2 / 151
プロローグ
プロローグ2
しおりを挟む東野の屋敷の前には、強固な門と城壁と2人の屈強な戦士がいた。
短めのモヒカンのした顔にある大きな傷の目立つ20代後半位の男と長い黒髪をポニーテールに縛った20代前半位の伊達男の門番は、険しい表情で彼を見る。
モヒカンの男が上の人間らしく、伊達男はどうしたらいいのか困った顔で様子を伺っている。
「ワシは怪しいものではありませんぞ。
ワシは〝蓮(れん)〟、〝護(まもる)〟様の速さの守護者である。
主人から、ここの領土である〝東(ひがし)〟殿に訪問の便りが届いているはず。
通して貰えぬか?」
どう見ても怪しさMAXな風貌な男にそう言われても…。
モヒカンの男は顔を更に険しくして頭を抱える。
問答無用で追い出さない様子を見ると、顔つきに似つかわしいほど真面目で心の優しい男なのだろう。
困り果てたモヒカンの男の後ろから声がした。
「どうかしたのか2人共?」
声のする方を見ると、頭を丸めた屈強な男がそこにいた。
歳は20代後半くらいでピシッと着こなした着物、腰には刀が挿してあり右手には鉄で作られた棍棒が握られていた。
客人の前で安堵した表情を隠さなかった伊達男をモヒカンの男は軽く小突くと坊主の男に耳打ちをして事情を話した。
ふむと、顎に手を当てると無精髭の男〝蓮〟に近づいていく。
「貴殿が蓮殿か、噂は聞いておる。
隣の領地〝和国(わこく)〟の守護者の一人…だったかな。
着崩しているが…ここは夜は大変冷える。
風邪には充分気をつけてくだされ。
申し遅れたら、私は〝大介(だいすけ)〟。
領主である東様の力の守護者。
同じ守護者同士、よろしくお願い申す。」
大介は、胸を張り堂々とした様子で右手を蓮に差し出して握手を求めた。
ダラシない格好と指摘せず、蓮の体調を心配するところから彼の人柄が窺える。
「主から、護様のご来訪か聞いている。
安全確保に単身で来られたかな?
どうぞ、こちらに。」
恥ずかしそうに握手をした蓮は、大介に連れられて砦に入っていく。
丁寧に案内されてしまったせいで、はぐれたなどと口が裂けても言えなくなってしまった。
恥ずかしい気持ちを誤魔化すように首を左右に振って案内された屋敷の内部を眺める
堅牢な外壁とは違い、屋敷の内部は普通の屋敷のようで鉄ではなく木や畳みの香りがあたりに広がっていた。
「我が主人は、木の香りが好きでな。
部屋や家具…武具までも鉄と木を組み合わせて作ったものを愛用されている。
貴殿の主人は何か好きなものはあるか?」
「護様は、そうなぁ…花が好きじゃのう。
奥様も花が好きで共に花壇いじりを良くなさっておる。」
そんな他愛もない話をしていると、蓮は大きめの客間に案内される。
そこまで大きな屋敷ではないため客間につくまで時間はかからなかった。
「他の方が到着するまで、この客間で待って頂きたい。
茶は緑茶でよろしかったかな?
楽にして過ごしてください。」
大介は、そういうと蓮を客間に残して襖を穏やかに閉めて去っていった。
守護者という幹部とも重鎮ともいえる立場の人間が旅館の女将顔負けの気配りを見せたことに感謝をしながら蓮は客間の畳に腰をかけて休んだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる