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外伝 万屋
外伝 万屋 1
しおりを挟むさよならを先に言ったのはそちらなのに何故涙をながしているのか?
そんな陳腐な失恋ソングを耳にする。
何故と頭を抱えて傷心ぶっている言われた側にモヤモヤとした不快感を抱いていて普斎は蓮達から離れるようにしながら街道を歩いていた。
深傷を負わせはしたが、直ぐに手当てをすれば命に別状がない位の加減はしているので花街に向かって戻っているだろう。
その間に、狩り人達も引きつけてくれると助かるなどと考えて行動していた。
現在の時間は昼間。
港町も近いかもあって、陽気な音楽や流行りの音楽が街道にまで響いている。
その中でも一番人気なのは先ほどいった失恋ソングだ。
数あるジャンルの音楽の中で最も人気なのは、誰にでも起こりうる不幸話の為に感情移入がしやすいからだろう。
「さて、ウチの相方は無事に荷物を届けられたのだろうか。」
合流する場所は決まっている、港町で一番安い民宿だ
こちらも仕事はおわったから酒でも買って宿で一杯やろう。
まぁ、自分の場合は一杯じゃなくていっぱいの方になるのだが。
もやもやした気持ちを酒で切り替えて街道を進むと顔がやや隠されている見慣れた服装の2人の人間を見かけた。
狩り人のようで駆け足で、花街の方向に進んでいる。
任務の失敗、花街で応援の要請。
コソコソと話していたが、普齊の耳には一部の言葉が聞こえた。
普段なら仕事がひと段落していれば無視するのだが…無視するには不穏すぎる。
嫌なことは続けて起こるのは何故なのだろうか。
そう考えながら軽くため息をつくと、すれ違いそうになった狩り人達の間に立つように移動してのそれぞれの袖を無造作に片手でつかんで人のいなさそうな草むらに投げ飛ばした。
「急いでいるところ申し訳ない。
少しばかり話を聞かせてもらおう。」
刀で狩り人の1人を指しながらそう言った。
情報を聞くだけなら1人で十分だからだ。
残った狩り人はすぐに起き上がり、武器を構えるが武器が見当たらないようで慌てた様子で自分の服を叩いている。
「ぁあ、探し物はこれか?
物騒なものは没収させてもらった、ほら腰を落ち着けて話そうじゃないか少年。」
少年と言われた瞬間に狩り人の顔を隠していた布が斬り裂かれていた。
圧倒的な実力差におびえ始める狩り人を他所に、普齊は楽しそうに左手で奪ったナイフをプラプラさせて笑っている。
少年と言われた狩り人は後ろを振り返って一目散に逃げだした。
話す気はないと…。
「死人に口なし…悪く思うなよ。」
普齊は奪ったナイフを逃げ出した狩り人の後頭部を目掛けて投げた。
投げたナイフは見事に狩り人の頭部にあたり、そのまま地面に倒れる。
「酒を買う暇がなくなったな。」
普齊は倒した狩り人達の脈を確認した後に思い切り背伸びをして、仲間を探しに速足で港町に向かって歩き始めた。
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