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第百七話 指輪
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馬車はマルブランシュ共和国を順調に進んでいる。
途中野営を一回挟んだけど、ユーリの食事は美味しかったし、僕とディアは馬車がそのまま寝室になるという優れものだったので、そこで、眠らせて貰って快適な野営だった。
真ん中に仕切りが付けられて、2部屋になるので、小さな個室として使えた。
これも、クラウゼンさんの配慮らしい。
騎士団の人達はテントを2張持ってきていて、馬車を挟み込むように幕営していた。
今はテントを片付け、出発の準備をしている最中だ。
「あっちの方から、馬車が来るっすね。何でしょ、大きな馬車っすね~」
「あれは商人だな。御者の顔が商人顔だよ。だが、何だ?あんなに大きな馬車ってのは。行商ってより、何処かに大量の仕入れに行ってたんかな?それか、これから売りに行くのか」
「よく見えるっすね。私、御者さんの顔はゴマ粒にしか見えませんよ」
カティとファルコさんが話している声が外から聞こえてくる。
ちなみに僕はまだ眠かったので、馬車の中でゴロゴロしている。
何もしなくてもいいのは楽だな。
昨日手伝おうとしたら、呼び方はちゃん付けでも、お偉い人なのは変わりないんですから、手伝いなんて絶対させられません!バレたら私の首が飛びます!と半泣きで言われたら、何もせず任せるしかなかった。
同じ理由でディアも暇な時間を潰す事を強いられていた。
しばらくして、さっきの話に出てきていた馬車の音が近づいたきた。
「どうも、昨晩は野営のようで、ご苦労様でございます。大変だった事でしょう。お疲れのお体に、回復のポーションはいかがでしょう?」
「あ、いや、起きたばっかりにポーションはいらんかな」
「そうでした、そうでした!ですが、休んだ割には体が痛かったり、あまり眠れなかったりしませんか?」
「ま、まあ、そうだな、テント泊だからな。そんなもんだ」
「では、我が商会が自信を持ってお届けする!この魔法の香油はいかがでしょうか!寝る前に一滴垂らして、火魔法でじんわり温めれば、効果テキメン!快適な眠りをお届けします!」
「お、おう」
「この魔法の香油!5本セットで10000フォルクのところ!今ならなんと!7980フォルク!7980フォルクでのご提供です!」
「おお!凄い!安いっすよ!ファルコさん!」
「う、うん、そうだな」
「しかも、しかも!今ご覧のお客様だけの特別セット!今ならこの回復ポーションを2本お付けして!お値段変わらずの!7980フォルク!お値段据え置き!これはお買い得!」
「ポーション付きですって!お値段スエオキですって!」
「おう!おう!そうだな!スエオキだな!」
何やってるんだか、、、。
(えっと。セラフの第一の翼、外の商人)
『第一の翼が対象の嘘を感知しました。・・・・』
やっぱりね。
外の二人が余計な買い物する前に止めに行くかあ。
「よいしょっと。はいごめんね。ちょっと話は聞かせてもらいましたよ」
「アリアちゃん、おはようございます!」
「アリア様おはようございます」
「凄いんすよ!アリアちゃん!なな何と!スエオキなんすよ!」
「意味分かってないよね、絶対」
「いやあ、お客様はお目が高い!この商品の価値を分かってらっしゃる!」
「いや、、、お目が高いような発言はまだしてないんだけど、、、まあいいか。これの価値はわかっているのは本当だし」
「あ!アリアちゃんもそう思います?凄いんすよね!」
「ははあ!流石高貴そうなお方だと思いましたよー!何処ぞのお姫様のようにお美しい貴女の為に!この魔法の香水はいかがでしょうか!ご自身のマナと混ざり合って、魔法効果で、男性を虜にする魅惑の香りに変化するのです!しかも、美白効果に顔痩せ効果まで付いてくるのです!」
『第一の翼が対象の嘘を感知しました。・・・・』
いや、うん。今のは魔法使わなくても分かったな。
それなのに、こんなに分かりやすい、偽商品なのに、何でコイツらはこうもアッサリ引っかかるかな。
バカティアだけじゃなく、アホファルコだったのかよ。
『警告!第一の翼を相殺する攻撃を受けています。物理アドレスを特定。アクセスを遮断しました。アクセス元をNICにて検索します。特定完了。アクセス元は魔女アーデルハイトの指輪と断定』
魔女アーデルハイト?!
