性別多様性

夢遊 優

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#0 幼少期

#0ー5 お泊まり体験! 前編

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「行ってきまーす」と言いつつ「私」は、泣いていた。2泊3日も家族に会えないからだ。
「いちは、せんせいの言う事、よく聞いてね。「うわ~。イヤ~」
泣き止んだのは、幼稚園についてからだった。

「みんなー。今日からお泊まり体験が始まりまーす。
準備はいいかなー?」「はーい」
返事をしたのは、いちは以外だった。

移動中のバスの中、桜先生に話しかけられた。
「いちはさん」
「ううん(泣) なーに? 桜先生」
「お泊まり体験、怖いの?」「……」
「もしかして『Lover』に会えないのが、寂しいの?」「うん」
「そっか…。でもね、いちはさん」「?」
「お泊まり体験を絶対に楽しいからね。
いつもと違うところをみんなで歩いて、
みんなではしゃいで、みんなでお料理してとかね…。
とにかく、いろんなことができるから。
絶対に楽しいし、怖くないから。
みんなが一緒だから」
「うん…ううん…」

その後、山に着くまで、桜先生に手を握っててもらった。
だんだん涙が止まってきて、少し楽しみな気持ちが湧いてきた時だった。
「せんせー!
『僕』たちあそこに泊まるの?」
そうよ、みんなであそこに泊まるの」
(どんなとこかな…)
「わぁ~」っとおもわず声が漏れた。
「山の緑」「透明な川」「鳥の鳴き声」
全部きれいだった。
絵本で見たのとは全く違う景色がそこにあった。

荷物の積み下ろしと運び込みがおわり、
お昼ご飯を待つ時間、守と一緒に『私』は原っぱにいた。
「すごくきれいだな~」
「『僕』もそう思う!なんかすっごい!」
景色に完全に見惚れていたら、
誰かがベルを鳴らした。
「ご飯食べるぞー。みんな集合だー」
大きな声とおいしそうな匂いがとどいた。

「おいしい!」と言うみんなの声で、
食堂はとてもにぎやかだった。
「私」と守も、ご飯を楽しんだ。

夕方からはとても静かだった。
秋だったから、太陽も早くに沈んだ。
本当に楽しい一日だった。
だけどこれからだったんだ。
本当に楽しくなるのは。
「みんな、明日はもっと楽しいことをするぞ!」
そう先生が言っていた。
みんな、瞳を輝かせつつも、
深い眠りに落ちていった。
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