魔力無しグルコ25歳の備忘録

イイズナそまり

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第十九話

グルコと町おこし事業

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 「俺に出来る仕事はありますか?」

 町役場のハローワークの片隅 内職専用の窓口に職員が二人並んでる
「私達はこの道60年ですが、魔力無しさんのお仕事探しは初めてです。」
一度定年して再就職したんだな 名札に嘱託職員とある
「職種は問いません」
《わかりました。》
求人情報を載せた分厚いファイル 
「俺も見たいです」
《わかりました。》
シワシワ声がハモって耳に心地よい

「無いもんですねぇ」
三人でペラペラと目を通す
内職は初級魔法使い向けの仕事が多い 
《無いもんですねぇ。》

棚からファイルを出し入れする作業は負担が大きい
「アタタタタ」
そらきた 腰肩膝
「あの。もう終わりにしましょう」
《そうですか?》
「ハイ。薄々わかっていたので、大丈夫です」
「でも。あなたお金に困ってるんでしょ?」
「出来ることなら幾らかお貸ししたいんですが、法律で禁じられてます。」
「ごめんなさいね。」
「お昼ご飯いつも残すんだけど、今日は大好物のカツ丼だったのよ。」
「ごめんなさいね。」
俺に食べ残しを施すつもりか 悪気はないんだろうけど ちょっとね
「いえいえ。お気持ちだけで有り難いです」
《そうですか?》
「ロビーの牛乳サーバーは飲み放題だから沢山飲んで帰ってね。」
「持ち帰りは法律で禁じられてます。」
あれはヤクの牛乳だ 匂いがキツくて俺には飲めない
「わかりました。有り難うございました」
《また来てくださいね。》
「ハイハイ」



 町役場の正面玄関を出ると円舞台広場に真っ直ぐ続くなだらかな下り坂
平日の昼下がり 人通りは無い
町役場と冒険者・商業ギルドは並んで建っている
そこからそこなのでコートを羽織らずに足早に移動した

冒険者ギルドに入ると暖房が効いていなかった 日が当たらないから外より寒い
ロビーには誰もいない
クエストが少ないこの時期は部屋暖房魔法を節約するんだな
暑苦しい冒険者がいたら少しは気温が上がるのに
「こんにちは。談話室で待たせて貰いますね」
「はい。どうぞ。」
「寒そうですが暖房掛けましょうか?」
窓口職員は冬季限定魔法の掛かった冬服を着ている 商業ギルドの制服カタログに載ってたお高いやつだ
「いえ。コートがありますので大丈夫です」

リュックからワイルドボアのコートを出して着込む 暖かい
 「ガリガリのワイルドボアだわ」
 「不味そうね」
 「スープの出汁に使えるかしら」
 「どうかしらね」
 「今夜はボア鍋にしましょ」
 「あらいいわね。私もそうしましょ」
窓越しでも聞こえる ここの職員は地声が大きいんだよね
冒険者で賑わうロビーで窓口業務を行ううちに声量が大きくなる

備忘録を広げ忘れない内に記録した
[市場調査
 ・円舞台広場 2
 ・薬局 5
 ・薬品工房 3
 ・ロビー
  商業ギルド 11 
  町役場 8
  冒険者ギルド 0 ]


「わあ~ 貸切だわぁ~」
お 気温が上がったな 歩く暖炉だ 暖かい魔力を身に纏う
「オリザさん、いらっしゃい」
「今日はどうされました?」
「こんにちは。待ち合わせなの」
「うわっ寒」
壁際の魔法陣にサブマスさんが現れた
「ギルマス連れてくれば良かった」
「存在が暑苦しいもんね」
詠唱「春風」
「うん。また腕を上げたね。暖かい。ありがとう」
「あ。ガリガリのワイルドボアが来たわ」
並んでいると双子ではなく年の離れた兄妹って感じだ

「こんにちは。お呼び立てしてすいません」
「暇してたから気にしないで」
「グルコさん、ここまでは何で来たんですか?」
「店長が買い物ついでに送ってくれました。タダで」
「明日は七色の雪が降りますね。」
〈シーッ〉
コソリ「悪口言うと出て来ちゃいます」
「ん」
「にったん、地獄耳レベルカンストしてるからね。あ、これは褒め言葉よ」
カンストすると隣りの森まで聞こえるのか
「では、隕石まで参りましょう」
「はーい」



 国道を塞いだ2個の黒い隕石は領主さんの依頼で店長が泥団子魔法を掛けてツヤツヤの玉に変えた
数週間後 艶の無い灰色のゴツゴツした丸い岩に変わっていた 
強い磁場が無くなり領外への転移魔法が使えるようになった
領主さんは山神さまの思し召しがあったと発表した

備忘録に手を乗せる
詠唱「遺跡 巨石 岩」
開く
「これをモデルにしました。こんな感じに作りたいです」
「どこでこれを?」
「国立美術館のパンフレットです」
「手紙に描いてあったのと全然違うじゃない。面白い飾り付けだわ」
「古代では巨石を信仰の対象物にしていたそうです。詳しい事は解明されてません」
「西さんもご存知ないと?」
「ハイ。まあ、知ってても教えませんよ」
「にったん、そーいうとこあるわよね」
「それにしてもこれは。ギルドのお絵描き教室をお勧めします。」
下手っぴで悪うござんしたね

「他の資料も入れて貰いました。こちらです。どうぞ」
俺の備忘録は持ち主以外にもページを捲ったり書かせてくれたり社交的な性格だ
「んー。毎年交換するのよね?」
「ハイ。雪の季節の年中行事に出来ればと考えてます」
「んー。この隕石に飾る量を毎年確保するのは難しいわね」
「遺跡調査隊の分析結界を参考に、芯を甲虫の素材で作って外装だけ交換でも良いです」
飾り付けの素材は南の森の特産物 チマリ代表へ依頼してオリザさんに来て貰った
店長から経営のノウハウを伝授されて南の森の交易を担っている 
「それなら、裏の年でも十分足りるわね」
「職人はどうしますか?ギルドで広域クエスト出しますよ?」
「オリザさん、南の森の素材はデカイですよね。材質はどうですか?」
「普通のと変わらないわ。デカイだけね」
「高齢者やちびっ子でも扱えますか?」
「ええ。グルコでも扱えるわ。甲虫は扱いが難しいから上級魔法使いね」
「サブマスさん、広域は要りません。町おこし事業にします」
「わかりました。町役場の管轄ですね。」
「領主が統括で町長が現場の総括かしら?」
「そうなりますね。オリザさんは町長さんと予算の取り決めをしてください」
「わかったわ」
「財源はどうするんですか?」
「今回の材料費は俺が南の森に一括払いします。2年目からの外装費は町役場で予算を組んで貰います」
「うん。外装の素材は高くないから大丈夫そうね」
「人件費は国王が小遣いで払います。領主さんがゴリゴリの契約魔法を交わしました」
足りなければペットのお犬様名義の貯金を使わせる
「工事の給与が前倒しで支払われて良かったですね。」
「領主さんが掛け合ってくれて助かりました」
王都は年末年始の舞踏会で贅沢三昧した 予算が残っていたのが奇跡だ
クスクス「領主の取り立て屋ぶり、私も見たかったです。」
クスクス「目に浮かぶわ。あの人汚れ仕事が大好きよね」
「そもそも国王が言い出しっぺですからね」
「東から聞いたわ。毎晩、黒い獣を連れた山神さまが夢枕に立って飾り付け欲しぃ~って」
「隕石を転がして西の国境を塞ぐぞって。脅迫されてチビッたって聞いたよ?」
「兄貴それ誰に聞いたの?」
「マクさん」
「あの人は嘘は言わないわね」
「だろ?」
「マクさんは宰相さんから聞いたんですよ。だからどちらも事実でしょうね」
「東には恥ずかしくて言えなかったのね」
「だな」
宰相さんの秘密漏洩は死刑に値する不敬罪だ この国大丈夫か?

「やり方はどうあれ、こうしてシンケー領が潤うんですから山神さまには感謝しか有りませんね」
「だけどグルコさん。本当にいいんですか?」
「あたしもプール付き温泉施設、楽しみにしてたのよ」
「すいません。商業施設にするには現実的じゃない事に気付いたんですよ」
「気付くの遅くない?」
ハハ「ですよね」
鉄棒にぶら下がっただけで腰がヤバかった プールでバタフライは諦めた
「作業場はうちの大会議室を使えるよう手配しますね。」
「宜しくお願いします」
「天秤祭りに間に合うかしら?」
「今日見て回ったんですが、町に人がいませんでした。除雪して環境整備は万全なのに円舞台広場も商店街もガラガラでした。
皆さん裏の年に備えて外出を控えてます。自宅で暇を持て余してる方、多いと思いませんか?」
「確かに。賑わってるのはスポーツジムくらいですね。」
「そうですね。彼らは家に居ても邪魔者扱いされてるかもです。家事炊事をやらない方々には窮屈で退屈な状況です。そういう方々にも働いて貰えば良いと考えます」
柔らかい温かい風が吹いた オリザさんのスキル風詠みが発動した
「うん。良い風。順風満帆。上手くいくわ」
「ありがとうございます」


「隕石の注連縄しめなわ飾り。奉納させて頂きます。ご協力宜しくお願いします」




「諸君。これがオオゼキサシガメだ」

〈ギャアーーーーーーーー〉パッチン

洞窟風古民家BARナナフシ薬局のカウンターが巨大な朱色の虫に占拠された

ドキドキドキドキ
ブルブル「グルコ怖い」ブルブル
ガタガタ「怖いね」ガタガタ
ドキドキドキドキ
しゃべる子供馬とナナフシ男が抱き合う珍百景
俺は腰が抜けました
カウンターの向こうが静かだ 皆んな気絶したのかな

《⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯》
ハッハッハッ「死んでるよ。離れてないで皆んな寄っといで」
朱色の虫の背にシンさんの頭が乗る珍百景
に見えてるだろう
《⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯》
「おや、東はどこ行った?」

「シンさん。なんでここに出したんですか?」
カウンターの中 逃げ場の無い俺達を見下ろす好々爺がニヤリと笑った
「この虫はな、脱皮した直後に捕らえたんだよ。時間が経つと朱色では無くなるんだ」
「それで?」
「チマリがな、注連縄を紅白のねじねじにしたいそうだ。朱色の染料の原料はこの虫だ」
「それで?」
「許可を貰いに来たんだよ。グルコ君が統括なんだろう?」
「違いますよっ💢領主さんですよっ💢」
「グルコ怖い」
「ああごめんごめん💦」

先日 隕石の注連縄飾り町おこし事業が始動した
事業はすでに発案者でスポンサーの俺の手を離れている 手出し口出し致しません
「俺の仕事は皮算用です。領主邸に持って行って嫌われてください」
《そーだそーだー》
「私は嫌われるのかい?」
《そーだそーだー》
無責任な煽りはやめて
「違います。デカイ虫が嫌われるんです」
「そーかそーか」
「それとこれ、作業場で出さないでください。高齢者が心臓発作を起こして子供達がこの世の終わりのように泣きますよ」
「わかったわかった」
シンさんと虫が転移した

《ありえない》
同意
「グルコ虫怖かった」
「怖かったね」
「僕、置き去りにされちゃったね。グルコ大丈夫?上級ポーション飲む?今なら2割引きだよ」
ガチデカA級冒険者の肩当てや胸当てには無数の切り傷が生々しく残されている
「ドロイ君。虫取り楽しかったかい?」
「うん!」
《ありえない》
同意





 シンケー領北西の奥地 薬師村 
初めてボリルに転移して貰った 座標が読める賢い子供馬
「グルコは簡単」
俺は従魔契約しているので波長が合っている ドロイより運びやすいんだろう
「ありがとう。俺も転移酔いしなかったよ」
「うん」


