コバナシ

鷹美

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第一話

第一話 1

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時は少し遡り、討伐隊が東野城を出発した頃。
優と椿と籐麻は、東の護衛としてそばにいた。


まずは日課の素振りから。
東は少し辿々しい言葉でそういって、兵士の訓練所のような所で鉄の棒を使って素振りを始めた。


自分の子供と同じくらいの東の素振りを優はじっと見つめる。
…スジは悪くない。

鉄の棒を使うのも刀と同じ重さに慣れるためなのだろう。
鉄の棒に振り回されている様子もないので相当鍛錬を積んだに違いない。

基礎体力であれば、同年代でも頭ひとつ抜けている筈だ。
惜しまれるのは…師と呼べる人ないことか。



「…東様には師はいるのかな?」


優は腕を組みながら素振りをする東を見てそういった。

少し不躾な質問だったかな?
父上が亡くなっているのだ、もしかしたら触れてほしくないものかもしれない。


そんな優の小さな後悔を他所に素振りを止めた東は、汗を拭い少し呼吸を整えて口を開く。


「短い間だか、父上が…。
水を感じれる立派な剣士だった。」


東は、そう答えてくれたが寂しそうな表情を浮かべていた。
優はその寂しそうな姿をみて、留守番をさせている自分の娘とダブらせる。

こんな頻繁に自分の子の顔が浮かぶなんて…蓮の事も馬鹿にできないね。
そんな事を考えていた優は静かに自嘲した。


少し考えた後に優はふむ…とそう呟くと、壁にかけてあった竹刀を2本とって東の方まで歩き、右手の一本を東に渡す。
他流技の鍛錬もまたいい経験になるだろう


「ただ見守るのも退屈だね。
僕でよければ、稽古の相手になるよ。

水は扱えないけど、僕は風を扱える。
同じ四大の使い手との組み手だから、素振りよりは有意義になるとおもうな。」

「あぁ、是非よろしく頼む。」


柔らかな笑みを浮かべて、優はそう言った。
優の一言に、パァァと表情を輝かせた東は優が差し出した竹刀を握る。

東の勤勉な姿に関心をした後に、東から3歩ほど離れた。

さっそく始めようとしたが、すこし考えるように止まる。
…どうせならあの2人も一緒に見た方がいいかな。


「椿と籐麻も竹刀を持って、東様と一緒に話を聞こうか。」


優は、そういうとチラッと2人を見る。

藤麻の理解力はどれ程のものだろうか。

2人が竹刀を持って東の近くに立つのが見えると、藤麻の実力をすこし楽しみにしながらゆっくりと口を開く。
まずは、基礎知識からと。



「〝四大(しだい)〟についで話をしよう。

四大とは、この世界の物質を構成している四つの元素を指す。
地、水、火、風の四つの事だね。
この地域の人間は、肉体特性をもつがゆえに体質が合えばこの誰かを体で感じ…操ることができる。

実体を持たないものには実体を、動きがないものには動きを待たせ増幅させることもできる。」


優はそういうと、木刀を振って起きた風を大きくしてみせた。
そして、少し強めの風を訓練所に一周させるように吹かせる。


ゴールを自分の所にするように風を向けさせ、空いてる左手で風を打ち消した。

こんな風に操れるのだと。


「東様は、父君と同じく水を操れるのでいいのかな?」

「実は分からないのだ。
…父上は母上を失ってから、人が変わり…私に刀は愚か竹刀すら握らせてくれなかった。

母上が亡くなった前に聞いた四大の大まかな説明と父上が見せてくれた型だけしか知らない。」


なるほどね…と優はボヤいた。





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