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第3章

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「ケイ・ペンドルトン・・・・・・。何で、アンタが此処に居るんだ・・・・・・? 」

 俺は目の前の世界最強を警戒し、後退りしながら言った。まさか、また俺の命を狙いに来たのか?

「ケイ・ペンドルトンってあの・・・・・・!? 」

 リンリーも彼の名前ぐらいは知っている様だ。流石は世界最強の軍人様だ。

「そうだ。俺が世界最強でお馴染み、ケイ・ペンドルトンだ。そう警戒するな。別にお前を殺しに来たわけじゃあない」

「だったら、何で・・・・・・? 」

「この化け物をひっ捕えに来たんだ。東海城砦では結局コイツを捕獲できなかったからな」

 ケイはおもむろに煙草を咥えて火をつけた。そして、ため息と共に煙を大きく吐き出す。

「なんだ・・・・・・。それなら別に・・・・・・」

「どうした? 何か気になることでもあるのか? 」

「・・・・・・いや。だとしても、俺のことはほっといても良いのか? てっきり、また殺しに来たんかと・・・・・・」

「殺さないさ。上の方針で破壊者ドデカフォニーとその恋人には手出し無用ってことになってんだ。どうにも、国防軍は破壊者ドデカフォニーと喧嘩する気が失せちまったらしい。その内、偽物をでっち上げて適当に処理するんだろうよ」

「フン、国防軍らしいやり方だな」

「まぁな」

 そんなことを話していると、倒れているリンがピクリと動いた。東海城砦の時と言い、やはり尋常じゃない生命力をしている。

「やっぱり、まだ息があるな」

「コイツをどうする気だ? 」

「応援を呼んであるから、そいつらに処理してもらう。こんな、デタラメな回復能力があっては、俺1人じゃ流石に処理できない。それよりお前、彼女がいる身でなんちゅうプレイしてんだ・・・・・・」

「あ・・・・・・」

 ケイに言われて、俺は自分が全裸だったことを思い出した。

「いや、違うんだ。これはドデカフォニー教会の連中にやられたんだ」

 俺はケイに、此処に至るまでの経緯を全て話した。自分の潔白を証明するために。
 一通り説明し終えると、ケイも納得した様で、俺にスーツの上着を貸してくれた。

「成る程な・・・・・・。丁度いい、お前も一緒に来い」

「来いって、何処に・・・・・・」

「ドデカフォニー教会だよ。この化け物をひっ捕えるついでに、今日はドデカフォニー教会を潰しに来たんだ。忙しいったらあらゃしない」

 マジかよ。てことは、味方になってくれるってことか? この人類最強の男が?

「協力してくれるってことか? 」

「協力しろってことだ。お前が国防軍にな」

「マジか! 心強いな! 」

 意外な展開になったが、この男がいれば千人力だ。武装した教会の連中とも十分に戦える。寧ろ、戦力としてはややオーバーかもしれない。

「ちょっと、私も連れてってもらって良い? 」

 俺らの会話を聴いていたリンリーが言った。

「アンタは、リンリー・バーベリ巡査部長だな? 」

「私を知ってるの? 」

「ヨコハマのワイアット・アープの名は国防軍でも有名だ。セクハラ上司をぶん殴って、ゴテンバ署に左遷、そんでもって刑事から巡査部長に格下げか・・・・・・」

 そんなに有名人だったのか。てか、ヨコハマのワイアット・アープの異名ってマジだったのか・・・・・・。

「ドデカフォニー教会に何か用があるのか? このまま下山しても構わないんだぞ? 」

「弟がドデカフォニー教会にいるの。アイツを私の手で連れ戻してやりたいのよ」

 リンリーは真剣な表情で言った。それを聞いて、ケイは少し考えてから返事をした。

「まぁ、良いだろう。ただし、自分の身は自分で守れよ」

「よっしゃ! 」

 ケイに了承され、リンリーはガッツポーズした。彼としては、彼女は戦力にはならずとも邪魔にならない、程度には考えているのだろう。

「良かったな」

「ええ! 漸く、弟を取り戻すことができる」

 そうしている内に、応援の連中が到着した。
 応援の車両は大型のトラックと、装甲車5台とそこそこ大掛かりだ。

「ご苦労様です。これより、この化け物をゴテンバの陸軍基地に移送します」

 若い軍人の青年がケイに駆け寄って言った。

「ご苦労。この化け物が輸送中に目覚める可能性は? 」

「ゼロ・・・・・・、とは言い切れませんが、麻酔や催眠装置など、対生物兵器用の設備で拘束しますので、まず安心かと・・・・・・」

「そうか。俺はちょっくら教会を潰してくる。お前らも気をつけてな」

「はっ! 」
 
「さて、俺らも行くか・・・・・・」

 そう言って、ケイはリンが拘束されているトラックに背を向けて歩き出した。

「ちょっと待ってくれ。そろそろ、ちゃんと服着たいんだけど。予備の軍服とか無えのかよ? 」

「服? あぁ・・・・・・、この先で調達できる。着いて来い」

 言われるがまま彼に着いていくと、教団の関所が見えてきた。どうやら、主要な道路にそれぞれ配置しているらしい。

「流石に臨戦体制か・・・・・・」

 ケイは関所で武装した信者達を見て言った。信者達は先程の騒ぎで、かなり神経質になっているようだ。

「どうするんだ? 」

「そこでちょっと待ってろ。すぐ終わる」

 そう言うと、ケイは関所へと堂々と正面から向かっていった。

「おい! 貴様、止まれ! 」

 信者の1人が怒号を上げ、ケイに銃を構える。しかし、ケイは全く動じていない。

2分間の沈黙トゥーミニッツ・サイレンス・・・・・・」
 
 ケイがそう言った次の瞬間には信者達は皆地面に倒れていた。

 ケイの時間停止の能力チートだ。幾ら武装していても、彼の能力チートは初見では絶対に対策出来ない。無論、知っていても対策出来ないが・・・・・・。

「これを着て潜り込むぞ。第3新東京市へ」

 ケイは倒れた信者の服を脱がそうとする。どうやら、信者に変装して乗り込む気らしい。

「これが世界最強の軍人・・・・・・。ヤバいね・・・・・・」

「あぁ、ヤバいな」

 リンリーはこの一瞬の出来事を見て呆然としている。彼の能力チートはその正体が時間停止であることを知っていないことには、何が起こったのか全く把握出来ない。

 つくづく、この怪物から逃げ切れたのが奇跡のようだと俺は思った。
 
 


 
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