クリノクロアの箱庭

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第百十五話 ベニトアイトの支配

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5分以上経過した頃、アリアの手には一振りの剣が現れていた。
ようやく届いたか。
あ、それじゃあ、リンの方も固まっていたのは治ったかな?




「ぐすん。レーベンの泉。ぐずんぐずん。ひっく。レーベンの泉ぃ、、、。うえぇん。リーンハルトくぅん。まだなのぉ、、、」

うわあ。
リーカがすごい泣きながら、回復してくれてた。
悪いことしちゃったな。

「ぷはあ。おお、戻ってこれた。ありがとう、リーカ。お陰で成功したよ。心配かけてごめんね」
「うええええん、帰って来たあ。こういうの、もうやですよお」
「ご、ごめんって。あ、ほら、お詫びに今度2人でどこか出かけよう。好きな所に行っていいからさ」
「うう、ぐずん。ホントに?」
「うんうん、どこでもいいから」
「2人っきり?」
「そうそう。2人だけで」
「なら許したげる」

よ、良かった。こんなに泣かれるとは思わなかったから、びっくりしたよ。

「でも、もうこんなのはイヤですからね!絶対もうやらせませんからね!」
「う、分かったよ、もうあんまりしないよ」
「あんまりじゃなくて、絶対!」
「、、、はい」

とりあえずこっちは問題ないな。
授業中に女子を泣かせた事で、クラス中から注目を浴びているけど、、、、これは、後で考えよう。




アリアの方には鞘より抜かれし剣が手に収まっている。
名前の通りに鞘は無い。
前は鞘だけだったけど、今度はちゃんと剣が現れた。

これでエミーリオさんを斬ったら、、、ダメだよな。
どうすれば、ベニトアイトからの遠隔操作を切れるんだろうか。


鞘より抜かれし剣
  切断候補
  ベニトアイト神からの通信回線
  デマルティーノ兵士への中継回線


剣をエミーリオさんに向けたら、こんなのが出た。
この回線を切ってしまえば、ベニトアイトからの遠隔操作は出来なくなるのか。

ベニトアイト神からの通信回線、というのを選んでみる。


『ご利用ガイド:黄色に光る線を鞘より抜かれし剣にて切断してください』

『注意:緑の線は生命の木に接続されている生命回線、青い線はマナの流れを示すマナ線です。どちらも切断すると生命活動が停止しますのでご注意ください』

エミーリオさんの体から色々な色の線が出てくるのが分かる。
あれ?赤い線もあるよ?あれは何の線なのかな??

『赤い線は運命の人との運命回線です。切断すると、その人との縁が無くなり、一生会うことが出来なくなります』

そ、そっちも切ったらダメなやつだね。

えっと、黄色の線ね。黄色黄色。

「近づくな!近づくと勝手に体が動いて、攻撃しちまうんだ。だから、それ以上はダメだ!」

ええ、面倒くさいな。
ベニトアイトって、本当に硬い神様なの?
結構、嫌がらせ的な仕掛けいっぱい仕込んでるじゃん。

ああもう、デマルティーノ兵士達も直ぐそばまで来ちゃってるし。

「女神様!あの隊長格の者を斬るのですね。私が突っ込んで取り押さえますので、女神様は私ごと斬ってください!」

いやいや、そんなの出来るわけない、、、、あ、大丈夫か。エミーリオさんの体も斬る訳じゃなくて、あの回線を切るだけだし、抑えてくれていればいけるかな。

「じゃあ、お願い、一気に切るから」
「え?」
「ん?」
「あ、いえ、そこは、あなたを犠牲になんて出来ないです!とかでは無いのですね?」
「そう言って欲しかったの?」
「あ、いや、その、、、こんな場面そうそう無いので、そういうのを言われて見たかったかなと、、、」
「分かった分かった。んんっ、、、。えっと、あ、あなたを犠牲になんて出来ないわ!、、、これでどう?」
「ど、どうも。ちょっと棒読みですけど、やる気は出てきました!あなたの為に死にましょう!でやああああ!」

死なないけどね。
でも、その心意気は有り難いです!

「くっ!近づくなと言っただろうに!」
「大人しくしろ!うおおお!」

よし、エミーリオさんを羽交い締めにしている間に僕も近づき、黄色い線を探す。
剣を構えている間だけ、ぼああっとエミーリオさんの体中から色々な線が出ていて何処かに繋がっているのが見える。

緑の線は心臓の辺りから出て、その先は地中に埋まっている。
青の線は体の至る所から出たり入ったりして体中を駆け巡っていた。
赤い線は、、、、なんと、2本も飛び出ていて片方は北、つまりデマルティーノ帝国側に、もう一本はシュタール王国へと伸びていた。
エミーリオさんの運命の人は2人も居て、しかもその内の一人はエルツ族なのかあ。
ど、どっちと結ばれるんだろう、、、。
気になる。

いやいやそれどころじゃなかった、、、。
まずいまずい、デマルティーノ兵がもう目の前まで来ていた。

黄色の線!黄色!
これか!よし!剣を当てて、、、、。
これ、オレンジじゃないか?
薄いオレンジに見えるよな。

ね、ねえ。オレンジの線ってあるの?

『オレンジ、または、薄オレンジの線は家族間の絆、家族愛の線です。切断すると、一家離散となります』

危ないよ!
なんで、そんな似た色にするのさ!
ええ、、、これ区別つきにくいな。
オレンジにも微妙に色違いがあるし。

ああもう、間に合わない!
この一番黄色いっぽいのを切る!
これじゃなかったら、ごめん!エミーリオさん!

「えいっ!」

ぶつん

エミーリオさんは、シュタール兵に体を固められながら、ガクンと力が抜け落ちる。
この線であってたんだろうか。

「はっ!お、俺は、、、今まで何を、、、あ!あんたは、、、確か、軟弱女神、、、」
「変な呼び方やめてよ。意識はハッキリしてる?」
「ああ。さっきまでは、何かぼうっとしていたが、うおっ、なんだお前ら、、、別部隊の奴ら、、、何突っ立ってるんだ?」

周りのデマルティーノ兵達は僕に殺到している途中で固まってしまっていた。
一番近くに来た兵士なんかは、もう振りかぶった剣が僕の頭のすぐ近くまで来ていた。
危ない危ない。

「もうこれで、ベニトアイトの支配は受けてないと思うけど、どうかな?あ、そうだ、第三の翼 空虚反転、エミーリオさん。よし、これでもう蓋をしたから操れない筈!」
「そうか、、、。いろいろ悪かったな。ベニトアイト様に天啓を受けてから、よく分からなくなってしまったんだ。意識はハッキリしてたんだが、シュタール軍を根絶やしろ、という声がずっと頭の中に響いていた」

やりたくも無い事を無理やりやらせるなんて、ひどい神もいるもんだ。

「この、倒れている我が軍の兵士も生きているのだろう?」
「ああ、多分、、、。気絶してるだけだと思うよ?」
「多分なのかよ。突っ立っているコイツらを見ると、俺と同じように操られていたのか?」
「うん。エミーリオさん経由でね。だから、エミーリオさんの遠隔操作を切ったら、他の人も止まったんだと思う」
「そうか。全く人を人として見ない神だな。そんな神を崇める奴らが居たら見てみたいぜ」

やっぱり、ベニトアイトは主神でも何でも無かったんだな。
それも、無理に言わせているって、どんだけ自分大好きな神なんだか。

「ああ、ええっと、それじゃあ、シュタール軍はこの国を通ってもいいのかな?」
「ああ、確か元から通行許可は出していた筈だ。最近はデマルティーノ帝国はシュタール王国と友好関係を気づきたがっていた筈だ。でなければ、こんな綺麗に街道を整備したりはしないぞ?」

へぇ。エルツに歩み寄ろうとしている国もあったんだ。
それを、ベニトアイトは踏みにじって、こんな争いにしたのかよ!
許せんな。
なんだかスファレライトのやってる事の方がまだかわいいと思えるくらいだよ。
いや、あいつもあんまりいいことはして無いか。


