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第26話 何とも形容しがたい天パの持ち主
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その不安を抱いているのは芳樹も同じらしく、まだデータの取れていないカエルを心配そうに見つめていた。それは今朝、幸運にも通学路で発見したカエルだ。水槽がない時のためにと持ち歩いている瓶の中に納められている。
「一体どういう先生なんですか?」
恐る恐る楓翔が訊いた。あの資料の山からして普通の先生ではないと解るものの、今まで最強最悪だと思っていた三年生たちが揃いも揃って不安そうなのだ。これはもう予備知識なしに会うことは無理だった。
「どう?何とも形容しがたい天パの持ち主だ」
亜塔が首を捻って出した回答はどこかずれている。それでは髪形の情報しかない。しかも形容しがたいとはどういう状態だろう。
「まあ、化学の先生としては優秀だったよ。化学の先生としてはね」
芳樹がカエルの入った瓶を握り締めて強調する。それは化学の先生として以外は認めたくないと言外に言っているようなものだ。
しかしこれで余計に二年生たちは戦々恐々とするしかない。
「ハロー。科学部諸氏。いやあ、懐かしい」
そこに馬鹿でかい声とともにドアを派手に開ける人物がいた。全員が振り向くと確かに形容しがたい天然パーマの男性がいる。何だかもさもさしていて奔放な髪形だ。しかも黒縁丸眼鏡でリュックサックを背負い、どこからどう見てもオタクというファッションをしている。はっきり言って関わりたくない。
「は、林田先生。たしか来れるのは昼過ぎだと」
ショックから真っ先に立ち直ったのは莉音だ。電話しただけあって少し免疫がある。そして時計を確認するとまだ10時半という、しっかり午前中という時間だった。
「そのつもりだったんだけどね。君たちが俺の助けを求めているというのに、のんびり触媒なんて作ってられないよ。丁度朝早くにやって来た大学院生がいたから、作業が頼めたしね」
林田はそこでかかと笑う。もう変人キャラ炸裂だ。どこをどう突っ込めばいいのかさえ解らない。ともかく出会ってしまった大学院生にご愁傷さまと言うべきか。三年生ですら恐怖するはずだ。
「まあ、早めに来ていただけたのは有り難いです。さすがに受験生としては徹夜は無理なので。それよりも先生。自己紹介なしに大声を出すから二年生が怖がってますよ」
芳樹はカエルを背中の後ろに隠しつつ、話題を二年生に振った。しかし桜太をはじめとしてこっちに振るなと誰もが首を振る。だが、そんな信号を無視して林田は振り向くと二年生たちを視界にロックオンした。
「おおっ。君たちが俺の知らない次世代の科学部か。いやあ、会えて嬉しい」
林田は二年生たちに颯爽と近づくと、手近にいた迅を抱きしめた。
「うぎっ」
抱きしめられた迅は意味不明な唸り声を上げる。すでに林田拒否症状が出ているらしい。さらには強い腕力で呼吸困難に陥っていた。みるみる顔色が悪くなる。
「さらには女の子まで入っているではないか。代々男臭かったというのに僥倖だ。しかもそのルックス。どうかな?科学を愛しながらアイドルを目指してみないか?」
林田は迅を解放すると今度は千晴に握手を求めた。解放された迅はげほげほと盛大に咽ている。
「結構です。私は化学だけを愛します」
千晴は笑顔で握手に応じつつも、強くアイドルは拒否した。それはそうだ。この林田にプロデュースされるとなると、ファンも自ずと林田の仲間たちになる。そんな連中に囲まれて生活するくらいならば、化学物質に囲まれて生きる道を選ぶ。しかもあの新聞の切り抜きは本当に林田の持ち物だったのだ。忘れて帰るとはファンとしてどうなんだ。
「それは勿体ない。実に勿体ないぞ。この握手の出来といい笑顔の可愛さ。まさに神対応だ。間違いなく売れるよ。そんなに科学がいいならば理学部でグループを作るっていうのはどうだ?」
諦めない林田は勝手に千晴の進学先を自分の大学にしようとしている。これは最凶の変人だ。
「あの、それよりも林田先生。ぜひお知恵を拝借したいんですけど」
覚悟を決めて桜太は自ら話しかけた。このままでは延々と千晴スカウトをし続ける。それでは後に千晴から殴られるし時間は無駄に過ぎるだけだ。
「おやっ?君は上条女史の御子息だね!いやあ、世間の狭さを実感するね。君の母君にはこの間お世話になったばかりだよ」
林田は今度は桜太を抱きしめる。この過剰なスキンシップは何を意味しているのか。アイドルオタク以外にも未知な部分が多い。
「く、苦しい」
