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第7話
次の日、僕はキッチンから聞こえてくる物音と、香ばしいトーストの香りで目が覚めた。
あれ? なんでいつもよりキッチンの音がこんなに近くから聞こえるんだ?
「……昨日、あのまま寝ちゃった?」
「那月、おはよう。もうそろそろ、ご飯できるから待ってて」
「うん、おはよう。分かった」
昨日、あのまま寝たってことは、もしかして慎二も一緒に?
いや、でも今、僕がソファ占領して寝てるし……あの後、慎二は部屋で寝たの?
どっちだろう? すごく気になる。
顔を洗いながら、僕は考えた。
まあ、気になっても聞けないんだけど……。
「那月ー、できたよー!」
「はーい、ありがとー!」
慎二に呼ばれて、テーブルに着くと、目玉焼き、ベーコン、トースト、コーンスープが配膳されていた。
うん、いつも通り美味しそう。お手本のような朝食だ。
「いただきます」
まずコーンスープから手をつける。ゴクリと喉を鳴らして、一息に飲み干す。
苦手なものは先に食べてしまうに限る。
「ああ、那月、また顔についてるよ」
「ごめん、美味しくてさ」
慎二から差し出されたハンカチで頬を拭う。
僕がいつもこう返してしまうからだろうか? 朝食の他の品はローテーションなのに、コーンスープだけは変わらない。
お米に魚と来たら、味噌汁だと誰もが考えるだろうに、僕達の食卓にはコーンスープが並べられるのだ。
しかし、この二年間美味しいと言い続けてしまった手前、今更嫌いとは言えなかった。
「明日もコーンスープ作るよ」
「あ、ありがとう……」
頬が引き攣る。
でも、もう本当のことを言う必要なんてないんだな。と、ふと思う。
あと五回コーンスープを飲めば、わざわざ嫌いなものを我慢しなくてもいい生活になる。
食事を終えると、慎二は先に身支度を整えた。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
僕は玄関まで慎二を見送った。
まあ、三十分後には僕も同じ会社に向かうんだけど。
僕は皿を片付け、慎二の部屋以外を掃除し、身支度を終える。これでだいたい三十分。
今日は掃除中、廊下で不思議なものを拾った。
「これ、僕だよね?」
現像された写真。そこには、僕がご飯を食べる姿が映っていた。角度的にキッチンから撮影されている。
慎二が撮ったのかな? 身に覚えがないから、隠し撮りされたのだろう。別に言ってくれればいいのに。
それにしても今どき、わざわざ現像までするなんて。写真が趣味なのか?
確か一週間後は、慎二の誕生日だった筈だ。カメラをプレゼントしようか……って何考えてんだ、僕。
その日の前日には離婚の話を切り出して、既に慎二とは別れているはずだ。
その時には僕と慎二は赤の他人で、プレゼントなんて送る関係性じゃない。
強いて言えば、離婚届が一日早いプレゼントになるだろう。
僕は手にした写真を自室の引き出しにしまい込んだ。これも思い出だ。一枚くらい僕が貰ってもバチは当たらないだろう。
慎二が撮ってくれた写真。
「ふふっ」
僕はそれから、家を出た。
僕と慎二が三十分ずらして家を出る理由は、同居してることを隠すため。
左手を見て、ため息をつく。
慎二は積極的に、僕との結婚を隠していた。それはもう、結婚生活一日目から。
通勤時間をずらすのも、お弁当の外見から中身まで、違うもので揃えるのも、慎二が結婚指輪を身に付けないのも。全て慎二から提案されたものだ。
僕との関係を、徹底的に隠そうとする意思がビシバシと伝わってきた。
ならばと、僕も結婚指輪をしないでいると何故かそれは怒られた。絶対に身に着けろと、ものすごい剣幕で脅された。いや脅されてはいないけど、あの顔はほぼ脅しだ。従わなければ殺されていたかもしれない。
本当に意味が分からない。僕も外していた方が、都合がいいだろうに。
あれ? なんでいつもよりキッチンの音がこんなに近くから聞こえるんだ?
「……昨日、あのまま寝ちゃった?」
「那月、おはよう。もうそろそろ、ご飯できるから待ってて」
「うん、おはよう。分かった」
昨日、あのまま寝たってことは、もしかして慎二も一緒に?
いや、でも今、僕がソファ占領して寝てるし……あの後、慎二は部屋で寝たの?
どっちだろう? すごく気になる。
顔を洗いながら、僕は考えた。
まあ、気になっても聞けないんだけど……。
「那月ー、できたよー!」
「はーい、ありがとー!」
慎二に呼ばれて、テーブルに着くと、目玉焼き、ベーコン、トースト、コーンスープが配膳されていた。
うん、いつも通り美味しそう。お手本のような朝食だ。
「いただきます」
まずコーンスープから手をつける。ゴクリと喉を鳴らして、一息に飲み干す。
苦手なものは先に食べてしまうに限る。
「ああ、那月、また顔についてるよ」
「ごめん、美味しくてさ」
慎二から差し出されたハンカチで頬を拭う。
僕がいつもこう返してしまうからだろうか? 朝食の他の品はローテーションなのに、コーンスープだけは変わらない。
お米に魚と来たら、味噌汁だと誰もが考えるだろうに、僕達の食卓にはコーンスープが並べられるのだ。
しかし、この二年間美味しいと言い続けてしまった手前、今更嫌いとは言えなかった。
「明日もコーンスープ作るよ」
「あ、ありがとう……」
頬が引き攣る。
でも、もう本当のことを言う必要なんてないんだな。と、ふと思う。
あと五回コーンスープを飲めば、わざわざ嫌いなものを我慢しなくてもいい生活になる。
食事を終えると、慎二は先に身支度を整えた。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
僕は玄関まで慎二を見送った。
まあ、三十分後には僕も同じ会社に向かうんだけど。
僕は皿を片付け、慎二の部屋以外を掃除し、身支度を終える。これでだいたい三十分。
今日は掃除中、廊下で不思議なものを拾った。
「これ、僕だよね?」
現像された写真。そこには、僕がご飯を食べる姿が映っていた。角度的にキッチンから撮影されている。
慎二が撮ったのかな? 身に覚えがないから、隠し撮りされたのだろう。別に言ってくれればいいのに。
それにしても今どき、わざわざ現像までするなんて。写真が趣味なのか?
確か一週間後は、慎二の誕生日だった筈だ。カメラをプレゼントしようか……って何考えてんだ、僕。
その日の前日には離婚の話を切り出して、既に慎二とは別れているはずだ。
その時には僕と慎二は赤の他人で、プレゼントなんて送る関係性じゃない。
強いて言えば、離婚届が一日早いプレゼントになるだろう。
僕は手にした写真を自室の引き出しにしまい込んだ。これも思い出だ。一枚くらい僕が貰ってもバチは当たらないだろう。
慎二が撮ってくれた写真。
「ふふっ」
僕はそれから、家を出た。
僕と慎二が三十分ずらして家を出る理由は、同居してることを隠すため。
左手を見て、ため息をつく。
慎二は積極的に、僕との結婚を隠していた。それはもう、結婚生活一日目から。
通勤時間をずらすのも、お弁当の外見から中身まで、違うもので揃えるのも、慎二が結婚指輪を身に付けないのも。全て慎二から提案されたものだ。
僕との関係を、徹底的に隠そうとする意思がビシバシと伝わってきた。
ならばと、僕も結婚指輪をしないでいると何故かそれは怒られた。絶対に身に着けろと、ものすごい剣幕で脅された。いや脅されてはいないけど、あの顔はほぼ脅しだ。従わなければ殺されていたかもしれない。
本当に意味が分からない。僕も外していた方が、都合がいいだろうに。
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