何で魔女が出てくるんだ?
そう言えば、指輪って言ってたな。
ああ、あの商人の指にジャラジャラ付いている指輪のうちのどれかがアーデルハイトの指輪なのか。
「ああ、じゃあ、その香油と香水を買おうかな。でも、それってただのラベンダーの精油ですよね。こっちの香水はバラの精油だし。まあ、よく作られているみたいだし、合わせて1000フォルクなら買いますよ」
「う、、うぐっ、お、お買い上げ、あ、ありがとうございます」
「適正な価格だと思うけど、どうしました?」
「い、いえ。問題ございません。いやはや、流石お姫様、感服いたしました!お詫びの印にこの回復ポーションも更に5本お付けいたします」
「あ、それは、要らないな。元のポーションを5倍に薄めてますよね?効果ないのは持ってても邪魔なだけだし」
「いやあっはっはっ!これは参りました!こちらでは無くこのポーションをお納めくださいませ」
「そっちは本物みたいだから遠慮なくいただきますね」
奥から出してきたポーションは本物、というのは嘘では無いようだった。
しかし、まあ抜け目ない人だなあ。
「おじさんは嘘が通って当たり前って感じですよね?」
「あ、いやまあ、そうでしたかな?はっはっは」
「誤魔化せてないですよ?その指輪が自身のもとなんですね?」
「かああっ!これはこれは、今度こそ本気で参りました!そうです、この指輪を付けてから何を言っても、信じてもらえて、その後もずっと信じたままでいてくれるようで、何を売っても文句の一つも来なくなったのですよ」
どれなのかは分かっていなかったけど、おじさん自ら指から外して見せてくれた。
「へぇ、、、。それはどなたから貰ったのですか?」
「これは、この先の町で、魔女の格好をした占い師から貰ったのです。見た目に反して、占いがよく当たるんですよ。占ってもらった時に、私が人に信頼してもらえないって話になりまして、そしたらこの指輪の事を教えてくれたんですけど、何故かそのまま貰えてしまったんですよ」
「ふーん。ちょっと貸して貰えますか?」
「え、ええ、どうぞ」
「ちょっと指に着けますね?あ、後でちゃんと返します。私、鑑定スキルがあるんですよ。ああ、そうですね、これもう壊れてますよ」
「ええ?!ほ、、、本当ですか?!」
「はい。もう効力は無いようです。だってほら、この二人には効いていたけど、私には効かなかったでしょう?丁度、効果切れだったんですよ」
「はああ、そうだったんですね。あ、いや、どうも、すみませんでした」
まあ、壊れてなんか無いんだけどね。
この指輪は本当に嘘を見抜けなくする指輪なんだと思う。
アリアは鑑定スキルなんて使えないけど、おじさんは信じてしまうだろう。
なにせ、この指輪を着けたまま話した嘘なんだから。
指輪の効果でおじさんはこの嘘を本当の事と信じて疑わないはずだ。
だから、この指輪はおじさんの中ではもう壊れて使えない物になってしまったのだ。
こんなの使えない方がいいんだよ。
「ああ、でも、もう嘘をつかずに済むんですね。食っていくためにと言い訳を言って嘘を付いて儲けていましたが、それも出来なくなれば、踏ん切りが付くので良かったですよ」
おじさんもダメだって分かっては居たけど辞められなかったんだな。
「はああ、でも、これからまた売れない生活が待っていると思うと憂鬱です。最近はこの指輪のお陰で楽して稼いでいたから、これからどうなる事やら」
「大丈夫ですよ!おじさんのセールストークは面白いし分かりやすいし!真面目に商売をすれば、ちゃんと売れるようになりますって!」
「そ、、、そうです、かね?そう言われると、何となくそんな気がしてきました。ちょっと頑張ってみましょうかね!」
「ええ。きっとうまくいきますよ!あ、この指輪はどうせ使えないので、私が処分しておきますね」
「いいのですか?何から何まですみません」
商人のおじさんは、少し晴れやかな顔をして、馬車に乗って行ってしまった。
