んでジュリはついて行った。
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