しかし問題はそこではない。迅が苦しんでいた理由が解った。相当な力で抱きしめられる。桜太は容赦なく林田の股間に膝蹴りを入れた。
「うふっ」
林田はよく解らない声を出して桜太から離れた。何だか蹴った桜太が恥ずかしくなる声である。
「一体どういう先生なんですか?」
恐る恐る楓翔が訊いた。あの資料の山からして普通の先生ではないと解るものの、今まで最強最悪だと思っていた三年生たちが揃いも揃って不安そうなのだ。これはもう予備知識なしに会うことは無理だった。
「どう?何とも形容しがたい天パの持ち主だ」
亜塔が首を捻って出した回答はどこかずれている。それでは髪形の情報しかない。しかも形容しがたいとはどういう状態だろう。
「まあ、化学の先生としては優秀だったよ。化学の先生としてはね」
芳樹がカエルの入った瓶を握り締めて強調する。それは化学の先生として以外は認めたくないと言外に言っているようなものだ。
しかしこれで余計に二年生たちは戦々恐々とするしかない。
「ハロー。科学部諸氏。いやあ、懐かしい」
そこに馬鹿でかい声とともにドアを派手に開ける人物がいた。全員が振り向くと確かに形容しがたい天然パーマの男性がいる。何だかもさもさしていて奔放な髪形だ。しかも黒縁丸眼鏡でリュックサックを背負い、どこからどう見てもオタクというファッションをしている。はっきり言って関わりたくない。
「は、林田先生。たしか来れるのは昼過ぎだと」
ショックから真っ先に立ち直ったのは莉音だ。電話しただけあって少し免疫がある。そして時計を確認するとまだ10時半という、しっかり午前中という時間だった。
「そのつもりだったんだけどね。君たちが俺の助けを求めているというのに、のんびり触媒なんて作ってられないよ。丁度朝早くにやって来た大学院生がいたから、作業が頼めたしね」
林田はそこでかかと笑う。もう変人キャラ炸裂だ。どこをどう突っ込めばいいのかさえ解らない。ともかく出会ってしまった大学院生にご愁傷さまと言うべきか。三年生ですら恐怖するはずだ。
「まあ、早めに来ていただけたのは有り難いです。さすがに受験生としては徹夜は無理なので。それよりも先生。自己紹介なしに大声を出すから二年生が怖がってますよ」
芳樹はカエルを背中の後ろに隠しつつ、話題を二年生に振った。しかし桜太をはじめとしてこっちに振るなと誰もが首を振る。だが、そんな信号を無視して林田は振り向くと二年生たちを視界にロックオンした。
「おおっ。君たちが俺の知らない次世代の科学部か。いやあ、会えて嬉しい」
林田は二年生たちに颯爽と近づくと、手近にいた迅を抱きしめた。
「うぎっ」
抱きしめられた迅は意味不明な唸り声を上げる。すでに林田拒否症状が出ているらしい。さらには強い腕力で呼吸困難に陥っていた。みるみる顔色が悪くなる。
「さらには女の子まで入っているではないか。代々男臭かったというのに僥倖だ。しかもそのルックス。どうかな?科学を愛しながらアイドルを目指してみないか?」
林田は迅を解放すると今度は千晴に握手を求めた。解放された迅はげほげほと盛大に咽ている。
「結構です。私は化学だけを愛します」
千晴は笑顔で握手に応じつつも、強くアイドルは拒否した。それはそうだ。この林田にプロデュースされるとなると、ファンも自ずと林田の仲間たちになる。そんな連中に囲まれて生活するくらいならば、化学物質に囲まれて生きる道を選ぶ。しかもあの新聞の切り抜きは本当に林田の持ち物だったのだ。忘れて帰るとはファンとしてどうなんだ。
「それは勿体ない。実に勿体ないぞ。この握手の出来といい笑顔の可愛さ。まさに神対応だ。間違いなく売れるよ。そんなに科学がいいならば理学部でグループを作るっていうのはどうだ?」
諦めない林田は勝手に千晴の進学先を自分の大学にしようとしている。これは最凶の変人だ。
「あの、それよりも林田先生。ぜひお知恵を拝借したいんですけど」
覚悟を決めて桜太は自ら話しかけた。このままでは延々と千晴スカウトをし続ける。それでは後に千晴から殴られるし時間は無駄に過ぎるだけだ。
「おやっ?君は上条女史の御子息だね!いやあ、世間の狭さを実感するね。君の母君にはこの間お世話になったばかりだよ」
林田は今度は桜太を抱きしめる。この過剰なスキンシップは何を意味しているのか。アイドルオタク以外にも未知な部分が多い。
「く、苦しい」
しかし問題はそこではない。迅が苦しんでいた理由が解った。相当な力で抱きしめられる。桜太は容赦なく林田の股間に膝蹴りを入れた。
「うふっ」
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