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第3話
第3話 14
しおりを挟む「私は嫌よ。
最後の最後で鬱陶しかったんだから!」
プンプンとそう答える楓。
女医だったか、怪我人の治療の手伝いなど無償で率先して行った人物だと聞いている。
最後には風呂にまで一緒に入る仲になったと聞いていたため、優としては気にはなっていた。
世話になったのであれば、親として挨拶をせねば…。
「本当に嫌であれば、口にしないといい。
今、思い出すと言うことは何か意味があるのだから。」
籐麻は瓢箪に入れた麦茶を飲みながらそう言った。
随分と意味深めいた言葉を言う。
まるでホラーみたい。
優がそんな事を考えていると、自分たちが来た方角から一人近づいている人間を感知した。
椿やスーより歳上の女性。
身長が高いほか、色々と恵まれている容姿。
そして、腰にある小さなポーチ。
感知しているのが一人だと集中すれば、細かな情報がわかる。
…そろそろ見えてくる頃かな。
優は、ゆっくりと人がくる方角を見た。
見えた人影は、風で探知した通りの容姿で大きい三つ編みが型にかかっている。
ん?
あれは、もしや?
優が子供達に声をかけようとした瞬間に、その人影はこっちに向かって走り出してきた。
しかも結構早い。
なんなら、声も聞こえる。
「…スーちゃん、楓ちゃん、空ちゃん、籐麻ちゃーん!!
お姉さんですよぉおお!」
聞くまでも無いピオだろう。
あのタイプは楓の苦手なタイプだ、道理で毛嫌いするわけだ。
などと、優は考え終えた頃にはピオは楓にタックルするような勢いで抱きついてきた。
「かーえーでーちゃーん、捕まえたぁ。」
「いやぁぁあ!!」
全力で走ってきたのだろう。
ピオはかなり荒い息遣いで、楓の後ろから抱きつき胸の方で腕を組む。
突然の出来事に悲鳴をあげる楓。
そんなに怯えるならもっと早く言えば良かったなあ。
「貴女がピオさんかな?
僕は優、楓の父です。
娘がお世話になったようで…。」
「あら、楓ちゃんのお父様ですか!?
挨拶が遅れて申し訳ありません。
私はピオ、各地を転々として医者紛いの商いをしております。」
優がそうピオに声をかけると、流れるような動作ですピシッと立ち上がりハキハキと話し始める。
あとは、それからは大人の会話だ。
楓ちゃんは…空ちゃんは…しっかりしているとかなんとか親戚の集まりのような話を繰り広げている。
ピオにこんな話が出来るとは微塵にも思っていなかった楓は絶望に打ちひしがれていた。
「ねーちゃん、ご無沙汰。
オイラ達を追ってきたの?」
「ブッブー、残念…本当に残念だけど違うわ。
追いかけたかったけど、普通に捕まるからお姉さんは追いかけるのは泣く泣く諦めたの。
お姉さんがここに来たのは、お仕事。
街の女の子を手当てした話が脚色されていたようで港町までお薬を届けにいくの。」
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