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外伝 万屋
外伝 万屋 7
しおりを挟む「大体、こう言った連携は直ぐに前衛がくるものなのだが…お前らは違うのか。」
「わるいな、旦那。
避けなくても大丈夫そうな奴の見え見えの罠に引っかかるほど俺も間抜けじゃないんだ。」
普斎は、心底悩んだ。
どんなに策を巡らせても倒せるビジョンが見えない。
こんな感情は本当に久しぶりだ。
金を貰っている以上、ただ逃げるのは主義に反する。
手がかりもないのか。
硬直状態だったが、それを狙ったように突然武は横から放たれた雷に飲み込まれた。
今しかない。
普斎は、お互いの不意をついた雷に便乗するように間合いを一気につめた。
【転(てん)】
普斎は体を横に思い切り回転させて遠心力を利用して刀を力任せに武に向かって叩きつけた。
「流石に今のは驚いた。
雷が横に飛んでくる体験は久しぶりだ。」
叩きつけた先には、武はおらず。
雷が飛んできた場所から数本下がった場所に立っていた。
飲み込まれたように見えたが、あの様子だとしっかり避けたのだろう。
「おいおい、雷を目視で避けきる奴なんで初めて見た。」
「まぐれだと思わないのなら、やはりお前は優秀だよ。
今殺すのは惜しいな…。」
武はそういうと、姿を消した。
目で追えなかった事に普斎は背筋が凍りつくような感覚に陥る。
気がついた時には、普斎はルイと共に胸ぐらを掴み持ち上げられていた。
「ここで殺すのはやめよう、お前のことだ俺の持つ肉体特性とやらの正体がわかっているのでないのか?
俺を楽しませてくれた礼だ。
静を管理していたのは確かに学だが…学から家畜を買い取ったのは他にいる。
とるにたらん、人間もどきの名前なぞ覚えてはいないが…倭、港町…そして良い鉱石がとれる“甲(こう)”と呼ばれる町にそれぞれ居たはずだ。」
「懇切丁寧に情報を教えてくれてすまねぇな旦那。
ついでにその手も離してくれると助かるんだが…。」
普斎は太々しく空いている左手で、自分を掴む武の手を指さす。
よくこんな状況でそう言えたものだ。
クックックと堪えるように武は笑う。
「ぉお、忘れてた。
楽しい時間というものはいつもあっという間だ…どれ、死ぬなよ2人とも。」
武はそういうと、雷があけた穴を目掛けて2人を思い切り投げ飛ばした。
普斎が最後に見えたのは、お見送りするようにニコニコと手を振る武の姿だった。
大砲に入れられて発射されたような勢いで飛んでいく2人。
腕力の肉体特性の人間に何度か投げられた事はあるが、流石の普斎もここまでの負荷を感じた事はない。
指先一つさえピクリとも動かせない為に、受け身も取れそうだ。
流石に死んだか。
そう諦めた時に、何かに受け止められたように動きがピタリと止まった。
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