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第27話 問題ばかりが増えていく
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「会話の特訓?」
路人の研究室に呼び出されたかと思えば、そんなことを言われ、礼詞はきょとんとしていた。それはそうだろう。
「そうだ。お前のデートは静かすぎる。これでは発展が望めない。解るな?」
路人は偉そうに、そう、偉そうにそんなことを言う。もともと誰がやるべきことだったのか、忘れている発言だ。暁良はすでに遠い目をしてしまう。
「なぜ知っている?」
ごもっともな疑問だ。暁良はこれと、スマホで例の映像を流す。
「金岡の仕業か」
さすが、自分の研究室の研究員の成果を一発で見抜いた。と、問題はそのではなく――
「みんな、心配してんだよ」
暁良は似合わないことをしているせいだと、優しい口調で指摘しておく。
「そ、そうなのか?」
「なぜ無自覚?」
訊き返されて、暁良は唖然としていた。
まさかの自覚なし。
礼詞が女性とデートなんて、隕石が降る前触れとしか思えない。地球滅亡レベルだ。
「ということだ。お前のために、俺たちが特訓してやろう。あのお嬢様を黙らせるにも、これは必要不可欠なものだ」
当初、放置しようとした男の発言とは思えない。心変わりの原因は、もちろん自分と同じだと気づいたからだろう。そして、変わるきっかけもなかったことに。
「と、特訓して何とかなるものなのか?」
礼詞は疑い深げに路人を見る。まあ、疑いたくとなるだろう。原因はこいつだ。
「少なくとも、バリエーションは増える。こういうのは、慣れが影響するものだ。相手が誰であろうと関係ない。ついでにお前の会話傾向を人工知能に学習させよう。それで対策も取れるはずだ!」
ずばっと言い切る路人。結局、人工知能に頼るんだなと、暁良は少し安心する。このままでは、礼詞の真面目キャラに路人の変人キャラが追加されるだけだった。
「しかし特訓というが」
それじゃあどうすると、礼詞は路人の横にいた暁良を見た。暁良は思わずパソコンの前にいる翔摩を見る。
「人工知能の用意はオッケーです」
翔摩は大丈夫と頷く。なるほど、それの担当だったのか。
「お題は人工知能が提示してくれる。最初は?」
「子どもの頃の楽しい思い出です」
「――」
読み上げられたお題に、見事に固まる二人。
それはそうだ。二人の子どもの頃といえば、すでに大学生。楽しくないと、路人は大絶叫していた時だ。
「しょ、食堂のメニューはあの頃から美味かったな!」
何か言わなきゃ、その義務感から路人が言う。言い出しっぺの責任だ。
「そ、そうだな」
そして、付き合う真面目な礼詞。いいのか、お題が変わってるぞ。
「何が好きだった? 俺はチーズインハンバーグと、イチゴパフェ」
「ううん。ざるそば」
ざるそばって。その答えに暁良だけでなく翔摩も瑛真もツッコミたくて仕方ない。ちなみに瑛真は翔摩のサポート役だ。
「ざるそばは食ったことないな」
路人はそんなメニュー存在したのかと、首を傾げた。
「あるよ。あそこは昔から麺類が豊富だ」
二人の食傾向を如実に表す会話だ。そこで翔摩が、食に関しては掘り下げろと、暁良に指示してきた。
「赤松先生って、和食が好きなんですか?」
だから暁良は、そう質問する。
「そう、だな。肉より魚かな」
「和食でも肉料理はあるよ」
路人が余計なことを言う。こいつ、協力しているのを潰す気か。
「すき焼きとかは?」
仕方なく、暁良はそう訊く。
「ま、まあ嫌いではない」
礼詞は好きでもないという顔をした。意外と好き嫌いが多いらしい。
「となると、寿司とか?」
「ああ。他に金目鯛の煮付けとか」
あえて金目鯛かよと、暁良はその渋さに呆れてしまう。まだ20代のはずだが?
「お酒も当然、日本酒?」
「そうだな。嗜む程度だが」
どこまでも渋い。暁良はデートが不発の理由が理解できた。礼詞の年齢プラス10くらいのノリで、穂乃花は相手すべきだったのだ。
「じゃ、次のデートは懐石料理だな」
それに対し、路人が勝手な提案をする。また掻き乱す気だ。
「それ、話しは弾むのか?」
暁良はどうなんだよと、思わず翔摩を睨んでいた。人工知能はそれにオッケーを出すのか。
「――」
が、翔摩は目を逸らしただけで何も言わなかった。おいおい。
「食事を伴にして喋らないってのは、すでに実証済みだけど?」
仕方なく、暁良はデートプランを潰すべく訊く。こいつ、本当に楽しんでいるだけでは?
「いや。そこは現代テクノロジーを駆使し、喋らなければならない場所を見つける!」
が、路人は懐石料理を止める気はないらしい。そんなことまで言い張る。
「はあ」
何か企んでるなと、暁良はため息を吐くしかなかった。それにしても、会話の特訓はどうするのか。問題ばかりが増えていくのだった。
路人の研究室に呼び出されたかと思えば、そんなことを言われ、礼詞はきょとんとしていた。それはそうだろう。
「そうだ。お前のデートは静かすぎる。これでは発展が望めない。解るな?」
路人は偉そうに、そう、偉そうにそんなことを言う。もともと誰がやるべきことだったのか、忘れている発言だ。暁良はすでに遠い目をしてしまう。
「なぜ知っている?」
ごもっともな疑問だ。暁良はこれと、スマホで例の映像を流す。
「金岡の仕業か」
さすが、自分の研究室の研究員の成果を一発で見抜いた。と、問題はそのではなく――
「みんな、心配してんだよ」
暁良は似合わないことをしているせいだと、優しい口調で指摘しておく。
「そ、そうなのか?」
「なぜ無自覚?」
訊き返されて、暁良は唖然としていた。
まさかの自覚なし。
礼詞が女性とデートなんて、隕石が降る前触れとしか思えない。地球滅亡レベルだ。
「ということだ。お前のために、俺たちが特訓してやろう。あのお嬢様を黙らせるにも、これは必要不可欠なものだ」
当初、放置しようとした男の発言とは思えない。心変わりの原因は、もちろん自分と同じだと気づいたからだろう。そして、変わるきっかけもなかったことに。
「と、特訓して何とかなるものなのか?」
礼詞は疑い深げに路人を見る。まあ、疑いたくとなるだろう。原因はこいつだ。
「少なくとも、バリエーションは増える。こういうのは、慣れが影響するものだ。相手が誰であろうと関係ない。ついでにお前の会話傾向を人工知能に学習させよう。それで対策も取れるはずだ!」
ずばっと言い切る路人。結局、人工知能に頼るんだなと、暁良は少し安心する。このままでは、礼詞の真面目キャラに路人の変人キャラが追加されるだけだった。
「しかし特訓というが」
それじゃあどうすると、礼詞は路人の横にいた暁良を見た。暁良は思わずパソコンの前にいる翔摩を見る。
「人工知能の用意はオッケーです」
翔摩は大丈夫と頷く。なるほど、それの担当だったのか。
「お題は人工知能が提示してくれる。最初は?」
「子どもの頃の楽しい思い出です」
「――」
読み上げられたお題に、見事に固まる二人。
それはそうだ。二人の子どもの頃といえば、すでに大学生。楽しくないと、路人は大絶叫していた時だ。
「しょ、食堂のメニューはあの頃から美味かったな!」
何か言わなきゃ、その義務感から路人が言う。言い出しっぺの責任だ。
「そ、そうだな」
そして、付き合う真面目な礼詞。いいのか、お題が変わってるぞ。
「何が好きだった? 俺はチーズインハンバーグと、イチゴパフェ」
「ううん。ざるそば」
ざるそばって。その答えに暁良だけでなく翔摩も瑛真もツッコミたくて仕方ない。ちなみに瑛真は翔摩のサポート役だ。
「ざるそばは食ったことないな」
路人はそんなメニュー存在したのかと、首を傾げた。
「あるよ。あそこは昔から麺類が豊富だ」
二人の食傾向を如実に表す会話だ。そこで翔摩が、食に関しては掘り下げろと、暁良に指示してきた。
「赤松先生って、和食が好きなんですか?」
だから暁良は、そう質問する。
「そう、だな。肉より魚かな」
「和食でも肉料理はあるよ」
路人が余計なことを言う。こいつ、協力しているのを潰す気か。
「すき焼きとかは?」
仕方なく、暁良はそう訊く。
「ま、まあ嫌いではない」
礼詞は好きでもないという顔をした。意外と好き嫌いが多いらしい。
「となると、寿司とか?」
「ああ。他に金目鯛の煮付けとか」
あえて金目鯛かよと、暁良はその渋さに呆れてしまう。まだ20代のはずだが?
「お酒も当然、日本酒?」
「そうだな。嗜む程度だが」
どこまでも渋い。暁良はデートが不発の理由が理解できた。礼詞の年齢プラス10くらいのノリで、穂乃花は相手すべきだったのだ。
「じゃ、次のデートは懐石料理だな」
それに対し、路人が勝手な提案をする。また掻き乱す気だ。
「それ、話しは弾むのか?」
暁良はどうなんだよと、思わず翔摩を睨んでいた。人工知能はそれにオッケーを出すのか。
「――」
が、翔摩は目を逸らしただけで何も言わなかった。おいおい。
「食事を伴にして喋らないってのは、すでに実証済みだけど?」
仕方なく、暁良はデートプランを潰すべく訊く。こいつ、本当に楽しんでいるだけでは?
「いや。そこは現代テクノロジーを駆使し、喋らなければならない場所を見つける!」
が、路人は懐石料理を止める気はないらしい。そんなことまで言い張る。
「はあ」
何か企んでるなと、暁良はため息を吐くしかなかった。それにしても、会話の特訓はどうするのか。問題ばかりが増えていくのだった。
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