「っす!何すかこれ!最先端の芸術作品すか!」
「彫刻のよう」

ああ、デマルティーノ兵が固まったから、皆んなもこっちまで来れたのか。
エルツの国王達も後ろからついて来ていた。

「アリアちゃん、これは一体どうなっているのだ?」
「ああ、ディアも来たね。まあ、最初から戦う必要が無かったって事なんだよ」

国王達にも何が起きていて、どうなったのかを説明した。

「神がそのような事を、、、信じられませぬな」
「コーレ卿よ。我がエルツの真祖も神々によって、天から突き落とされているのだぞ。常に全てのものに利するとは限らぬ」
「そうでございましたな、陛下。それに、わたくしにとっては、こちらのお嬢さんが崇めるべき女神ですな」
「うむ。私にも、いや、シュタールにとっても、幸運の女神と言うほかないな!この戦をたったお一人で終わらせてしまったのだ!」



我を取り戻したエミーリオさんは率先してシュタール軍の案内をしてくれた。
このデマルティーノ帝国は帝国議会というのが、国のトップになるらしい。
その帝国議会は元からシュタール軍の通行や帝国での滞在なども歓迎だったようだ。
神からの天啓を受けたため、仕方なしに従わざるを得なかっただけだった。

「そういうわけでして、わたくしどもとしましても、何故祀ってもいない、ベニトアイト神にあれほどまで従っていたのか、不思議でしょうがありません。シュタール王よ。わたくし達はあなた方と敵対するのは本意ではありません。どうか、その事をご理解いただき、これまでのご無礼をお許し願えないでしょうか」

帝国議会の議会室に通され、議会の人達数人と面会をしていた。
シュタール王国からは国王とコーレ卿、ザントシュタイン卿が来ている。
あとは、僕とディアが何故か付いて来ていた。
ディアは分かるけど、僕は当事者じゃないんだけど。

「ああ、ベニトアイトによる工作があった事は理解しておる。それも、このシュタールの守護神、アリア殿、、、いや、女神セラフィナイト様が解決してくれたからな」
「お、おお。こちらが本物の女神様であらせられるか。女神様の顕現されたお姿というのは初めて拝見しますな。流石お美しい」

まずいなあ。
さっきは頭にきて、かなり適当な事を言ってたからな。
これは怒られるどころじゃないよ、きっと。

「あの、出来れば私の素性につきましては、秘密でお願いします。あまり、広まると良くないことが起きるかもしれないので」
「そ、そうですな。十分理解しておりまする」
「う、うむ、我が王国としても、セラフィナイト様のご意向にはそうつもりだ」
「それなら呼び方はアリアでお願いします」
「お、おお、そうか、神の御名はそう簡単に口にしてはならぬな」

うわっはっは、とか皆んなで笑ってるけど、こっちは笑い事じゃないんだよ。
もっと、穏便にすませれば良かったよなあ。
失敗したよ。

「ところで、シュタール王国はフォルクヴァルツ王国に戦争を仕掛けるので?」
「うむ。エルツの誇りを取り戻す為の戦だ。フォルクヴァルツの次はノルドだ」
「そうですか。分かりました。では、わたくし達デマルティーノ帝国もシュタール王国に力をお貸ししましょう。帝国軍、約1万人の兵士と騎士、それから、食料の補給やその輸送もお手伝いしましょう」
「なんと!デマルティーノはそこまで我らにしてくれるのか。だが、それをしても、そちらにはなんの得にもならぬのではないのか?」

なんだか嫌な話になって来たな。
元々デマルティーノはシュタールに近付きたがっていたというのも、何か利益を狙っての事だろう。

「シュタール王国はエルツ人を奴隷化したり、差別を受けているのが許せない、と言うわけですよね。つまり、そう言った事を許している国を攻めて、エルツ人を解放したり、その国での人権を取り戻すのが目的だ、という事でよろしいでしょうかな?」
「う、うむ。有り体に言えばそうなるな」
「それであれば、攻め入った国の民や領土には、さほど興味がある訳ではない、とそう言う事でよろしいかな?」
「まあ、そうなるな。ああ、そうか、フォルクヴァルツの領土が欲しいのか。構わぬ。我らはエルツの誇りを取り戻せれば、領土もそこの民も要らん。勝手にすれば良い」
「そうですか。そうですか。これは、お互いいい事尽くめですなあ」

話しがまとまってしまった。
リンの方では、もうすぐにでも知っている人を連れて、外国にでも逃げようかな。
それだと、結構大人数になりそうか。
最近知り合いが増えすぎたよ。
せめて、家に居る家族と、学校の人達と、村の人達とか、、、やっぱり逃げるのは無理か。
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