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第3話
第3話 10
しおりを挟むスーはそういうと、一足で藤麻の側まで移動する。
そして、右手で強く掌底を藤麻に当てて思い切り吹き飛ばした。
仰向けに倒れている藤麻を見下ろして、スーはグルグルと右肩を回す。
「…そういえば、君の意見を聞いてなかったね。
やりたくないなら、そこで武器を収めるといいよ。
オイラも弱い者いじめはしたくないし。」
「…上等。」
スーの挑発に乗っかった藤麻は、勢いよく立ち上がるとシャープナーを擦り合わせて大きな火を起こしてスーに向かっていく。
…言われたことの意味がわかっているのかな。
スーは軽くため息をつくと、手を強く横に振って弱い風を起こして藤麻が起こした火を消した。
そよ風にも満たない強さの風で消えるとは、思っていなかったらしく藤麻の視線は思わずシャープナーに向けられる。
「どんな状態でも相手から意識をそらさない。
戦いにおいて基本だよ。」
スーは、隙だらけの藤麻に遠慮なしで攻撃を浴びせる。
まずは軽く顎に一撃、怯んだところに両肩と腹部に掌底を浴びせて両手で藤麻の右手を握ると思い切りスイングして投げ飛ばした。
華奢なスーが藤麻を投げ飛ばしたのも驚きだったが、目隠しをしてもこの精度の体術を扱えることに楓は驚いた。
自分だったらどうなんだろうか。
楓は少し興味を抱きながら、スーの戦い方をみる。
「君の火は密度が無さすぎる。
だから、簡単に消されるんだ。
無駄に広げている火を纏めるイメージでやると無駄がなくていいよ。
大きさだけが強さじゃない。」
藤麻は起き上がり、息を整えるともう一度シャープナーを擦り合わせて火を起こして両手のシャープナーに火を纏わせるとその場で両手のシャープナーを大きく振った。
”送り火”
シャープナーから飛ばされた火の塊がスーに向かって2つ飛んでいく。
藤麻は、火を飛ばしてすぐに走りながらシャープナーを擦り合わせて火を起こして再びスーに向かっていった。
遠慮がなくなったね、いいことだ。
スーは内心そう思った後に掌底で藤麻の飛ばした火を防いで、向かってきた藤麻の振り下ろしを後ろに下がって避ける。
藤麻は避けられても、そのまま攻撃の手を緩めず両手のシャープナーを連続で振った。
「そうそう、その調子。
さっきより火を纏められてるじゃん。」
火の棒が自分に向けられいるにも関わらず涼し気な表情で藤麻の攻撃をスーは避けていた、助言というオマケと一緒に。
スーは、氣をつかうとはいったが火を防ぐこと以外につかった様子はない。
籐麻を投げたのも吹き飛ばした掌底も自分の経験から培った体術だろう。
まだまだ加減の手を緩めていない。
蓮たちならまだわかる。
自分とそう歳が離れていないのにここまで実力が離れているのか。
藤麻は焦りで、小さく歯ぎしりをした。
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