41 / 51
第41話 残りって何だっけ?
しおりを挟む
井戸の調査をした日の夜、亜塔は見事に熱中症で倒れていた。どうやらヘルメットのせいではなく、水分補給が足りなかったらしい。そういえば亜塔ははしゃいでいて水を飲んでいなかったなと、桜太は呆れてしまった。おかげで二日間部活は休みとなってしまった。まったく、勝手に乱入して勝手に休みを作るとは、困った先輩である。しかしここまで三年生の力も大きいので文句は言えない。
こうして急遽できた夏休みだったが、科学部のメンバーたちは全員がここで宿題をするという行動に出ていた。だれも夏休みを満喫する気がない。しかしそれでも休み明けのメンバーの顔は晴れやかだから凄い。
「いやあ。部活が楽しくて宿題出来ていなかったから助かったよ」
優我の言葉が科学部の全員の思いだった。変人の吹き溜まりと呼ばれているが、中身は健全かつ真面目。変である要素はおそらく誰もが宿題をしたことだろう。桜太はこういうところが周りから引かれるのかなと気づいてしまった。
気づくと気になることが出てくるものだ。桜太はそっと科学部メンバーの顔を確認する。メンバーは晴れやかな顔をしているが誰も日焼けしていない。今が夏だというのを忘れてしまったようだ。そして自分も日焼けとは無縁。やっぱり科学部は変人で構成されるしかないのだとも改めて思った。
「さて、次は何を解決するんだ?」
迅が数学パズルを解きながら訊く。実験やフィールドワークが続いて数字中毒が緩和されたかと思っていたが、この二日間の休みでしっかり復活してしまったらしい。
「トイレのすすり泣きと、動く学園長像よ」
情報を拾ってきた千晴がざっくりと答えた。思えばこの二つが怪談の相場ともいえる内容なのに、今まで放置されてしまったのだ。これが七不思議解明がどんどん違う方向に進んだ原因とも思えてしまう。
「その問題のトイレって、この化学教室の横のトイレだよな?今まですすり泣きなんて聞いたことがないぞ」
楓翔が面白くなさそうに言った。しかも目線はこの学校周辺の地形図に釘付けである。こちらも普段通りになってしまっていた。
「ううん。すすり泣きか。二つの可能性が考えられるよな」
桜太としてはこのまま学校の傾斜を発見しただけで終わりたくない。しかもそこで終わっては新入生獲得へのアピールがなくなってしまう。だから必死に興味を引こうと言っていた。
「二つ?どういうものだ?」
この部をまとめる努力を怠らないのは芳樹だ。ここでもちゃんと話を聴いてくれている。しかし手にはカエルが乗っていて、こちらもいつもどおりだった。
「一つは単純、本当に誰かが泣いていたのを聞かれた可能性です。しかしそれならば噂にならない。ということは二つ目、何かの空耳だった可能性です」
桜太が立ち上がって発表すると、ようやく科学部の全員の注目が集まった。
「空耳ね。それならば周波数の問題として解決できるな」
莉音が一気に結論を言ってしまう。ここですぐに周波数に結びつけてしまっては怪談も何もない。しかし、残念ながらここにいるのは不思議は科学で解明できると考えている奴らだ。科学的には考えられても怪談的には考えられない。よって、すすり泣きも怪談として盛り上がることなく検証されてしまう。
「問題はその音源がどこにあるかだな」
七不思議の調査としてはどこか間違っているが、科学部としては正しい姿勢のまま亜塔が話を進めていく。
「この二階のトイレなんて普段利用しないよな。大体授業では実験をしなければ北館に用事はないし。科学部がたまに使うくらいだぞ」
本当に空耳でもすすり泣きがあるのか疑問に思うのは迅だ。
「それに音が男子トイレからするのか女子トイレからするのかも不明だよな。しかも発生時間も解っていない」
音源を探る前に解決すべき問題があったと、桜太は情報提供者の千晴を見た。
「どうやら男子トイレらしいよ。うちのクラスでもこの話を知っている人がいたけど、男子だったし。まあ、そいつらも変な音がするってだけですすり泣きとは言ってなかったわね」
千晴もすぐに怪談を否定してしまう。理系クラスで話を聴くと、科学部と似たような結論に達して当然だった。
もしもこの場に千晴へと話してくれた穂波がいたら卒倒しているだろう。穂波は真剣に学園の不思議を探していたというのに、その努力を科学部が真っ向から否定しようとしているのだ。
「取り敢えず行ってみるか。男子トイレでの検証に女子の岩波さんは嫌かもしれないが、誰かが入ってきて使用する心配はないし」
結局は芳樹がまとめるといういつものパターンに落ち着く。それに千晴も一応は女子として心配されて安心した。このまま男子トイレに突撃されてはどうしようかと悩んでしまう。これで万が一誰かが用を足し始めたら容赦なく便器に張ったおしても大丈夫だ。
「よし、それでは諸君」
桜太もいつもどおりいこうと号令を掛けようとしたが
「酷いよ。まだ俺が到着してないのに勝手に全部決めるなんて」
それに待ったを掛けたのは林田だった。走ってきたのかもさもさの天然パーマがさらにもさもさとしている。
「いや、先生が今日も来るなんて聞いてませんし」
そろそろ林田に慣れてきた桜太は突っ込んでいた。それに学校に来た理由は松崎であって科学部ではないはずだ。あの井戸調査の後に鉱石と化学式との関係を話し合って盛り上がっていたのは知っている。
こうして急遽できた夏休みだったが、科学部のメンバーたちは全員がここで宿題をするという行動に出ていた。だれも夏休みを満喫する気がない。しかしそれでも休み明けのメンバーの顔は晴れやかだから凄い。
「いやあ。部活が楽しくて宿題出来ていなかったから助かったよ」
優我の言葉が科学部の全員の思いだった。変人の吹き溜まりと呼ばれているが、中身は健全かつ真面目。変である要素はおそらく誰もが宿題をしたことだろう。桜太はこういうところが周りから引かれるのかなと気づいてしまった。
気づくと気になることが出てくるものだ。桜太はそっと科学部メンバーの顔を確認する。メンバーは晴れやかな顔をしているが誰も日焼けしていない。今が夏だというのを忘れてしまったようだ。そして自分も日焼けとは無縁。やっぱり科学部は変人で構成されるしかないのだとも改めて思った。
「さて、次は何を解決するんだ?」
迅が数学パズルを解きながら訊く。実験やフィールドワークが続いて数字中毒が緩和されたかと思っていたが、この二日間の休みでしっかり復活してしまったらしい。
「トイレのすすり泣きと、動く学園長像よ」
情報を拾ってきた千晴がざっくりと答えた。思えばこの二つが怪談の相場ともいえる内容なのに、今まで放置されてしまったのだ。これが七不思議解明がどんどん違う方向に進んだ原因とも思えてしまう。
「その問題のトイレって、この化学教室の横のトイレだよな?今まですすり泣きなんて聞いたことがないぞ」
楓翔が面白くなさそうに言った。しかも目線はこの学校周辺の地形図に釘付けである。こちらも普段通りになってしまっていた。
「ううん。すすり泣きか。二つの可能性が考えられるよな」
桜太としてはこのまま学校の傾斜を発見しただけで終わりたくない。しかもそこで終わっては新入生獲得へのアピールがなくなってしまう。だから必死に興味を引こうと言っていた。
「二つ?どういうものだ?」
この部をまとめる努力を怠らないのは芳樹だ。ここでもちゃんと話を聴いてくれている。しかし手にはカエルが乗っていて、こちらもいつもどおりだった。
「一つは単純、本当に誰かが泣いていたのを聞かれた可能性です。しかしそれならば噂にならない。ということは二つ目、何かの空耳だった可能性です」
桜太が立ち上がって発表すると、ようやく科学部の全員の注目が集まった。
「空耳ね。それならば周波数の問題として解決できるな」
莉音が一気に結論を言ってしまう。ここですぐに周波数に結びつけてしまっては怪談も何もない。しかし、残念ながらここにいるのは不思議は科学で解明できると考えている奴らだ。科学的には考えられても怪談的には考えられない。よって、すすり泣きも怪談として盛り上がることなく検証されてしまう。
「問題はその音源がどこにあるかだな」
七不思議の調査としてはどこか間違っているが、科学部としては正しい姿勢のまま亜塔が話を進めていく。
「この二階のトイレなんて普段利用しないよな。大体授業では実験をしなければ北館に用事はないし。科学部がたまに使うくらいだぞ」
本当に空耳でもすすり泣きがあるのか疑問に思うのは迅だ。
「それに音が男子トイレからするのか女子トイレからするのかも不明だよな。しかも発生時間も解っていない」
音源を探る前に解決すべき問題があったと、桜太は情報提供者の千晴を見た。
「どうやら男子トイレらしいよ。うちのクラスでもこの話を知っている人がいたけど、男子だったし。まあ、そいつらも変な音がするってだけですすり泣きとは言ってなかったわね」
千晴もすぐに怪談を否定してしまう。理系クラスで話を聴くと、科学部と似たような結論に達して当然だった。
もしもこの場に千晴へと話してくれた穂波がいたら卒倒しているだろう。穂波は真剣に学園の不思議を探していたというのに、その努力を科学部が真っ向から否定しようとしているのだ。
「取り敢えず行ってみるか。男子トイレでの検証に女子の岩波さんは嫌かもしれないが、誰かが入ってきて使用する心配はないし」
結局は芳樹がまとめるといういつものパターンに落ち着く。それに千晴も一応は女子として心配されて安心した。このまま男子トイレに突撃されてはどうしようかと悩んでしまう。これで万が一誰かが用を足し始めたら容赦なく便器に張ったおしても大丈夫だ。
「よし、それでは諸君」
桜太もいつもどおりいこうと号令を掛けようとしたが
「酷いよ。まだ俺が到着してないのに勝手に全部決めるなんて」
それに待ったを掛けたのは林田だった。走ってきたのかもさもさの天然パーマがさらにもさもさとしている。
「いや、先生が今日も来るなんて聞いてませんし」
そろそろ林田に慣れてきた桜太は突っ込んでいた。それに学校に来た理由は松崎であって科学部ではないはずだ。あの井戸調査の後に鉱石と化学式との関係を話し合って盛り上がっていたのは知っている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」
「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」
「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる