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第43話 障子から将ちゃん!?
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「もう、ここはどこなの」
その頃、桂花は見知らぬ部屋の中で困惑していた。畳の間であるここは、ほんのりと白檀の香りがしていて、まるでお寺の中のようだ。しかし、どう頑張ってもこの部屋から抜け出せない。お寺のような建物の一室だろうことは解るのだが、この六畳間から抜け出すことが出来なかった。
別にドアに施錠されているわけではない。それどころか、この部屋を仕切るのは障子とふすまだ。だというのに、どこもぴくりとも動かないのだ。押しても引いても一向に動いてくれない。蹴破ればなんとかなるのではと手近な障子を蹴飛ばしてみたが、障子紙に穴が開くことさえなかった。どんっと何かに弾かれて終わってしまう。
「一体何がどうなってるのよ。どうしてこの障子紙、まったく傷がつけられないの。穴が開けば外の様子が見えるのに」
桂花はぶすぶすと障子に穴を開けようと指を突き刺すが、全く開いてくれない。触れることは可能で、その感触は紙だというのに、攻撃すると弾かれる。だから指を突き刺しても無傷のままだった。どう頑張ってもこの部屋から抜け出せないらしい。
「訳分かんない。というか、だからここはどこなのよ。私、薬局に向かっていたはずなのに」
まさか自分が誘拐されただなんて思わない桂花は、この特殊な空間にどうやって迷い込んだのかも解っていない。普通に道を歩いていただけなのだ。それなのに、いつの間にかここに迷い込んでいた。ふと気づいた時には、ここにいた。それだけだ。
だから足元は畳の間だというのに靴を履いたままだった。気味が悪いのでそのまま脱がないままにしているのだが、それにしても、一体どうしてこんな場所にやって来たのだろう。
「ううん。こういうのを狐に化かされたというのかしら」
何の違和感もなかったのだ。もうすぐ蓮華薬師堂に着く。そう思ったところでふと景色が切り替わり、こんな場所にいたのだ。それはもうびっくりだ。ちゃんとアスファルトで舗装された道を歩いていたというに、いきなり畳の和な空間に放り込まれたのだから、それはもう大騒ぎした。
「もう、どうなってんのこれ。ひょっとして私、寝てるの。さっきまで起きて薬局に行こうとしていたのも夢なのかな。そうだ。そうに違いない。起きろ、私。遅刻するっ。起きて布団を蹴飛ばせ。これは夢だ」
そんな感じで最初こそ大パニックを起こした桂花だったが徐々に落ち着き、そして今は障子に穴を開けようと奮闘するまでに至っている。だが、現状は何一つ解らないままだ。一体ここがどこで自分がどうなっているのか。まったくもって見当がつかない。
「もう十二時だわ。見事に午前中無断欠勤しちゃってる。って、これが現実に起きていることならば、だけど」
腕時計を確認して、何がどうなっているんだと項垂れる。しかし、その間も開きそうもない穴を開けようと指を障子紙に突き立てる。何かしていないとおかしくなりそうだ。同時にカバンからスマホを取り出してみてもここは圏外。誰かに助けを求めることも出来なかった。
「もう、私が何をしたっていうのよ。というか、これは何なのよ。もう。いい加減にしてよね。誰か説明してよ」
そう言いながらドスドスドスドス、桂花は八つ当たりのように障子に指を突き刺し続ける。が、その感触が突如柔らかいものになった。しかも何だか生温かい。
「痛ぁい」
さらに間の抜けた声。ぎょっとして顔を上げると、指が障子から生えた将ちゃんの鼻の穴に突き刺さっているのが見えた。
「ぎゃああああ」
色々とびっくりし過ぎて大声で叫ぶと、桂花は飛ぶように障子から離れた。すると顔だけ出ていた将ちゃんの身体がするすると部屋の中に入ってくる。もちろん、障子に穴が開くこともなかった。
「なっ、はあっ」
「よかった。会えた」
「えっ、将ちゃん。将ちゃんで間違いないのね。っていうか、ええっ。どうなってるの。どうして障子から生えてきたの」