パタパタパタ「ボリルいらっしゃい!」
可愛いちびっ子が駆け寄ってきた
「村長ぉーー」パタパタパタパタ
あらら 俺はスルー?
「ボリルが勇者ナナフシグルコを連れて来たよぉー」
ひやかしてるのかなぁ
「ルダお熱下がった」
「風邪ひいてたの?」
「うん。薬が苦いって泣いたよ」
「ボリル、この村ではおしゃべりしてるの?」
「うん。あっ」
無自覚でしゃべってるんだな
店長なら隠蔽魔法掛けるけど ドロイが使うのを聞いたことがない
「馬獣人の亜種って言えば大丈夫かもね」
「馬獣人のあしゅ」
ん 発音が違うな
「亜種」
「亜種」
よし
「覚えた?」
「馬獣人の亜種。覚えた」
「誰かに種族を聞かれたらそう答えてね」
「わかった」

 今日からこの村の置き薬の配達を俺とボリルが任せられた
薬師村は特別だ ナナフシ薬局はこの村から上級な薬品を仕入れている 取り引き量が多く信頼が厚い
ボリルがこの村に慣れたので引き継ぐ事にしたそうだ
「ボリルだぁー」パタパタパタパタ
「ボリルお兄ちゃん」パタパタパタパタ
二人も来てたんだ
「ボリル馬獣人の亜種だよ」
「そっかぁ~あしゅなんだぁ~」
「お兄ちゃんすごいねぇ」
俺達にこの村を引き継がせたのは黒い髪と黒い獣に偏見が無いからか

「久しぶりだね。元気にしてた?」
積雪量の多い奥地から町への移動は大人でも危険が付き纏う
村より更に森の奥から勉強会に参加しているちびっ子三人組
今は転送ポストで通信教育に切り替えて文字の添削をしている
「グルコやせたー」
「勇者ナナフシー」
「二人は風邪をひいたかな?」
「ひかない」
「少しお熱出た」
ルダのがうつったのかな 軽く済んで良かった
「そっか。無理しないでね」
「うん」
「グルコもね」
「ハイハイ」
瞳の輝き 顔色 髪の艶 爪 大丈夫だね
クンクン「グルコ臭くない」
クンクン「本当だ臭くない」
嗅覚も大丈夫だね
「雪の季節は魔蟲避けを使わないんだよ」
よっぽど臭かったんだなぁ でもあれがないと虫刺されが酷いし蕁麻疹が出ることもある
「ねーボリルは平気なの?」
「平気」
お鼻に防臭マスク魔法使うからね
「ボリルはお兄ちゃんだから」
「お兄ちゃん凄いねー」
最近お兄ちゃんごっこがマイブーム この子から発信されたのか


 村長の家に行くと村人達が寒餅作りをしていた
森の奥の大人達も来ていた 彼らは腰帯に柄の短い小型のまさかりを差しているので見分けがつく
「村長さん、お世話になっております」
「ああ、グルコさん。そこに座ってくださいね」
広い土間の窓の近くにテーブルと椅子が置いてある
どこかで見たことあるような無いような
「店長さんから戴きました。グルコさん、藁敷に座るのご負担だそうですね」
引っ越しの日に引き払った居抜き残置物か
「ありがとうございます」
リュックから薬師村の仕入れ台帳と出納帳を出すと何人か集まって来た
「今日は売るの?買うの?」
知らない人だ
「両方です。良ければ隣にどうぞ」
「はい」
経営に興味を持つ人は貴重だ
村長さんが手を拭きながら笑って見てる
「あ。娘さんですか?」
「はい」
目元そっくりだな
「お世話になっております」
うふふ「こちらこそ。学びを頂きますね」
「いくらでも差し上げます」
「グルコさん。私に何かあった時、この子が引き継げるようご尽力ください」
重い言葉ではない
人生何が起こるかわからない
残った者が困らないよう備えるのも村長の仕事だ
「かしこまりました」

村の出納帳に記録する娘さんは緊張気味だ
慣れるには実践で学びを増やすしかない
俺にもこんな時代があった ような無かったような

「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
よし 仕入れと配達のお仕事終わり

寒餅作りは軒下に吊り下げる最後の作業に取り掛かっていた
ボリルと子供達のおしゃべりが聞こえる 楽しそうだ
ここでは何の縛りもなく自由に行動し 好きなだけおしゃべりが出来る

ふと 土間に敷かれた藁敷が目にとまる
町中でも多用途に使用しているが端は切りっぱなし 目が粗くゴワゴワで触るとチクチクする
この藁敷の端は絨毯のように処理され 厚くて柔らかい仕上がり  
「あの、注連縄飾りの参考にしたいので、いならくなった藁敷があれば売って頂けますか?」
「注連縄飾り?」
「隕石に奉納するんです。配布資料です。この挿し絵をモデルに作ります」
「んー。これは捻りが違いますね。納屋から似たのを持って来ますよ」
「お願いします」


「お待たせしました。こちらです」
全然違う
「太いですね。挿し絵とそっくりです」
「藁敷は寒餅と同じ藁紐を編んで作ります。
この太いのは最初の藁紐作りが違うんですよ。わかりますか?」
見比べたけど
「俺にはわかりません。でも藁紐作りの出来る町民には参考になります。売って貰えますか?」
「構いませんよ」
「どなたの作品ですか?」
「作品?はて?村の大人は皆んな作れるので、誰が作ったかはちょっとわかりませんね」
うわぁー 注連縄作りにめっちゃ誘いたい でも奥地の人は町に来ないし 奥地に偏見ある町民もいるし 辛い思いして欲しくないし でもでも
「あの。秘密の講習会に来て頂けますか?」
「はあ?」
うん 唐突すぎた 焦った俺が悪かった
「えっとですね。注連縄作りの参加者にこの太い藁紐作りを教えて頂きたいんです」
「場所はどちらですか?」
「冒険者ギルドに作業場を設けました。大勢の町民が集まります。そんな所にお呼び立てするのは難しいですよね?」
「まあ、そうですね。町には誰も行きませんね」
「ですから、薬局に信頼できる町民を数名呼ぶので、どなたかにこの藁紐作りを教えて頂きたいんです」
お願いしますビーム全開
「おやおや。作業に行き詰まってるんですか?」
「いえ。これから絶対行き詰まります」
ハッハッハッ「そーですか。なるほど」
笑い事では無い 
「皆さん普通の藁紐は作れるけど太く撚り合わせる作業は未経験なんです」
町長が王立図書館まで調べに行ったけど見つからなかった かなり特殊な技術だった
「上級魔法使いなら魔法を掛けて似た形に出来るそうです。でも、初級魔法使い、高齢者や子供達の参加を目的とした事業なんです」
「町おこしですね」
「ハイ」
「進捗は?」
「芯を作っている段階です。その周りに藁紐を巻く予定でいます」
「ああ、それは良いやり方ですね。芯の素材は何ですか?」
「甲虫です。それは上級魔法使いがやってます」
「難しい素材ですからね」
やたら詳しいな
「あと、紅白のねじねじにするので紅い虫の染料を使います。藁紐が上手く染まると良いんですが」
「ふむふむ。オオゼキサシガメかな?」
「そう!それですっ!」
「なら大丈夫。キレイに色が入ります。色移りもしませんよ。高かったでしょ?」
「丸ごと一匹無料で提供されました。最悪です」
「あらー。実物を見たんですね?」
「ハイ!もおね、紅くてデカイ怖い虫でした!」
「うん。あれは、キツイ。私も初めて見た時に怖くて腰を抜かしましたよ。子供の頃に」
「俺もです!」
ハッハッハッ「そーですかそーですか」
「シンさんとドロイが猟って来ました。あの二人どっかのネジが外れてるんです。変人です」
「おう。私の悪口か?」
「ギャアッ」
「シンさん、今日は早いですね」
「ああ。耳がムズムズするから来てみたよ」
シンさんも悪口言えば出てくる仕様だったのか
「それで?」
ドキドキドキドキドキドキ



「というわけです」
「そーかそーか」
土間の奥の台所から村長が見慣れた瓶を3本抱えて戻って来た
「始めますか?」
ドブロクだ
「いや、今日は持ち帰りで。手土産用にしてくれ」
収納魔法から剥き出しの包丁を出した 布に包んだりしないんだ
「これで頼むよ」
物々交換だ
「はい。ありがとうございます」
長い藁紐で酒瓶の胴と首を括る 瞬く間に3本が一纏めになった 
「何食わぬ顔でやってるけど凄い技術だよ」
「ハイ。藁紐文化。すばらしいです」
ハッハッハッ「大袈裟ですよ」

「さて。どうしたものかね」
「お気持ちはわかるんですけどね。無闇に外界へ行かせるのは反対です。ここに来られるのも嫌ですし」
この村の始まりは亡命者
様々な事情を抱える中で外界の行商人を受け入れ 俺達を受け入れるだけでもリスクを伴っている
「おチカラになれず、すいませんね」
「いえ。こちらこそ。ご無理を言いました。すいません」


 その後土間で寒餅作りお疲れさま会が始まった
「シンさんもどうぞ飲んで行ってくださいな」
「おう。それじゃあ海産物があるからツマミを頼んでいいかな?」 
「お任せください」
村長の奥さんは料理好きだ 手際も良い
「村長は確か甘党でしたよね?」
「ええ。もう見てる私が胸焼けするくらい」
わかりみです
「村の特産の黒糖で玉子焼きを作ったことはありますか?」
「甘い玉子焼き?」
眉間にシワが入った
「オヤツになりますよ。知人はドブロクの当てにしてました。色は茶色くなりますけど美味いです」
口がへの字になった 作ったこと無いんだな
「普通に焼くと硬いですが水や出汁で伸ばすとふっくらしてオヤツになります」
「水?出汁?オヤツ?」
あー 料理の経験値ではなくて 食文化の違いだな
「グルコ君、作ってあげなよ」パチ☆
ウィンクされた
「ですね」
《 !? 》
「俺、独り身なんで、簡単な料理は自分で作るんですよ」
《へぇーーーーー》
男性陣のこの反応 男子厨房に入らず だね


「グルコさん、火加減見ます。あ、細いから避けなくて大丈夫」
ルダのおばさんがカマドの薪係だ
「奥さん、スルメ貰いました」
「そこに置いてね」
隣のカマドでは村長の奥さんが鶏団子を焼いている
「網を換えますね」
網換え係 藁たわしで小まめに洗ってるので嫌な焦げ臭さが無い
「グルコ君、それ焼いたら私にしょっぱいのを頼むよ」
「私はシンさんのお土産、海苔を使ったのが食べたいです」
「私はーーー」
なるほど 酒飲みの男性陣に人気なんだな

「皆さんは飲みながらお料理しないんですね」
魔塔の寮母さんはエール片手に料理してた
定食屋の料理長はブランデー
焼き鳥屋のおかみさんはワイン
調理場は立ち飲み屋のイメージがある
「んー。飲みたいけど、酔うと作り過ぎちゃうんですよ」
「お酒はドブロクだけなんですか?」
「ええ。酒代が勿体ないもの」
自給自足生活が染み付いてる
「俺も時々するんですが生姜湯で薄めたら美味しいですよ。あまり酔わないし温まります」

《 ! 》

「乾燥生姜持って来て!」
「お湯沸かします!」
「カマド起こします!」
「氷室行きます!」
「家にボアの干し肉取ってきます!」
「玉蒟蒻煮ます!」
「辛めにね!」
「コップ何個?」
「10個!子供係にも差し入れてね!」
「グルコさん、お手柄です!」
「さあっ皆んな!私達も飲むわよ!」

《エイッエイッオー!》

結局 俺はずっと台所でおしゃべりしている
「卵が豊富な時オヤツに是非試してくださいね」
「コカトリス次第よね~」
「コカトリス?」
「暖かくて使えない洞窟にコカトリスが数匹棲みついたのよ」
村一帯は雪の季節は地熱が高い
裏の崖に無数の洞窟があって冷蔵庫代わりに使ってる
暖かい洞窟があるんだ 俺も住みたいなぁ
うふふふふふ「実はね餌付けに成功したのよ」
「マジっすか!」
《アハハハハハハハハ》
「積雪で餌を獲れない今が好機なの」
「懐いてきたから躾して働かせるわ」
「卵を生む馬に仕上げるんですね」
「ご明答!」
「生ゴミ食べてくれるから助かるのよ」
「薬草の要らない所とか何でも食べるし」
「日の出前に鳴くから便利よね~」
「寝坊してばあちゃんに怒られんわ」
「糞は堆肥用に集めてるよ」
「男達が命懸けでね!」
「微塵も懐いてないからね!」
「それな」
《アハハハハハハハハハ》
俺も一緒に笑っていいのかな?

