44 / 162
第四十四話 冒険者ギルド?
しおりを挟む
「何しに来た?ここは子供の来るところじゃないぞ?」
あ、これ、演技してるのか。
そういう演出なのね。
「えっと、冒険者登録をしたいんですけど」
「ほほう?その歳で冒険者か!中々やるようだな。よし、登録してやるぜ。手を出してみな。ほれこのリストバンドが冒険者の証だ。退館する時には出口のバンド入れに入れてくれよな」
スタッフもノリノリだね。
冒険者登録はこの時にマナ紋を読み取ってるんだね。
あれ?次に来た時はこのバンドはどうやって受け取るんだ?
と思ったら2回目以降の時には入口でバンドも渡されるみたいだ。
ここはマナ紋の登録がメインなんだ。
さて、登録も済んだしダンジョンに行ってみようかね。
「なぁ待ちな!お前さん達、ここが初めてならクエストをやってみないか?そこのクエストボードにはお前さん達初心者でも出来るクエストがたくさんあるぜ」
え、いいです。
散々クエストはやりました。
いまさら体験も無いよ。
「やってみましょうよ。何事も経験よ」
「にいちゃん、これ取っていい?」
ああ、マルモやブロンはクエストの受け付けとかやった事ないからしてみたいのか。
ブロンにクエストボードに貼られている紙を剥がさせる。
番号を用紙に書くんじゃ無いんだ。
「えい!」
ビリッとクエストの書かれた紙を剥がすとカウンターに持っていく。
ラナも何か選んでいた。
何かやるつもりみたいだ。
「おお?いいクエストを選んだみたいだな?これならそこの扉から入るんだぞ。中の説明書きをよく読んでな」
「はーい」
扉には「レーゲンの森」と書いてあった。
僕が生まれ育った村とマルネの町の間にある森じゃないか。
懐かしい。
アカガネ狼と戦ったっけな。
あの時は大変だったけど、今なら余裕だな。
ここにはブロンと僕、フィアが入る。
ラナはマルモとレティと一緒に別のクエストの部屋に入ったようだ。
部屋の中は本物の木が植えられていて、森の中にいるような雰囲気を出していた。
壁にも森の風景や天井には青空が描かれていて、レーゲンの森を思い出させる。
違和感と言えば部屋の真ん中に置いてある、色とりどりのボールかな。
説明を読むと、木の隙間や草の中から飛び出してくる魔物を、このマナボールと名付けられた、ただのゴムボールを当てる、というのがクエストらしい。
「えっと、何処に出てくるか分からないみたいだから、それぞれ三方向を担当しようか」
「うん!」
「ええ、わかったわ」
ウィンドウに「クエスト開始」の文字が浮かび、周りの草むらからクロモリウサギが飛び出してくる。
あ、いや、アルメルウサギかな?
見た目がただのウサギのぬいぐるみだから区別つかないや。
どっちだとしても、この僕のマナボールで狩ってやる!
えいっ。
あまり本気で投げるとゴムボールが破裂しそうだから、ここはそっとね。
アルメル、じゃなくてクロモリウサギのお腹のあたりに付いている的のような丸い板にマナボールがポコッと当たるとウィンドウには「当たり!経験値が1増えた!」と表示される。
ああ、うん。そうだね。
いい経験をしているよ。
次々とウサギやら小型の魔物やらが飛び出してくるので、ポコポコとマナボールを当てていく。
これなら身体能力も知覚能力も普段のままで、問題なさそう。
隣をチラッとみると、ブロンが懸命にゴムボールをぬいぐるみに当てようとしていたけど、中々当たらないみたいだ。
ええええ、ブロン、レベル上げてたよね。
こういう命中精度ってレベル関係ないのかな?
反対を見るとフィアが顔を真っ赤にしてマナボールをぶん投げていた。
と言うか、まともに真っ直ぐ飛んでいない。
うわっ、何でこっちに飛んで来るのさ。
ほとんど真後ろだよ?
はっ!!もしや、エルツ族は投げるのが苦手?
それともこの二人が下手なだけ?
「ふうー!ふうー!何これ!当たらないじゃない!どういう仕様で作ってるのかしら!アンチマナシールドとか絶対防御空間とか張ってあるのよね?リン!どうなの!」
「………違うと思います………」
「リンは私の投げ能力を疑うのね」
「………えっと、このクエストは上級者向けなのかなあ、なんて………」
「そう、それなら仕方ないわ。あとはリンに任せたわ。必ずクエスト達成するのよ」
ひぃぃ、最近フィアは僕に厳しく接してくるような気がする。
何か嫌われる事をしちゃったんだろうか。
出来るだけラナやレティと話して、フィアには近寄らないようにしてるんだけどな。
とにかくここはクエスト達成の為に、僕が頑張らないと。
他の人を助けるんじゃなくて、自分が頑張るのかぁ。
まあ、ゲームだし、仕方ないか。
フィアの範囲も含めて僕がどんどん当てていく。
ブロンはさっきから少しずつ当たり始めてきて、楽しそうなので放っておく。
ちょっとだけ知覚能力を上げて、百発百中でどんどん経験値を上げていく。
よし、後半はほとんど当てたぞ。
魔物が出てこなくなった。
終わりかな?
冒険者が参加中のためハードモードに移ります
何これ。
うわっ、パイライトタイガーとかスタシルトカゲとかちょっと強そうな魔物が出てきた。
マナボール一個じゃ倒れない!
3回当てたらようやく倒せた。
何だよこれ!レーゲンの森にこんなのいないよ?
しかも、魔物がちょっとだけ顔を出したらすぐに引っ込む。
的の部分なんてほんの一瞬だけしか見えない。
「あら、リンは私のお願いは聞いてくれないのかしら」
やるよ!やりますよ!
フィアの為なら何でもやるって!
知覚能力は最大に引き上げる。
身体能力も投げた勢いでゴムボールを破裂させない程度に上げる。
あ、そういえばレベルが上がって操作できるようになったこの能力の上限だけど、投げて当てるっていうのは無いな。
投げるというのはレベルに関係ないんだな。
次々と現れる中級の魔物のぬいぐるみにゴムボールを一度に3個ずつ当てていく。
片手に3つずつボールを持って、少し角度を変えてボール同士が当たらないように上手く的に命中させる。
あ、ゴムボールが割れちゃった。
強すぎたか。
よし、ゴムボールにマナ弾を込めて投げてやる。
これなら本物のマナでボールが強化される筈。
ちょっと強めに投げてみるけど、大丈夫だ。ゴムボールも魔物のぬいぐるみも、問題ない。
ちょっとだけ、魔物のぬいぐるみがベコベコになってるけど気にしない。
いいぞ。強化された分早く投げれるから、5、6体の魔物が同時に出てきても全て3発ずつ当てて、まだ余裕がある。
ふふふふ、何だこれ結構楽しいじゃないか。
ダダダ、ダダダ、ダダダと3個ずつ弾が当たる音だけが鳴り響く。
お、終わったか?
クエスト終わり 獲得経験値は3752でした
そんなに出てきたのか、魔物。
これでクエストは達成したのかな。
さっきのギルドに戻ってみよう。
「私を放って楽しそうだったわね」
「いや、どうしろと。フィアの為に頑張ったんだよ」
「…………そう。ならいいわ。…………………ありがと」
え?何?今ありがとうって言った?
フィア、熱がある?
じゃなくて。
さっきまでのトゲトゲしたのは無くなって、またいい感じになってくれたのかな?
懺悔室の時みたいに、少し距離が近づいた感じになってくれたかな?
それならこのクエスト、思いっきり頑張って良かったよ。
「ブロンは楽しかったかしら?」
「うん!最後はにいちゃんの真似をしたら当たるようになってきた!面白かった!」
「そう、良かったわね」
あれ?恥ずかしさを誤魔化してる?
気のせいか顔もほんのり赤く染まってるような。
「ジロジロ見ないでって」
「す、すみません!」
さっきのギルドのカウンターに行くと記録はもう届いているみたいで、クエスト達成の報酬が既に用意されていた。
「おお、よくこの難しいクエストをこなしてきたな!さすがだぜ!これが今回の報酬だ!ほらよ」
3人にそれぞれメダルが渡される。
今回は初心者向けだったみたいで、銅色のメダルだった。
ここではこれを集めていく方式なのだろうか。
「このクエストはまた挑戦できるぜ。次はウルトラハードモードになるけどな。その後はナイトメアモードも待ってるぜ」
何その怖い名前のモードは。
今まで何処に隠れていたのか、壁の隙間からラナ達が出てくる。
本当に何処に隠れてんだよ。
「いやあ、遅かったね、君達。私達なんか、あっという間にクエストコンプリートしてほら、このメダルの色!どう?どう?」
「ラナ、恥ずかしいわよ」
ラナ達は僕らより早くクエストを終えてメダルを貰っていたようだ。
首から提げているメダルは銀色に輝いていた。
「途中から冒険者モードに切り替わった時は正直焦ったわ。でも、3人の息を合わせて苦難を乗り越えたわ!」
「そ、そう。僕も大概楽しんでるよなって思ったけど、ラナ達は更に輪を掛けて満喫してるね」
「達は要らないわよ。全力で楽しんでるのはラナだけだから」
まあ、概ね、全員思っていたよりは、来てよかったと感じていたと思う。
さあ、お待ちかねのダンジョンだ!
通路の真ん中を進むと「闇と破滅のダンジョン入口」と書かれた部屋があった。
気のせいか、子供向けにしては名前が強烈なような。
入り口には説明書きがあって、そこには中での注意が書いてあった。
中にいる魔物は本物そっくりに作られているらしい。
だからといって本物の剣や魔法で実際に攻撃しないようにと注意があった。
マナ弾が撃てる人は魔物に当てると倒せるらしい。
ただし、本当に生き絶える訳ではなく、やられたフリをしているだけだから、そのまま放っておいて欲しいのだという。
どういう意味だ?
マナ弾が使えない人は入り口で配られる柔らかな素材の「なんちゃって剣」で斬ると、これまた倒れたフリをするので、次の魔物に向かって欲しいのだそうだ。
やっぱり意味がわからん。
魔物は本物そっくりじゃなくて本物なのか?
「これは大丈夫なところなんだろうか」
「この説明を見る限りでは、平和そうだからいいんじゃないの?」
念のため全員なんちゃって剣を持ってダンジョンの中に足を踏み入れる。
部屋、じゃなくてダンジョンの中は照明、じゃなくて明かりとして松明、に似た形の光る何かで薄暗く照らされていて、あまり奥の方は見えない。
最初は普通の通路の壁に岩の絵が描かれていただけだったけど、奥に進んでいくと段々と本物の岩が置かれ始めていて中々に凝っていた。
「リ、リン兄さん。裾に捕まっていい?」
「うん、いいよ、ってラナとレティも捕まるの?」
「だって怖いじゃない」
「暗いのは苦手なのよ」
「フィアも捕まっていいよ?」
「…………」
何か言ってよ。怖いよ。
思い切ってみたけど、言うんじゃなかった。
お、ブロンは平気そうだね。
先頭を堂々と歩いてる。
ぴちょんぴちょんと天井の岩から水が垂れてくる。
凝ってるな。
いつの間にか松明風の明かりは無くなって、ヒカリゴケのような物が辺りを照らしていた。
目が慣れたのかこのヒカリゴケが明るいのか、さっきより明るく感じて来た。
「あ、あれ!あの岩の陰に何か居ない?」
「居るわね。耳が長いからなんとかウサギじゃない?」
確かに少し前の方の岩陰からウサギのような耳だけがのぞいている。
「えっと、みんな一応剣を構えておいてね。僕が横から回り込んでそっちに追いやってみるよ」
「わかったわ。気を付けてね」
気を付ける必要がある場面なんだろうか。
でも、異様な緊張感があるな。
そっと岩の横に回って、覗き込む。
居た。確かにウサギだ。クロモリウサギだ。
さっきのアルメルかクロモリか判別出来ないぬいぐるみじゃない。
ちゃんとクロモリウサギと見てわかる。
いや、これ本物だよ。
耳動いてるし。
そもそも、追いやるって、動くの前提じゃないか。
完全に後ろに回ってから、声を出してみる。
「わっ!」
ビクッと驚いたクロモリウサギは跳ね上がって、みんなの方に走っていった。
「来た!どうしよう、こんな剣で倒せるの?」
「やるしかないわよ!えいっ!」
レティが振ったなんちゃって剣がクロモリウサギに当たると「え?」と言う顔をクロモリウサギがしたかと思うと、キョロキョロと周りを見渡し、もう一度レティの持つ剣をじっと見つめた。
そして、よいしょ、と言う掛け声が聞こえてくるような動きで寝転び、両手を上げて目を閉じてしまった。
「………」
「………」
「あ、倒したって事ね」
「「「ああ」」」
え?何?魔物が演じてくれてるの?
ある意味凄くないか?
しかも、魔物が魔物役してるんだ。
そりゃそっくりだ。
何を言ってるんだ僕は。
まあ、なんだか、ルールというか、法則というか、分かってきたから、楽しめそうかな。
むしろこの後、本物のクエストが出来るか心配になってきたよ。
少なくともクロモリウサギはもう狩れないと思う。
あ、これ、演技してるのか。
そういう演出なのね。
「えっと、冒険者登録をしたいんですけど」
「ほほう?その歳で冒険者か!中々やるようだな。よし、登録してやるぜ。手を出してみな。ほれこのリストバンドが冒険者の証だ。退館する時には出口のバンド入れに入れてくれよな」
スタッフもノリノリだね。
冒険者登録はこの時にマナ紋を読み取ってるんだね。
あれ?次に来た時はこのバンドはどうやって受け取るんだ?
と思ったら2回目以降の時には入口でバンドも渡されるみたいだ。
ここはマナ紋の登録がメインなんだ。
さて、登録も済んだしダンジョンに行ってみようかね。
「なぁ待ちな!お前さん達、ここが初めてならクエストをやってみないか?そこのクエストボードにはお前さん達初心者でも出来るクエストがたくさんあるぜ」
え、いいです。
散々クエストはやりました。
いまさら体験も無いよ。
「やってみましょうよ。何事も経験よ」
「にいちゃん、これ取っていい?」
ああ、マルモやブロンはクエストの受け付けとかやった事ないからしてみたいのか。
ブロンにクエストボードに貼られている紙を剥がさせる。
番号を用紙に書くんじゃ無いんだ。
「えい!」
ビリッとクエストの書かれた紙を剥がすとカウンターに持っていく。
ラナも何か選んでいた。
何かやるつもりみたいだ。
「おお?いいクエストを選んだみたいだな?これならそこの扉から入るんだぞ。中の説明書きをよく読んでな」
「はーい」
扉には「レーゲンの森」と書いてあった。
僕が生まれ育った村とマルネの町の間にある森じゃないか。
懐かしい。
アカガネ狼と戦ったっけな。
あの時は大変だったけど、今なら余裕だな。
ここにはブロンと僕、フィアが入る。
ラナはマルモとレティと一緒に別のクエストの部屋に入ったようだ。
部屋の中は本物の木が植えられていて、森の中にいるような雰囲気を出していた。
壁にも森の風景や天井には青空が描かれていて、レーゲンの森を思い出させる。
違和感と言えば部屋の真ん中に置いてある、色とりどりのボールかな。
説明を読むと、木の隙間や草の中から飛び出してくる魔物を、このマナボールと名付けられた、ただのゴムボールを当てる、というのがクエストらしい。
「えっと、何処に出てくるか分からないみたいだから、それぞれ三方向を担当しようか」
「うん!」
「ええ、わかったわ」
ウィンドウに「クエスト開始」の文字が浮かび、周りの草むらからクロモリウサギが飛び出してくる。
あ、いや、アルメルウサギかな?
見た目がただのウサギのぬいぐるみだから区別つかないや。
どっちだとしても、この僕のマナボールで狩ってやる!
えいっ。
あまり本気で投げるとゴムボールが破裂しそうだから、ここはそっとね。
アルメル、じゃなくてクロモリウサギのお腹のあたりに付いている的のような丸い板にマナボールがポコッと当たるとウィンドウには「当たり!経験値が1増えた!」と表示される。
ああ、うん。そうだね。
いい経験をしているよ。
次々とウサギやら小型の魔物やらが飛び出してくるので、ポコポコとマナボールを当てていく。
これなら身体能力も知覚能力も普段のままで、問題なさそう。
隣をチラッとみると、ブロンが懸命にゴムボールをぬいぐるみに当てようとしていたけど、中々当たらないみたいだ。
ええええ、ブロン、レベル上げてたよね。
こういう命中精度ってレベル関係ないのかな?
反対を見るとフィアが顔を真っ赤にしてマナボールをぶん投げていた。
と言うか、まともに真っ直ぐ飛んでいない。
うわっ、何でこっちに飛んで来るのさ。
ほとんど真後ろだよ?
はっ!!もしや、エルツ族は投げるのが苦手?
それともこの二人が下手なだけ?
「ふうー!ふうー!何これ!当たらないじゃない!どういう仕様で作ってるのかしら!アンチマナシールドとか絶対防御空間とか張ってあるのよね?リン!どうなの!」
「………違うと思います………」
「リンは私の投げ能力を疑うのね」
「………えっと、このクエストは上級者向けなのかなあ、なんて………」
「そう、それなら仕方ないわ。あとはリンに任せたわ。必ずクエスト達成するのよ」
ひぃぃ、最近フィアは僕に厳しく接してくるような気がする。
何か嫌われる事をしちゃったんだろうか。
出来るだけラナやレティと話して、フィアには近寄らないようにしてるんだけどな。
とにかくここはクエスト達成の為に、僕が頑張らないと。
他の人を助けるんじゃなくて、自分が頑張るのかぁ。
まあ、ゲームだし、仕方ないか。
フィアの範囲も含めて僕がどんどん当てていく。
ブロンはさっきから少しずつ当たり始めてきて、楽しそうなので放っておく。
ちょっとだけ知覚能力を上げて、百発百中でどんどん経験値を上げていく。
よし、後半はほとんど当てたぞ。
魔物が出てこなくなった。
終わりかな?
冒険者が参加中のためハードモードに移ります
何これ。
うわっ、パイライトタイガーとかスタシルトカゲとかちょっと強そうな魔物が出てきた。
マナボール一個じゃ倒れない!
3回当てたらようやく倒せた。
何だよこれ!レーゲンの森にこんなのいないよ?
しかも、魔物がちょっとだけ顔を出したらすぐに引っ込む。
的の部分なんてほんの一瞬だけしか見えない。
「あら、リンは私のお願いは聞いてくれないのかしら」
やるよ!やりますよ!
フィアの為なら何でもやるって!
知覚能力は最大に引き上げる。
身体能力も投げた勢いでゴムボールを破裂させない程度に上げる。
あ、そういえばレベルが上がって操作できるようになったこの能力の上限だけど、投げて当てるっていうのは無いな。
投げるというのはレベルに関係ないんだな。
次々と現れる中級の魔物のぬいぐるみにゴムボールを一度に3個ずつ当てていく。
片手に3つずつボールを持って、少し角度を変えてボール同士が当たらないように上手く的に命中させる。
あ、ゴムボールが割れちゃった。
強すぎたか。
よし、ゴムボールにマナ弾を込めて投げてやる。
これなら本物のマナでボールが強化される筈。
ちょっと強めに投げてみるけど、大丈夫だ。ゴムボールも魔物のぬいぐるみも、問題ない。
ちょっとだけ、魔物のぬいぐるみがベコベコになってるけど気にしない。
いいぞ。強化された分早く投げれるから、5、6体の魔物が同時に出てきても全て3発ずつ当てて、まだ余裕がある。
ふふふふ、何だこれ結構楽しいじゃないか。
ダダダ、ダダダ、ダダダと3個ずつ弾が当たる音だけが鳴り響く。
お、終わったか?
クエスト終わり 獲得経験値は3752でした
そんなに出てきたのか、魔物。
これでクエストは達成したのかな。
さっきのギルドに戻ってみよう。
「私を放って楽しそうだったわね」
「いや、どうしろと。フィアの為に頑張ったんだよ」
「…………そう。ならいいわ。…………………ありがと」
え?何?今ありがとうって言った?
フィア、熱がある?
じゃなくて。
さっきまでのトゲトゲしたのは無くなって、またいい感じになってくれたのかな?
懺悔室の時みたいに、少し距離が近づいた感じになってくれたかな?
それならこのクエスト、思いっきり頑張って良かったよ。
「ブロンは楽しかったかしら?」
「うん!最後はにいちゃんの真似をしたら当たるようになってきた!面白かった!」
「そう、良かったわね」
あれ?恥ずかしさを誤魔化してる?
気のせいか顔もほんのり赤く染まってるような。
「ジロジロ見ないでって」
「す、すみません!」
さっきのギルドのカウンターに行くと記録はもう届いているみたいで、クエスト達成の報酬が既に用意されていた。
「おお、よくこの難しいクエストをこなしてきたな!さすがだぜ!これが今回の報酬だ!ほらよ」
3人にそれぞれメダルが渡される。
今回は初心者向けだったみたいで、銅色のメダルだった。
ここではこれを集めていく方式なのだろうか。
「このクエストはまた挑戦できるぜ。次はウルトラハードモードになるけどな。その後はナイトメアモードも待ってるぜ」
何その怖い名前のモードは。
今まで何処に隠れていたのか、壁の隙間からラナ達が出てくる。
本当に何処に隠れてんだよ。
「いやあ、遅かったね、君達。私達なんか、あっという間にクエストコンプリートしてほら、このメダルの色!どう?どう?」
「ラナ、恥ずかしいわよ」
ラナ達は僕らより早くクエストを終えてメダルを貰っていたようだ。
首から提げているメダルは銀色に輝いていた。
「途中から冒険者モードに切り替わった時は正直焦ったわ。でも、3人の息を合わせて苦難を乗り越えたわ!」
「そ、そう。僕も大概楽しんでるよなって思ったけど、ラナ達は更に輪を掛けて満喫してるね」
「達は要らないわよ。全力で楽しんでるのはラナだけだから」
まあ、概ね、全員思っていたよりは、来てよかったと感じていたと思う。
さあ、お待ちかねのダンジョンだ!
