クリノクロアの箱庭

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第百三十九話 10万対1

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ベニトアイトが居なくなって、あとはこの10万の魔族モドキをどうにかしないといけないんだけど、どうしたもんかな。

これだけターゲットが集まってれば、大きめの魔法を思いっきり放っても平気そうだし、やってみるか。
外壁の上から下を見る。
うぞうぞと、緑色の髪の毛が氷の壁を登ってこようともがいている。
そこからずっと見えないくらい遠くまで、その緑の毛が続いている。

「まずは、メールの水塊!」

空に黒雲が発生し、マナが込められた雨が降り始める。
結構広範囲に雨を降らせたつもりだったけど、これだけの広さだと全体の1/100にもならない。

「続いて、ブラントストフの爆裂!!」

壁のすぐ下で爆発が起き、数十体の魔族モドキが吹っ飛ぶと、メールの水塊のマナに反応して、誘爆が始まる。

ドドドドドドッ

連続して爆発が起き、数百体の魔族モドキが居たはずの場所が何も無い空間となる。
それでも、四~五百体程度だ。
あと、9万9500体はいるんだよ、、、。
こんなの無理に決まってるだろ!

ここにギベオンソードを持って突っ込んだって、やっぱり数百体か頑張っても千体程度を倒すのが精一杯だろうな。
シリカのブーストが掛かってるから、もう少しいけるかもしれないけど、仮に1万を倒したとして、それで10分の1だ。

後ろを振り返り、無理無理!という意思表示の為に、こっちを見ている国王を見る。
遠いから凄く小さく見えるけど、こっちが見たのが分かったのだろう、何故か、国王が「うむ」と頷くのが分かった。

いやいや、何がうむ、だよ。
こっちの言いたい事は全然分かってないじゃないか。
ああ、もう!
でも、これを放っておいたら、王都の人達が襲われてしまうし、僕がなんとかしないといけないのか~。
段々登ってくる奴らも増えてきたみたいだし、そろそろ時間稼ぎも出来なくなってきたか。


これを一気に解決する方法が無くはない。
終末の七つのラッパを使えば良い。
ただな~。これがな~。問題が2つあるんだよな。
いや3つあるか。

1つ目は、マナが絶対的に足りないって事だ。
これだけのターゲットの量だ。
全部を倒すまで、攻撃し続けたらマナが途中で無くなってしまうと思う。
それはまあ、アリアを出して、マナ補充しながら、ぼくにマナ弾を撃ち続ければなんとかなるかもしれない。
でも、アリアのマナ補充の速度と、マナ弾での僕へのマナ供給の速度がどちらも遅れれば、僕はマナ枯渇になって死んでしまうだろう。
そこはやってみないと分からないのが不安な点だな。

2つ目は、あの魔法は地面に穴が空く事だ。
これだけの広範囲にあの大きな穴が開きまくるという問題が起きてしまう。
まあ、これも後で謝ればいっかな~、くらいのものだろう。
王都が壊滅になるよりはいいと思うしね。

3つ目は、それをやる所を王都のみんなに見られるという事だ。
それだけの力をたった一人で行使したと知られれば、今以上に僕目当ての人が増えてくるだろう。
まあ、これも、熾天使から名指しで守るような言葉を掛けられていることになっているくらいだから、それくらいどうって事ないか。

あれ?
さっきまで、問題だらけじゃんとか思っていたけど、こうやって並べてみると、大した問題じゃなさそうだな。

よし、これでやってみるか!
ダイジョブダイジョブ、なんとかなるよ。

まずは、アリアをインベントリから出す。

「アザレアの杖と水筒、、、の水筒をアリアに!」

アリアの手に水筒が現れる。
それを飲みながら、リンにマナ弾を打ち込んでいく。
これで、マナは補給し続けられる。

あとは、どこまでいけるか、だな。

「終末の七つのラッパ 通常モード 第一のラッパ吹き。目標はここに居る人工精霊ライト全部!」

終末モードはうっかり押し間違えると世界が危ないからね。
最初から通常モードを指定しておく。
角笛が手元に現れる。
大きく息を吸い込み、角笛を鳴らす。

♪♪♪♪♪♪


『ターゲット抽出中………しばらくお待ちください』


やっぱりそうなるか。
これは、時間がかかりそうだな。


『ターゲット数が多過ぎます。顔認証+追尾AFモードに切り替えますか?』


なんだこれ?
よく分からないけど、はい、と答えておく。
だいたいこういう時は従った方が得をするものだ。


『準備完了しました。実行しますか?』


「実行だ!いけえ!」

………ああ、これ少し時間差があったんだよな。
カッコつけて右手を前に出して叫んだけど、まだ氷と炎ははるか上空だ。
見られてるのに、、、これじゃあなんだか魔法が失敗したみたいじゃないか。

ようやく一発目の氷と炎が落ちてくる。
最初のこれは照準と実際の落下点とのズレを見極めるため試射だ。
これを元に位置を調整する弾着観測射撃というものになる。
と言うことは、この弾着点を誰かが観測してるってことなのかな。
とにかく誤差修正された本射撃が大量に魔族モドキへと降り注ぐ。

一発の威力はさっきのブースト付きの爆裂魔法並みにある。
それに加えて、はるか上空から落下してくるものだから、その衝撃も加わって地面には大きな穴が作られる。
一度に数百と言う血の氷と炎が混じった弾が超高速で雨のように落ちる光景は、真っ赤に空そのものが焼けているようだった。

今まで緑一色だった平原も、赤い炎とえぐれた地面の色に塗り替えられていく。
こう見ると、緑と赤の陣取りゲームでもしているのではないかと、一瞬おかしな感想を漏らしそうになるけど、周りに誰もいないから、言わずに済んだ。

「わあ、まるで陣取りゲームですね」
「うわああああ!ああ、リーカか、、、ビックリしたあ」
「その声にビックリしましたよ。大丈夫ですか?マナ足りてます?」
「ああ、うん。まだ大丈夫だよ。でも、リーカはこんな所まで来て危ないよ?」
「えへへ。心配してくれてるんですか?でも、こうなったら、もうリーンハルトくんの勝ちで終わりじゃないですか。なので、シリカちゃんも連れて来ちゃいました」
「これ、音がうるさいよ。もっと静かに出来ないの?」
「シリカ、、、。よし、ちょっと控えめにしてみるか、、、」
「わあ、リーンハルトくん、ダメですよ!ちょっと、シリカちゃんに甘過ぎません?!一応、敵と戦闘中なんですから手を抜いたら危ないですよ!」

分かってるって、冗談だって。
でも、辺り一面にドコンドコンと弾が落ちては大穴を開けているのは流石にうるさいな。
王都の人達も何事か!?と思ってるだろうな。

「だいぶ敵も居なくなりましたね。地面が穴だらけになってそこから炎が出ていて、勇者物語の話しに出てくる冥界みたいです」
「これって、最後の最後までこの魔法でする必要ないよね。途中から違うのに変えようかな」
「そうですね。あれなんて、たった一体のために大穴が空きましたよ」

そうなんだよ。最初のうちはまとめて薙ぎ払っていたから良かったけど、残った奴らの間隔が広がってくると、一体ずつ仕留めていくようになるから効率が悪いんだよ。
それに、一体でも数百体でも出来上がる穴は何故か同じ大きさだから、無駄に穴を作り上げてしまっている。

どうせなら一度、一箇所に集合してくれないかな。
そしたら、あと数発で終わりそうなのに。

「おい!リーンハルト!おーい!」
「ん?ああ、国王。どうしたんですか?」

国王が外壁のすぐ下まで来ていた。
国王がこんな所まで来ていいのかよ。
壁のすぐ向こうは冥界並みの光景が広がっているんだよ?

「早くアレを止めろ!お前がやってるんだろ!」

ええ~何だよ。
まだ残ってるんだけどな。
停止する方法は、、、どうやるんだ?

「攻撃停止!撃ち方やめ!止まんないな。国王ー!あと少し待ってくれませんか?あと数百体なんで!」
「馬鹿言うな!平原が冥界絵図になってるだろうが!国民からも騒音の苦情が来ているんだ!すぐ止めろ!」

そんな近所の公園で馬鹿騒ぎしている若者みたいな扱いされてもなあ。

「止まんないんですか?」
「うん、、、。どうしようか」
「わっ!!、、、どうです?」
「しゃっくりじゃないんだから、、、」

マナの供給が止まれば止まるかな。

「シリカ。ちょっと、ステータスをいじらせてくれないかな」
「スケベ」
「ううっ。緊急だから仕方ないの!」

セラフの翼をリンが出しているところを見られるのは嫌だから、アリア側で非表示に設定してからセラフの翼を使う。
この辺は、色々制限があるから面倒くさい。

シリカのスキル欄にインベントリとストレージを書き込んで保存する。

「よし、シリカ。僕をインベントリに入れてから、そのままストレージに移してみて」
「アリアを入れるの?」
「ああ、間違った、僕の方ね」

シリカがダルそうに立ち上がると、リンの方に触れる。
すると、目の前に見えているシリカがぐにゃりとゆがみ、次の瞬間には真っ白な部屋に居た。

あれ?死んじゃった?
ここがインベントリの中なのかな?
死んだ時と区別つかないぞ。

ぶつっ

一瞬、見える景色と音にノイズが入る。
今のがストレージに入ってから、またこのインベントリに戻された音だろう。
ストレージの中は時間が止まるから、中に居た記憶は当然無い。
だから、僕にとってはこのインベントリに居続けていると言う感覚でしかない。

そう考えていたら、いつの間にか、目の前にまたシリカの顔が、、、近い近い!え?さっきはもう少し離れてたよね?
今は鼻が当たりそうな程の距離だ。

「くっ。出すところ間違えた。パパの変態!!」
「理不尽!?僕のせいじゃないよね!」
「シリカちゃん。策士ですね。今度私もインベントリを覚えようかな、、、」

リーカもブツブツ何か言ってるけど、同じ事をやるつもりなんだろうか。

辺りは静かになっていた。
空を見上げても、赤い雨は止み青空が戻っていた。
上手くいったかな。

残りの魔族モドキは数百体だから、あとは騎士団でも対処できる数でしょう。
あ、そうだ。

「国王~。止めましたよ~」
「ふう。ああ、分かった。すぐ降りてこい」
「え?まだ、残党が居ますよ?」

嫌な予感しかしないから、逃げよう。

「ダメだ。外は騎士団が何とかする。お前はすぐに俺の所まで来るんだ!」

ふひぃ~。怒られる~。
壁の下に降りると、国王だけでなく、クラウゼンさんにも怒られてしまった。

「まったく、あの美しい平原になんて事をしてくれるんですか!」
「いや、だって、魔族が、、、」
「だってじゃありません!いくらなんでも、やり方ってものがあるでしょう!王都を守っても、周りがあんなにぐちゃぐちゃになってしまったら、これからどうやって他の町との行き来をすればいいんですか!」
「うう、、、すみませんでした、、、」

やっぱり、ラッパは穴が開くのが問題だったな。
でも、アレ以外で10万の敵を何とかするなんて出来ないよなあ。

「ああ、つい怒りすぎてしまいました。いえ、分かっているんですよ。フォルトナーさんがああやってくれなければ、王都は壊滅していたかもしれないのですから。感謝しているのですが、フォルトナーさんならもっと良いやり方で出来たのではないかと、思ってしまうのですよ!」
「えっと、、、どうでしょうね、、、神とも戦ったりして気が動転してたんで、思いつかなかったです、、、すみません」
「神と?遠くて分かりませんでしたが、誰かと何かしていたように見えていたのは、神相手だったのですか?」
「やはり出てきておったか。仕留めたのか?」
「逃げられました、、、。度々すみませんでした、、、」

あれ?さっきから謝ってばかりだぞ?
おかしいな。
王都を守った筈なのに叱られてる。

「神に逃げられたのは仕方ない。というより、神と一対一で戦って生き残り、神の方が逃げ出したとか、お前やっぱり凄い奴だな」
「まあ、そうですね。歴史上、神と敵対して生き残れたのは、大賢者くらいですしね」

おお、僕の大好きな大賢者様だ。
流石大賢者様、神と戦って生き残ったのか。
僕もそれに一歩近づけたって事かな。

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