村の慣習で積雪が膝より高くなると女性は森には入れない 
家事と炊事だけの暮らしに退屈しているという
「今年の冬は、重症人の看病が無くて暇なのよ」
この村の置き薬はポーションだけ 急患の初期治療に使用している 
看病するのは女性の役割だ
早目に治療を施す重要性を痛感している
「嬉しい悲鳴ですね」
アハハ「ほんとそうね」

それならばと改めて
「注連縄飾りの講師のバイトはいかがですか?ボリルが無料送迎しますよ」
「私達が外界に出るの?」
「ハイ。外界と言っても村と薬局の往復です。薬局は休業中なので皆さんの貸切です」
「町の人に教えるのよね?」
「人選はシンさんにお任せしましょう。
どんな人が良いか皆さんの意見を遠慮無く伝えてください」
俺が説明をした時 講師をやって欲しそうだった ただ落とし所を探してる そこで飲み会に参加し様子見を始めた 
そして台所の女性陣を俺に担当させた
「雰囲気が合わなければボリルの転移ですぐ帰れます。まずは薬局の見学だけでもいかがですか?」
自給自足 外界に行かない 閉鎖的な環境で生きてきた 村に大事に守られ生きてきた
「ナナフシ薬局、行ってみたいわね」
「他の薬剤師の薬、欲しいですね」
「魔法を使った薬、高いんでしょ?」
「いいえ。同じ効能・効果なら薬師村が一番高いんですよ」
「そうなんですか!?」
「店長が認めた上級品です。自信を持ってくださいね」
「嬉しい!」
「うん!嬉しい!」
「嬉しいよぉ」
涙目だ
この人達は全員上級薬剤師の免許を取得できる腕を持っている 勿体ない話しだ
「欲しい薬品があれば薬局の宣伝費で落とします。俺、こう見えてやり繰り上手なんです」
《アハハハハハハハハ》
「知ってる知ってる」
「皮算用だっけ?」
「そうそう!皮算用も得意なのよね!」
「あなた、ほんと何者なのよ」
「勇者ナナフシグルコです」
《アハハハハハハハハ》

そんなこんなで奥さん達が注連縄作りに協力してくれる運びになった
シンさんが嬉しそうに笑った
「村長、私が信頼できる町民を選び出す。心配は無いよ」
「そうですねー」
「村長、シンさんは信用できる」
「うんうん」
「たまには家でゴロゴロしたい」
「掃除はつまらん」
「汚れてないのに掃除させられる」
「意味がわからんよな」
「とりあえずやるけどな」
「そうそう」
男性陣から思わぬ援護射撃 奥さん達にこき使われてるんだね
「子供も連れて行けば良い」
「ついでに覚えさせれば良い」
「わしらも森に入れる」
「うんうん」
家の中で子供係は苦手なんだな

「そーですか。皆がそれで良いなら、私は反対しません」
「村長、ありがとう」
「よろしくお願いします」
《パチパチパチパチパチパチ》
拍手が沸き起こる

「藁紐講師の選出は村長に任せるよ」
「わかりました。任されました」
「どんな些細な事でも私に相談してくれ」
「はい」



庭先が賑やかになった
猟りに出ていた一行が森の奥から帰って来た
「ただいま」
「お~地面が暖っけぇ~」
「シンさん、鹿を猟りましたよ」
「見たい見たい」
「菩提樹の下に置いてます」
「おう行く行く」
「ただいまあ~」テコテコ
ボリルは雪遊びすると言って同行した
「おかえり、楽しかったかい?」
「うん!深くて楽しかった!」
「そーかそーか」
森の奥は5尺ほどの積雪だ はしゃぎ過ぎて猟りの邪魔にならなかったかな
「早かったのね」
「ああ。雪が降り出したから引き上げた」
「俺達は鹿一頭で終わりにしたよ」
「ボリルの班はすげぇぞ」
「まあ楽しみね」
「いや~ボリルの風魔法で寒さ知らずだったよ」
藁帽子がシャリシャリなのに寒くないんだ

テコテコ「ただいま」
「おかえり」
「グルコ出していい?」
あ 既視感 でも南の森じゃないからデカイ虫は採れない
「うん、いーよ」
うふふ「ビックリしてね」
ん?

〈ベタンッ〉デデ~ン

「ギャアッ」ガタンッドサッ

なにこれ なにこれ なにこれ
焦茶色のヌルヌル
デカイ デカイ デカイ
テーブルから尻尾ダラーン
トカゲか トカゲなのか
頭がベターって平たい
キモッ キモッ キモッ

《トクダイサンショウウオだ!》

何それ知らない キモッ

「沢まで降りたのか!?」
「いや、沢の手前だよ」
「ボリルが探索魔法で見つけたんだ」
「おおぉ~」
「冬眠してたのを皆んなで掘り起こしたんだ」
「深かったねー」
「ね~」
「無傷だぞ。凄くない?」
「すごくない?」
「凄い!」
「村長!新薬が完成します!」
「ボリルさん、皆さん、お手柄です」
ふふ「ボリルさん、クエスト完了ですね」
「クエスト完了~」
クエスト!?
「お代金はどうされますか?」
「新薬」
「わかりました。頑張って完成させますね」
「頑張ってね」
「やあ~穴掘りたのしかったなぁ~」
「またクエストやろうな!」
「うん。ボリルお仕事大好き~」
ボーリールー こんなお仕事ばっかり うちの子は何を目指してんのよぉ

「グルコさん、大丈夫ですか?」
椅子ごと倒れた俺を起こそうとする
「待って待って村長さん、自分で立ちます、触らないで」
「どうしたの?」
「腰を打ちました。抜けてます」
「あらー。初めて見たんですか?」
「ハイ」
ハッハッハッ「そーですかそーですか」
デカイ幼虫といい 何の新薬を研究してんのよ
もし神経痛の薬だったら素材が浮かんで飲みにくいよ
「上級ポーション飲みますか?」
いやそれ村の置き薬ですよね
「持ってますので大丈夫です」
「流石グルコさん!備えあれば憂いなし!」
因果応報
「ですね」




洞窟風古民家BARナナフシ薬局営業中
今夜は素面のお客さんしかいません


「事業は俺の手を離れました 手出し口出し致しません 全部丸っとお任せします 頑張ってくださいね。」
クスクス「念書。サインさせましたよね?」
「忘れちゃったのかな?」
「丸っとスッキリサッパリ馬鹿なのか?」
お手柄ですねとか褒められたいわけじゃないけど責められたいわけでもない
「反対ですか?」
「賛成です。」
「何でそんな態度なんです?」
「新薬の取り扱いは商業ギルドを通して欲しかったです。」
薬品工房を出し抜きたいんだよね
「素材採取クエストは冒険者ギルドの管轄です。うちを通して欲しかったです。」
広域広報誌でトクダイサンショウウオの記事を自慢したいだけでしょ
「町おこし事業の総括は町長の私です。予算の決済は私です。相談して欲しかったです」
まともだ うん 常識的だ
「私は統括だ。支配者だ。奥地は領主の直轄だ。勝手に交渉しないで欲しかった」
奥地ほったらかしてるくせに 権限ひけらかしたいだけでしょ
「申し訳ございませんでした。腰が痛いので頭は下げません」

「まあ、反省してるなら良しとしましょう。」
してません
「心を入れ替えて、これからは勝手な行動をしないでください。」
これからも勝手にします
「報連相を徹底してね」
町長優しー
「褒美はやらんからな。タダ働きだ」


「皆さんお忘れのようですが、俺、ずっとタダ働きですよ?」





~グルコと町おこし事業 完~
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