鼻血をたらたら垂らしながらも笑顔の将ちゃんに、桂花は指と将ちゃんと障子を見比べながら混乱するしかなかった。一体どれから処理すればいいのか。脳みそが混乱を起こしていて決められない。
その頃、桂花は見知らぬ部屋の中で困惑していた。畳の間であるここは、ほんのりと白檀の香りがしていて、まるでお寺の中のようだ。しかし、どう頑張ってもこの部屋から抜け出せない。お寺のような建物の一室だろうことは解るのだが、この六畳間から抜け出すことが出来なかった。
別にドアに施錠されているわけではない。それどころか、この部屋を仕切るのは障子とふすまだ。だというのに、どこもぴくりとも動かないのだ。押しても引いても一向に動いてくれない。蹴破ればなんとかなるのではと手近な障子を蹴飛ばしてみたが、障子紙に穴が開くことさえなかった。どんっと何かに弾かれて終わってしまう。
「一体何がどうなってるのよ。どうしてこの障子紙、まったく傷がつけられないの。穴が開けば外の様子が見えるのに」
桂花はぶすぶすと障子に穴を開けようと指を突き刺すが、全く開いてくれない。触れることは可能で、その感触は紙だというのに、攻撃すると弾かれる。だから指を突き刺しても無傷のままだった。どう頑張ってもこの部屋から抜け出せないらしい。
「訳分かんない。というか、だからここはどこなのよ。私、薬局に向かっていたはずなのに」
まさか自分が誘拐されただなんて思わない桂花は、この特殊な空間にどうやって迷い込んだのかも解っていない。普通に道を歩いていただけなのだ。それなのに、いつの間にかここに迷い込んでいた。ふと気づいた時には、ここにいた。それだけだ。
だから足元は畳の間だというのに靴を履いたままだった。気味が悪いのでそのまま脱がないままにしているのだが、それにしても、一体どうしてこんな場所にやって来たのだろう。
「ううん。こういうのを狐に化かされたというのかしら」
何の違和感もなかったのだ。もうすぐ蓮華薬師堂に着く。そう思ったところでふと景色が切り替わり、こんな場所にいたのだ。それはもうびっくりだ。ちゃんとアスファルトで舗装された道を歩いていたというに、いきなり畳の和な空間に放り込まれたのだから、それはもう大騒ぎした。
「もう、どうなってんのこれ。ひょっとして私、寝てるの。さっきまで起きて薬局に行こうとしていたのも夢なのかな。そうだ。そうに違いない。起きろ、私。遅刻するっ。起きて布団を蹴飛ばせ。これは夢だ」
そんな感じで最初こそ大パニックを起こした桂花だったが徐々に落ち着き、そして今は障子に穴を開けようと奮闘するまでに至っている。だが、現状は何一つ解らないままだ。一体ここがどこで自分がどうなっているのか。まったくもって見当がつかない。
「もう十二時だわ。見事に午前中無断欠勤しちゃってる。って、これが現実に起きていることならば、だけど」
腕時計を確認して、何がどうなっているんだと項垂れる。しかし、その間も開きそうもない穴を開けようと指を障子紙に突き立てる。何かしていないとおかしくなりそうだ。同時にカバンからスマホを取り出してみてもここは圏外。誰かに助けを求めることも出来なかった。
「もう、私が何をしたっていうのよ。というか、これは何なのよ。もう。いい加減にしてよね。誰か説明してよ」
そう言いながらドスドスドスドス、桂花は八つ当たりのように障子に指を突き刺し続ける。が、その感触が突如柔らかいものになった。しかも何だか生温かい。
「痛ぁい」
さらに間の抜けた声。ぎょっとして顔を上げると、指が障子から生えた将ちゃんの鼻の穴に突き刺さっているのが見えた。
「ぎゃああああ」
色々とびっくりし過ぎて大声で叫ぶと、桂花は飛ぶように障子から離れた。すると顔だけ出ていた将ちゃんの身体がするすると部屋の中に入ってくる。もちろん、障子に穴が開くこともなかった。
「なっ、はあっ」
「よかった。会えた」
「えっ、将ちゃん。将ちゃんで間違いないのね。っていうか、ええっ。どうなってるの。どうして障子から生えてきたの」
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