結局、1000フォルクで、ラベンダーとバラの香油と回復ポーション5本、魔女アーデルハイトの指輪を入手した事になる。
指輪は騙し取ってしまった形になるけど、おじさんも最初はこっちを騙そうとしてたんだし、おあいこだと思う。
「アリアちゃん。すみませんでした。何故かあの時はあの商人さんの言う事が、本当の事なんだろうなって思い込んでしまって、、、。今考えると、胡散臭い話なんだって分かるんすけど、、、」
「ああ、俺もあんなの欲しいとは思わない筈なのに、あの時は買わなきゃって思ってしまったな」
「まあまあ、次は気を付ければいいんじゃないのかな?それと、この香油はカティにあげるよ。寝る時に使ってね」
「え、、、、わ、私、今、アリアちゃんに誘われてます?」
「違うよ!?何でそうなるかな!」
「あ、違うんすね、ああ、びっくりしたあ」
「びっくりしたのはこっちだよ」
これ以上、フィアにまた増やした、って言われてたまるか。
あ、そうだ、この魔女の指輪を付けて、と。
「カティは僕の事は友達として好きなんだよ?分かったかな?」
「へ?、、、そ、そうっすね!お友達として大好きっす!今気づきました!私!アリアちゃんの事好きだったんです!」
あ、あれえ?
余計な事したかな。
変に好かれる前に、友達として好きになって貰えば良いかと思ったけど、何もしない方が良かったかも。
「さっき、女の子なのにアリアちゃんの事、本気で好きになりそうでどうしよう、って言ってた。バカティアなりに悩んでた」
あ、危なかったあ。
ユーリのこの情報が無かったら、さっきのを解除する所だった。
このまま、友達として好きでいてほしい。
マルブランシュの最南端にある町グラースまで来た。
ここから南側はドゥンケルハイトの森が広がっている。
魔物がたくさん出る森なので、このグラースは冒険者の町として栄えている。
ちなみに香水でも有名な町で香水の都とも呼ばれている。
さっきの商人のおじさんはこの町であの香水を仕入れたようだ。
この町に来ると、香水と冒険者の汗の匂いが混じって、なんとも言えない香りに包まれる、、、と冗談交じりに言われてるとか言われていないとか。
「さあ着いた!グラース!」
「着きましたね!くんくん、、、匂わない、、、っすね」
「町の入り口まで匂うわけない」
「いや、仄かに汗臭いぞ、、、」
ディア?それってさ。もしかして、、、。
「ボク達の匂いだったり?」
「そ、それだな、、、」
「はいは~い!先生っ!お風呂に入りたいっす!」
「誰が先生だよ。でも、最近野営ばっかりだったから、お風呂には入りたいね」
温泉、、、とまではいかなくても、個室のお風呂があれば、文句はないです。
汗でベトベトは嫌だ~。
「まったく、女子達はすぐ風呂だ、温泉だ~って、2、3日風呂なんて入らなくても変わんねえって」
「フォスとカナリスは軍人なんだから、それくらい平気で行動できないとだな」
その2人は誰のことだよって思ったら、フォスはユーリ、カナリスはカティの家名だった。
ユーリエ・フォスに、カティア・カナリス。
「軍人でも女の子は汗臭いのは嫌なんですう!」
「そうだそうだ」
「そう言うのが分からぬのが男共だからな。思考が雑なのだ」
ヒドイ言われようだな。
「あ、でも、アリアちゃんは、、、すんすん、はああん、いい匂い~!何で?!汗かいてるのに、お花畑にいるみたい!」
「人の匂いを嗅がないでよ」
「どれ、くんくん、ほあ。神聖な泉のほとりで月明かりを浴びながら、恋の歌を口ずさむ女神の匂い、、、」
何を急に言いだすんだ、ユーリは。
珍しく長セリフかと思えば、訳の分からない詩を詠み始めたぞ?!
「そんなにか?!我にも嗅がせろ」
「ちょっ、、、ディアもやめてよ。せ、せめて、風呂上がりにして!」
「お、俺も嗅いだら、、、」
「ダメに決まってるでしょ!!」
「変態」
「犯罪者がおるな」
ファルコさんがしょぼんとしてしまった。
まあ、そりゃそうだ。
女子の匂いを嗅ぎたい宣言なんて危なすぎる!