通路の真ん中を進むと「闇と破滅のダンジョン入口」と書かれた部屋があった。
気のせいか、子供向けにしては名前が強烈なような。
入り口には説明書きがあって、そこには中での注意が書いてあった。
中にいる魔物は本物そっくりに作られているらしい。
だからといって本物の剣や魔法で実際に攻撃しないようにと注意があった。
マナ弾が撃てる人は魔物に当てると倒せるらしい。
ただし、本当に生き絶える訳ではなく、やられたフリをしているだけだから、そのまま放っておいて欲しいのだという。
どういう意味だ?
マナ弾が使えない人は入り口で配られる柔らかな素材の「なんちゃって剣」で斬ると、これまた倒れたフリをするので、次の魔物に向かって欲しいのだそうだ。
やっぱり意味がわからん。
魔物は本物そっくりじゃなくて本物なのか?
「これは大丈夫なところなんだろうか」
「この説明を見る限りでは、平和そうだからいいんじゃないの?」
念のため全員なんちゃって剣を持ってダンジョンの中に足を踏み入れる。
部屋、じゃなくてダンジョンの中は照明、じゃなくて明かりとして松明、に似た形の光る何かで薄暗く照らされていて、あまり奥の方は見えない。
最初は普通の通路の壁に岩の絵が描かれていただけだったけど、奥に進んでいくと段々と本物の岩が置かれ始めていて中々に凝っていた。
「リ、リン兄さん。裾に捕まっていい?」
「うん、いいよ、ってラナとレティも捕まるの?」
「だって怖いじゃない」
「暗いのは苦手なのよ」
「フィアも捕まっていいよ?」
「…………」
何か言ってよ。怖いよ。
思い切ってみたけど、言うんじゃなかった。
お、ブロンは平気そうだね。
先頭を堂々と歩いてる。
ぴちょんぴちょんと天井の岩から水が垂れてくる。
凝ってるな。
いつの間にか松明風の明かりは無くなって、ヒカリゴケのような物が辺りを照らしていた。
目が慣れたのかこのヒカリゴケが明るいのか、さっきより明るく感じて来た。
「あ、あれ!あの岩の陰に何か居ない?」
「居るわね。耳が長いからなんとかウサギじゃない?」
確かに少し前の方の岩陰からウサギのような耳だけがのぞいている。
「えっと、みんな一応剣を構えておいてね。僕が横から回り込んでそっちに追いやってみるよ」
「わかったわ。気を付けてね」
気を付ける必要がある場面なんだろうか。
でも、異様な緊張感があるな。
そっと岩の横に回って、覗き込む。
居た。確かにウサギだ。クロモリウサギだ。
さっきのアルメルかクロモリか判別出来ないぬいぐるみじゃない。
ちゃんとクロモリウサギと見てわかる。
いや、これ本物だよ。
耳動いてるし。
そもそも、追いやるって、動くの前提じゃないか。
完全に後ろに回ってから、声を出してみる。
「わっ!」
ビクッと驚いたクロモリウサギは跳ね上がって、みんなの方に走っていった。
「来た!どうしよう、こんな剣で倒せるの?」
「やるしかないわよ!えいっ!」
レティが振ったなんちゃって剣がクロモリウサギに当たると「え?」と言う顔をクロモリウサギがしたかと思うと、キョロキョロと周りを見渡し、もう一度レティの持つ剣をじっと見つめた。
そして、よいしょ、と言う掛け声が聞こえてくるような動きで寝転び、両手を上げて目を閉じてしまった。
「………」
「………」
「あ、倒したって事ね」
「「「ああ」」」
え?何?魔物が演じてくれてるの?
ある意味凄くないか?
しかも、魔物が魔物役してるんだ。
そりゃそっくりだ。
何を言ってるんだ僕は。
まあ、なんだか、ルールというか、法則というか、分かってきたから、楽しめそうかな。
むしろこの後、本物のクエストが出来るか心配になってきたよ。
少なくともクロモリウサギはもう狩れないと思う。
0
あなたにおすすめの小説
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる