コバナシ

鷹美

文字の大きさ
9 / 151
プロローグ

プロローグ9

しおりを挟む


自分達の周りの敵を一掃すると、椿は蓮の元に走りだす。
はぐれた後の合流だ、普段なら小言の1つや2つ飛ばす椿だったがこの事態では心配そうな表情で蓮を見ていた。


「父上!
ご無事でしたか。」

「おう、心配をかけたのう。
して皆は無事か?」


迷子になった挙句、娘に心配されるとは情けないことをした…。
蓮は心の中で少し反省すると、できるだけ明るい笑みで椿に返事をした。

剛も一段落したようで斬馬刀を背負いなおし、椿のあとを追うように歩いてきた。
二人の安否が確認できると、蓮が現状の事を話そうと口を開いたら自分達と逆の方向から金属音が響く。

恐らく、小屋の裏手を守る大介の戦闘が始まったのだろう。

きっかけは恐らく蓮が出した爆音。

向こうの守りは一人。
素早く動ける蓮は、剛達に賊の拘束と入り口の守りを任せて大介の所に向かって走り出す。
距離は離れていない為、すぐに大介の元にたどり着く。

守護者を名乗るだけあり、大介も手練れ賊に後れを取っている様子はなかった。
鉄の棍棒を握り、一対多数にもかかわらず賊の相手をしている。

辺りには棍棒の餌食となり殴り飛ばされた賊が木にもたれかかっていたり倒れていたりしているが、今相手をしている敵は一味違うようで大介は防戦一方だった。


蓮は、助太刀をするためにそのまま加速するして賊を殴ろうとトンファーを振りかぶるが…それはあっさりと避けられてしまう。
そして避けた動きをそのまま利用して二人から距離を開ける。


賊は小柄で、両手に2本の小太刀を握っており距離を開けてから足を少し屈ませていつでも斬りかかれる体勢を維持していた。

蓮は、大介の前に出るように立つと背中越しで声をかける。



「大介殿、無事か?」

「蓮殿…助かった。
他の賊は蹴散らしたのだが…奴は倒しきれなかった。
とにかく素早くて小回りが効く。
私とは相性が悪過ぎる。」


そう話していると、賊は話の隙を狙ってから再び攻撃を始める。
蓮も直ぐに対応するように賊に向かって走り出した。

賊はそのまま勢いに任せて、小太刀を振り回す。
蓮はそれをトンファーで弾いていく。

確かに速さは目を見張るものではあったが、力任せの軌道が丸わかりの攻撃と1発1発の攻撃がとても軽い。
武器を持たされた完全の素人だろう。


それが分かると蓮は、賊の攻撃に合わせてトンファーで小太刀を殴り刃を砕く。
武器を破壊されて驚いた賊の隙を逃さずにそのままトンファーで手を殴り使い物にならなくなった小太刀を手放させてそのまま蹴り飛ばす。

蹴り飛ばされた賊はそのまま仰向けに倒れ、蓮は動きを止めるように仰向けに倒れた賊の胸らへんを右足で踏んだ。



「貴様の負けだ。
大人しくしていれば命まではとらん。」


蓮が賊を拘束したのを確認した大介は、先に自分の倒した他の賊達を拘束する。
棍棒で殴っていた為に、重症であっても死者は出ていなかった。

今までも何度も、同じことがあったのだろう手慣れた手つきで順番に賊達を拘束していく。
結託して逃げられないよう、間隔を開けて拘束した賊達をまとめると蓮が抑えている賊に向かっていった。

まずは、先に大介は自分の手を使い賊の手を拘束。


「大した怪我をさせてはいない。
まずは、話を聞かせてもらおうか。」


トンファーを袖にしまった蓮は、そのまま賊の顔を隠している布を剥ぎ取った。

賊の顔をみた蓮と大介は驚いた顔をみせた。
なぜなら、その賊は東よりも幼い子供だったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

有能外交官はドアマット夫人の笑顔を守りたい

堀 和三盆
恋愛
「まあ、ご覧になって。またいらしているわ」 「あの格好でよく恥ずかしげもなく人前に顔を出せたものねぇ。わたくしだったら耐えられないわ」 「ああはなりたくないわ」 「ええ、本当に」  クスクスクス……  クスクスクス……  外交官のデュナミス・グローは赴任先の獣人国で、毎回ボロボロのドレスを着て夜会に参加するやせ細った女性を見てしまう。彼女はパルフォア・アルテサーノ伯爵夫人。どうやら、獣人が暮らすその国では『運命の番』という存在が特別視されていて、結婚後に運命の番が現れてしまったことで、本人には何の落ち度もないのに結婚生活が破綻するケースが問題となっているらしい。法律で離婚が認められていないせいで、夫からどんなに酷い扱いを受けても耐え続けるしかないのだ。  伯爵夫人との穏やかな交流の中で、デュナミスは陰口を叩かれても微笑みを絶やさない彼女の凛とした姿に次第に心惹かれていく。  それというのも、実はデュナミス自身にも国を出るに至ったつらい過去があって……

前世は厳しい家族とお茶を極めたから、今世は優しい家族とお茶魔法極めます

初昔 茶ノ介
ファンタジー
 代々続くお茶の名家、香坂家。そこに生まれ、小さな時から名家にふさわしくなるように厳しく指導を受けてきた香坂千景。  常にお茶のことを優先し、名家に恥じぬ実力を身につけた彼女は齢六十で人間国宝とまで言われる茶人となった。  しかし、身体は病魔に侵され、家族もおらず、また家の定める人にしか茶を入れてはならない生活に嫌気がさしていた。  そして、ある要人を持て成す席で、病状が悪化し命を落としてしまう。  そのまま消えるのかと思った千景は、目が覚めた時、自分の小さくなった手や見たことのない部屋、見たことのない人たちに囲まれて驚きを隠せなかった。  そこで周りの人達から公爵家の次女リーリフィアと呼ばれて……。  これは、前世で名家として厳しく指導を受けお茶を極めた千景が、異世界で公爵家次女リーリフィアとしてお茶魔法を極め優しい家族と幸せになるお話……。   ーーーーーーーー  のんびりと書いていきます。  よかったら楽しんでいただけると嬉しいです。

転生小説家の華麗なる円満離婚計画

鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。 両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。 ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。 その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。 逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。

「ときめかない」ものなど捨てておしまいなさい

megane-san
ファンタジー
私、クリスティーナは、前世で国税調査官として残業漬けの日々を送っていましたが、どうやら過労でぶっ倒れそのまま今の世界に転生してきたようです。 転生先のグリモード伯爵家は表向きは普通の商会を営んでおりますが裏では何やら諜報や暗部の仕事をしているらしく…。そんな表と裏の家業を手伝いながら、前世で汚部屋生活をしていた私は、今世で断捨離に挑戦することにしたのですが、なんと断捨離中に光魔法が使えることが発覚! 魔力があることを国にバレないようにしながら、魔術師の最高峰である特級魔術師を目指します!

悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい

花見 有
恋愛
乙女ゲームの断罪エンドしかない悪役令嬢リスティアに転生してしまった。どうにか断罪イベントを回避すべく努力したが、それも無駄でどうやら断罪イベントは決行される模様。 仕方がないので最終手段として断罪イベントから逃げ出します!

処理中です...