途中野営を一回挟んだけど、ユーリの食事は美味しかったし、僕とディアは馬車がそのまま寝室になるという優れものだったので、そこで、眠らせて貰って快適な野営だった。
真ん中に仕切りが付けられて、2部屋になるので、小さな個室として使えた。
これも、クラウゼンさんの配慮らしい。
騎士団の人達はテントを2張持ってきていて、馬車を挟み込むように幕営していた。
今はテントを片付け、出発の準備をしている最中だ。
「あっちの方から、馬車が来るっすね。何でしょ、大きな馬車っすね~」
「あれは商人だな。御者の顔が商人顔だよ。だが、何だ?あんなに大きな馬車ってのは。行商ってより、何処かに大量の仕入れに行ってたんかな?それか、これから売りに行くのか」
「よく見えるっすね。私、御者さんの顔はゴマ粒にしか見えませんよ」
カティとファルコさんが話している声が外から聞こえてくる。
ちなみに僕はまだ眠かったので、馬車の中でゴロゴロしている。
何もしなくてもいいのは楽だな。
昨日手伝おうとしたら、呼び方はちゃん付けでも、お偉い人なのは変わりないんですから、手伝いなんて絶対させられません!バレたら私の首が飛びます!と半泣きで言われたら、何もせず任せるしかなかった。
同じ理由でディアも暇な時間を潰す事を強いられていた。
しばらくして、さっきの話に出てきていた馬車の音が近づいたきた。
「どうも、昨晩は野営のようで、ご苦労様でございます。大変だった事でしょう。お疲れのお体に、回復のポーションはいかがでしょう?」
「あ、いや、起きたばっかりにポーションはいらんかな」
「そうでした、そうでした!ですが、休んだ割には体が痛かったり、あまり眠れなかったりしませんか?」
「ま、まあ、そうだな、テント泊だからな。そんなもんだ」
「では、我が商会が自信を持ってお届けする!この魔法の香油はいかがでしょうか!寝る前に一滴垂らして、火魔法でじんわり温めれば、効果テキメン!快適な眠りをお届けします!」
「お、おう」
「この魔法の香油!5本セットで10000フォルクのところ!今ならなんと!7980フォルク!7980フォルクでのご提供です!」
「おお!凄い!安いっすよ!ファルコさん!」
「う、うん、そうだな」
「しかも、しかも!今ご覧のお客様だけの特別セット!今ならこの回復ポーションを2本お付けして!お値段変わらずの!7980フォルク!お値段据え置き!これはお買い得!」
「ポーション付きですって!お値段スエオキですって!」
「おう!おう!そうだな!スエオキだな!」
何やってるんだか、、、。
(えっと。セラフの第一の翼、外の商人)
『第一の翼が対象の嘘を感知しました。・・・・』
やっぱりね。
外の二人が余計な買い物する前に止めに行くかあ。
「よいしょっと。はいごめんね。ちょっと話は聞かせてもらいましたよ」
「アリアちゃん、おはようございます!」
「アリア様おはようございます」
「凄いんすよ!アリアちゃん!なな何と!スエオキなんすよ!」
「意味分かってないよね、絶対」
「いやあ、お客様はお目が高い!この商品の価値を分かってらっしゃる!」
「いや、、、お目が高いような発言はまだしてないんだけど、、、まあいいか。これの価値はわかっているのは本当だし」
「あ!アリアちゃんもそう思います?凄いんすよね!」
「ははあ!流石高貴そうなお方だと思いましたよー!何処ぞのお姫様のようにお美しい貴女の為に!この魔法の香水はいかがでしょうか!ご自身のマナと混ざり合って、魔法効果で、男性を虜にする魅惑の香りに変化するのです!しかも、美白効果に顔痩せ効果まで付いてくるのです!」
『第一の翼が対象の嘘を感知しました。・・・・』
いや、うん。今のは魔法使わなくても分かったな。
それなのに、こんなに分かりやすい、偽商品なのに、何でコイツらはこうもアッサリ引っかかるかな。
バカティアだけじゃなく、アホファルコだったのかよ。
『警告!第一の翼を相殺する攻撃を受けています。物理アドレスを特定。アクセスを遮断しました。アクセス元をNICにて検索します。特定完了。アクセス元は魔女アーデルハイトの指輪と断定』
魔女アーデルハイト?!
何で魔女が出てくるんだ?
そう言えば、指輪って言ってたな。
ああ、あの商人の指にジャラジャラ付いている指輪のうちのどれかがアーデルハイトの指輪なのか。
「ああ、じゃあ、その香油と香水を買おうかな。でも、それってただのラベンダーの精油ですよね。こっちの香水はバラの精油だし。まあ、よく作られているみたいだし、合わせて1000フォルクなら買いますよ」
「う、、うぐっ、お、お買い上げ、あ、ありがとうございます」
「適正な価格だと思うけど、どうしました?」
「い、いえ。問題ございません。いやはや、流石お姫様、感服いたしました!お詫びの印にこの回復ポーションも更に5本お付けいたします」
「あ、それは、要らないな。元のポーションを5倍に薄めてますよね?効果ないのは持ってても邪魔なだけだし」
「いやあっはっはっ!これは参りました!こちらでは無くこのポーションをお納めくださいませ」
「そっちは本物みたいだから遠慮なくいただきますね」
奥から出してきたポーションは本物、というのは嘘では無いようだった。
しかし、まあ抜け目ない人だなあ。
「おじさんは嘘が通って当たり前って感じですよね?」
「あ、いやまあ、そうでしたかな?はっはっは」
「誤魔化せてないですよ?その指輪が自身のもとなんですね?」
「かああっ!これはこれは、今度こそ本気で参りました!そうです、この指輪を付けてから何を言っても、信じてもらえて、その後もずっと信じたままでいてくれるようで、何を売っても文句の一つも来なくなったのですよ」
どれなのかは分かっていなかったけど、おじさん自ら指から外して見せてくれた。
「へぇ、、、。それはどなたから貰ったのですか?」
「これは、この先の町で、魔女の格好をした占い師から貰ったのです。見た目に反して、占いがよく当たるんですよ。占ってもらった時に、私が人に信頼してもらえないって話になりまして、そしたらこの指輪の事を教えてくれたんですけど、何故かそのまま貰えてしまったんですよ」
「ふーん。ちょっと貸して貰えますか?」
「え、ええ、どうぞ」
「ちょっと指に着けますね?あ、後でちゃんと返します。私、鑑定スキルがあるんですよ。ああ、そうですね、これもう壊れてますよ」
「ええ?!ほ、、、本当ですか?!」
「はい。もう効力は無いようです。だってほら、この二人には効いていたけど、私には効かなかったでしょう?丁度、効果切れだったんですよ」
「はああ、そうだったんですね。あ、いや、どうも、すみませんでした」
まあ、壊れてなんか無いんだけどね。
この指輪は本当に嘘を見抜けなくする指輪なんだと思う。
アリアは鑑定スキルなんて使えないけど、おじさんは信じてしまうだろう。
なにせ、この指輪を着けたまま話した嘘なんだから。
指輪の効果でおじさんはこの嘘を本当の事と信じて疑わないはずだ。
だから、この指輪はおじさんの中ではもう壊れて使えない物になってしまったのだ。
こんなの使えない方がいいんだよ。
「ああ、でも、もう嘘をつかずに済むんですね。食っていくためにと言い訳を言って嘘を付いて儲けていましたが、それも出来なくなれば、踏ん切りが付くので良かったですよ」
おじさんもダメだって分かっては居たけど辞められなかったんだな。
「はああ、でも、これからまた売れない生活が待っていると思うと憂鬱です。最近はこの指輪のお陰で楽して稼いでいたから、これからどうなる事やら」
「大丈夫ですよ!おじさんのセールストークは面白いし分かりやすいし!真面目に商売をすれば、ちゃんと売れるようになりますって!」
「そ、、、そうです、かね?そう言われると、何となくそんな気がしてきました。ちょっと頑張ってみましょうかね!」
「ええ。きっとうまくいきますよ!あ、この指輪はどうせ使えないので、私が処分しておきますね」
「いいのですか?何から何まですみません」
商人のおじさんは、少し晴れやかな顔をして、馬車に乗って行ってしまった。
結局、1000フォルクで、ラベンダーとバラの香油と回復ポーション5本、魔女アーデルハイトの指輪を入手した事になる。
指輪は騙し取ってしまった形になるけど、おじさんも最初はこっちを騙そうとしてたんだし、おあいこだと思う。
「アリアちゃん。すみませんでした。何故かあの時はあの商人さんの言う事が、本当の事なんだろうなって思い込んでしまって、、、。今考えると、胡散臭い話なんだって分かるんすけど、、、」
「ああ、俺もあんなの欲しいとは思わない筈なのに、あの時は買わなきゃって思ってしまったな」
「まあまあ、次は気を付ければいいんじゃないのかな?それと、この香油はカティにあげるよ。寝る時に使ってね」
「え、、、、わ、私、今、アリアちゃんに誘われてます?」
「違うよ!?何でそうなるかな!」
「あ、違うんすね、ああ、びっくりしたあ」
「びっくりしたのはこっちだよ」
これ以上、フィアにまた増やした、って言われてたまるか。
あ、そうだ、この魔女の指輪を付けて、と。
「カティは僕の事は友達として好きなんだよ?分かったかな?」
「へ?、、、そ、そうっすね!お友達として大好きっす!今気づきました!私!アリアちゃんの事好きだったんです!」
あ、あれえ?
余計な事したかな。
変に好かれる前に、友達として好きになって貰えば良いかと思ったけど、何もしない方が良かったかも。
「さっき、女の子なのにアリアちゃんの事、本気で好きになりそうでどうしよう、って言ってた。バカティアなりに悩んでた」
あ、危なかったあ。
ユーリのこの情報が無かったら、さっきのを解除する所だった。
このまま、友達として好きでいてほしい。
マルブランシュの最南端にある町グラースまで来た。
ここから南側はドゥンケルハイトの森が広がっている。
魔物がたくさん出る森なので、このグラースは冒険者の町として栄えている。
ちなみに香水でも有名な町で香水の都とも呼ばれている。
さっきの商人のおじさんはこの町であの香水を仕入れたようだ。
この町に来ると、香水と冒険者の汗の匂いが混じって、なんとも言えない香りに包まれる、、、と冗談交じりに言われてるとか言われていないとか。
「さあ着いた!グラース!」
「着きましたね!くんくん、、、匂わない、、、っすね」
「町の入り口まで匂うわけない」
「いや、仄かに汗臭いぞ、、、」
ディア?それってさ。もしかして、、、。
「ボク達の匂いだったり?」
「そ、それだな、、、」
「はいは~い!先生っ!お風呂に入りたいっす!」
「誰が先生だよ。でも、最近野営ばっかりだったから、お風呂には入りたいね」
温泉、、、とまではいかなくても、個室のお風呂があれば、文句はないです。
汗でベトベトは嫌だ~。
「まったく、女子達はすぐ風呂だ、温泉だ~って、2、3日風呂なんて入らなくても変わんねえって」
「フォスとカナリスは軍人なんだから、それくらい平気で行動できないとだな」
その2人は誰のことだよって思ったら、フォスはユーリ、カナリスはカティの家名だった。
ユーリエ・フォスに、カティア・カナリス。
「軍人でも女の子は汗臭いのは嫌なんですう!」
「そうだそうだ」
「そう言うのが分からぬのが男共だからな。思考が雑なのだ」
ヒドイ言われようだな。
「あ、でも、アリアちゃんは、、、すんすん、はああん、いい匂い~!何で?!汗かいてるのに、お花畑にいるみたい!」
「人の匂いを嗅がないでよ」
「どれ、くんくん、ほあ。神聖な泉のほとりで月明かりを浴びながら、恋の歌を口ずさむ女神の匂い、、、」
何を急に言いだすんだ、ユーリは。
珍しく長セリフかと思えば、訳の分からない詩を詠み始めたぞ?!
「そんなにか?!我にも嗅がせろ」
「ちょっ、、、ディアもやめてよ。せ、せめて、風呂上がりにして!」
「お、俺も嗅いだら、、、」
「ダメに決まってるでしょ!!」
「変態」
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